102%にこだわる

この日、夜に来店する客から電話が入った。相手はアメリカ人の観光客。
夫は、魚も野菜も食べられないという。
高級料亭で、肉だけのコースなど前代未聞。それでも、徳岡は予約を受けた。

「人間の能力は、使わないと縮む気がします。
だから、いつも102%とか、そういうギリギリの危険の淵に立つんです」
もう、いつ落ちるかわからないっていうときに、プッと能力が膨らむ気がすると
いう。

徳岡は、八皿の肉料理をすべて違う味付でつくることにした。
客が来るまで、あと4時間。
ソースや調理方法を吟味し、これまでにない和食コースを考える。

次々に新たな肉料理をつくり出した。
客の反応が気になる徳岡。衝立の後ろで聞き耳を立てる。
「Looks good(おいしそう)」「Excellent skill(すごい腕前だ)」

伝統を守り、伝統を壊して客をもてなす。
この日も無事、一日を終えた。

(プロフェッショナル仕事の流儀7 File No.21より)

2008.07.03:反田快舟:[仕事の流儀]

この記事へのコメントはこちら

※このコメントを編集・削除するためのパスワードです。
※半角英数字4文字で入力して下さい。記号は使用できません。