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人のためには強くなれる

弁護士はお金を儲ける職業ではありません。
もともと社会的なトラブルに介入して、それを解決するためにある。
社会的弱者や経済的弱者の救済と、その声を代弁する、
その人権を確立するのが弁護士の仕事だと思っています。

私自身、サラ金事件と出会って、それをやってきたことを誇りにしています。
困った人たちが頼ってくれて、自分が頑張らないとこの人たちが困る。
本来、弁護士はそういうものだと思うし、人間も本来そういうものかも知れない。

人のためにはすごく強くなれるんですよ。
自分のためやお金のためには、そこまで強くなれない。

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)


2008.02.24:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

人は性格に合った事件にぶつかる

普通、弁護士はイソ弁を3~4年やると独立して事務所を構えるのですが、
私は独立まで12年かかっていますし、2回もクビになっていますから落ちこぼれだったんですね。
一時は本当に田舎に帰って、農業を継ごうと思っていたんです。

それを変えたのが、最初のサラ金事件との出会いです。
ちょうど多重債務者が弁護士会に押し掛けるようになったころです。
当時は多重債務者を引き受ける人が少なかった。それで、田舎出の人の良さそうな私に仕事が回ってきた。

当時の私には事件がほとんどなかった、つまりこれをやるしかなかったのです。
分割で5000円、1万円の報酬でも、全くないよりありがたい。
それに、いざやってみるとすごくやりがいがあった。

その人の命や人生、そういうものを丸ごと引き受けて、こちらが衝立になって生活を改善できる。
最初は見よう見まねでしたが、強硬な取り立てに対して真っ向から対決して解決できたことは、
すごく自信になりましたし、やりがいという面からもだんだんのめり込んでいくことになった。
だから、弁護士というのは、どういう事件にめぐり会えるかが重要なのではないかと思います。
By宇都宮健児

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)

評論家の小林秀雄は「人は自分の性格に合った事件にぶつかる」といったが、
宇都宮さんの人生はまさにそれだ。
目の前にあることから逃げずに、前向きに取り組むことが天職になるのだろう。
2008.02.23:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

落第弁護士を変えた運命の出会い

宇都宮さんがヤミ金融事件にかかわるようになったきっかけは、若き日の苦い挫折にある。
東京大学法学部にストレートで合格、在学中に難関中の難関である司法試験に合格。
その後、大学を中退し、異例の早さで弁護士の卵になる。

しかし、宇都宮さんには、社会人として必要なある能力が欠けていた。
同期の多くは、経営者が集まるゴルフコンペにこまめに参加、親睦を深め顧問契約を取り付けていた。
しかし、人付き合いが苦手な宇都宮さんは営業活動ができず、離婚や相続などの仕事を細々とこなしていた。

そんなある日、事務所のトップ、通称”ボス弁”に呼び出された。
「いつまでここにいるつもりだ。もうそろそろいいだろう」。事実上の首である。
その時31歳。50人の同期は次々と独立を果たして、半人前は宇都宮さん一人だった。

このままではいけない。何とかしなければた、「東京弁護士会」を訪ねた。
その時、職員が言った。「誰もやってくれない仕事がある。受けてくれないか」
サラ金の取り立てを止めてほしいという依頼だった。

5000円でも、1万円でも、弁護士費用として払ってもらえる。背に腹は替えられなかった。
依頼者は、中年のタクシーの運転手。生活苦のためもサラ金数10社から借入れ、厳しい取り立てに憔悴しきっていた。
宇都宮さんは店舗に出向き交渉した。「利息が高すぎる。減らしてほしい」
すると、「夜道には気をつけろ」といきなり凄まれた。

数日後、目つきの悪い男が訪ねて来た。男はキラッとひかる刃物をちらつかせいった。
「一切手を引け、それが嫌ならお前が払え」
怖くて逃げ出したかった。しかし、ようやく手にした仕事だ。簡単には引き下がるわけにはいかない。
「あなたは話し合いに来たのですか、喧嘩をしに来たのですか。弁護士の仕事は裁判ですから訴訟をします」
そう言い放ち、分厚い法律書を読み込み対策を考えた。

そして、金利が違法に高いことを理由に借金の減額を求める裁判を起こした。
すると意外なことが起こった。相手が和解を求めてきたのである。
結果、150万円という請求を2万円の支払いで和解できた。

相談者は深々と頭を下げてこういった。
「これで、穏やかな暮らしが取り戻せます」
自分にもできる仕事がある! 弁護士・宇都宮健児が歩き始めた瞬間だった。

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)
2008.02.22:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

多重債務者を相手に経営は成り立つのか

一般的な弁護士のやり方は、着手金を一括でもらうわけですが、それを払える人はヤミ金から金を借りないわけで、
私の事務所の相談者は、全部5000円、1万円の分割払いです。
弁護士が分割払いで処理するケースはまれで、誰もサラ金やクレジット問題を受けていなかったわけです。
しかし、低額でもそれを100人や200人やれば、毎月100万円や200万円は入るわけです。
多重債務の処理は定型業務が多いので、パソコンソフトを使えば、事務員さんが処理できます。
そうやって、少額の事件をたくさんやることによって成り立つようになったということですね。

By宇都宮健児

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)

仕事は世の中の必要から生まれる、誰もやらないことをやることが仕事を創る。
2008.02.21:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

なぜ裏切られても見捨てないのか

どんなに親身になって対応しても、同じ過ちを繰り返したり裏切られることはしょっちゅうあります。
それは覚悟しないとダメです。
それでも受け止めてあげられるかどうかということですね。

債務整理は、その人の救済のごく一面にしかすぎないのです。
人間は弱いから、取り立てが止まって給料が全部もらえるとなると飲みに行ったり、ギャンブルに手をだしたりと、また借りたりと同じことを繰り返す。
失業中の人は仕事を見つけないと本当の解決にならない。
病気で収入がなくてお金を借りた場合は、まず病気を治さないといけないし、精神的な病を抱えている人はカウンセリングが必要です。

弁護士が衝立てになって負債整理はしていますが、それがすべての解決にはつながらない。
その人の生活の立て直しには、いろいろな支援が必要なんです。
本来、これは国や行政がやるべきことだと思います。
多重債務に陥った人が生活を立て直すためには、社会的にもっといろいろな団体とのネットワークが必要だと思っています。

By宇都宮健児


(プロフェッショナル仕事の流儀2より)
2008.02.20:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]