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プレッシャーに打ち勝つ方法

人の命を預かることのプレッシャーは、もちろんあります。
5000回以上の心臓手術をしてきましたが、わずか1ミリの失敗で死に至ることがあるんです。
どれだけ経験を積もうとも、やはり手術は怖い。

だから、気持ちを十分に準備しておく必要があります。
「ビーケアフル(注意しろ)」、「ジェントル(優しく)、ジェントル」と頭の中でつぶやくのです。
うっかりそれを忘れた時には、思い出しながらやります。

プレッシャーに耐える方法を教えることはできません。
自分で克服するしかないんです。ただ、その手伝いはします。
経験の浅いうちからものすごいプレッシャーを与えたら、誰でもダメになってしまう。
だから、プレッシャーは少ずつ、段階的に与えるようにしています。

きちんと段階を踏めば人は育つと思うのですが、
実際には、そのように育ててもらえない人がたくさんいるわけです。
そして、重圧に耐えられず失敗したりして多くの人が辞めてしまったりするんですね。

これだけのプレッシャーがありながら私が心臓外科医を続けているのは、
患者さんから信頼されて、命を任せるといってくれるからです。
それが力になるんです。
By佐野俊二

(プロフェッショナル仕事の流儀1より)

人を育てるのも、潰すのも人。

2008.01.24:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

どうすれば人は育つのか

人を育てるのは、すごく時間がかかるし、難しい。
手術のときも、自分でするのが一番です。それが一番早いし、リスクも少ない。
一方、人に任せて、切るところを間違えたら、それを直さないといけないわけです。
その方がずっと難しい。しかし、それでもどこかで任せなければ人は育ちません。

任せることで自分の腕も上がるんです。
人を教えれば教えるほど、自分のレベルも上がっていきます。
問題は、どこまで我慢するかですね。
信頼されていると感じたなら、人は期待に応えようと努力します。
By佐野俊二

(プロフェッショナル仕事の流儀1より)

ここまでぎりぎりの選択や判断を迫られたことはありません。
任せて、胃が痛くなる程度は序の口なのでしょう。
我慢と限界の判断。これを知っているか知らないかで大きく違う気がします。
2008.01.23:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

適性を見極める

心臓外科医になるには、まず外科のトレーニングから始めます。
それを終えて心臓外科に行くわけですが、子どもの心臓を手掛けるのは最後の段階です。
その各段階で、この人は子どもには向かないと判断したら、はっきり本人にいいます。
使うだけ使って、最後にポイッと放り出すのが一番よくないと思うんです。
いたずらに時間延ばしして、方向転換の時期を遅らせるよりは、早く伝えるべきだと考えています。

同じことは、あまりよくない環境に置かれている人にもいえると思います。
環境は自分で克服できるところと、そうでないところがある。
よい環境でよい人に育ててもらえれば、すごく伸びる人も、
教える人に恵まれなければせっかくの才能ややる気が生かされません。

例えば野球やサッカーの世界にも、環境さえ変われば花開く人がきっといるはずです。
環境を変える一番の要素は師匠です。師匠が変われば、才能を見いだして伸ばしてくれるかもしれないし、
モチベーションだって上がるかもしれない。その結果、見違えるような成長を遂げる可能性があるわけです。
By佐野俊二

(プロフェッショナル仕事の流儀1より)

自分は最低でも、伸びる邪魔をしないように心がけていますが、適性の判断は難しいですね。
2008.01.22:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

どうすれば人はついてくるか

どうすれば若い医師が自分についてくるか。一つは「お金」。給料を倍にしてあげると言えば、人はついてくる。
もう一つは「モチベーション」です。お金につられてきた人は、金の切れ目が縁の切れ目になる。
でも、モチベーションでついてきた人は切れない。

では、何がモチベーションになるかというと、例えば難しい手術。
他の病院では手術できないと言われた患者さんが来たときに、チームで自分たちが何とかしたいと考える。
これがモチベーションになります。

チームには役割分担があります。その担当者の技術や経験のレベルが一番低いところ、それがチーム全体のレベルになります。
そこを鍛えて昨日よりは今日とレベルを上げていく。
そして、チームとしてよい結果が出せれば。人は必ずついてきます。
By佐野俊二

(プロフェッショナル仕事の流儀1より)

やはり、プロは結果が必要。結果が出せなければ人は離れていってしまいます。
2008.01.21:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

なぜ記録を残すのか

留学時代、佐野さんは関わった手術の記録をすべて手書きのメモに残したという。

5年間の留学時代にとった記録は、段ボール箱の中に大量に残してあります。
一般的な手術記録は、どういう手術でどういう流れで行ったかということは書いてありますが、
後からそれを見ても手術はできません。テクニカルなことは細部まで書かれていないからです。
それでは若い医師には理解できません。

そこで私は、通常の記録のほかに、自分なりのメモを書きとめていました。
そうすることで細かいノウハウがわかります。
たとえ自分が行った手術でも、同じことをまたしようと思うと覚えていないものです。
だから、手術の後でそれを思い出しながら、自分なりの記録を書くんです。
これを自分で書くか書かないかでは、ものすごい差が出ます。
書いている人は一度の手術で、一人の患者さんから二回も三回も教えられることになる。
それは三度の手術以上の価値があります。

何も考えず、ただ漠然と手術をしたら、100例でも1000例でもいっしょ。
それよりも、例え50例でも一つひとつの手術に集中した方がいい。
こうしてメモに書き出せば、自分がどれだけ集中して、どれだけ理解しているかがはっきりわかります。
しかも、後に残る。このメモが後輩にも役立つし、自分の師匠にもなっています。

これは別に努力ではありません。普通のことなんです。
プロを目指す限りは、これくらいのことをするのは当たり前。
それをしない人はプロにはなれないと思います。
By佐野俊二

(プロフェッショナル仕事の流儀1より)

経営コンサルタントの仕事に「診断」というのがあります。
いわば経営の処方箋を書くのですが、この原稿を書くのが難しいのです。
先輩たちが残してくれた「診断書」に幾度助けてもらったか。
自分はどれだけのものを残したかと考えると忸怩たるものがあります。
2008.01.20:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]