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悪条件に恵まれる

独立したばかりの頃、ある依頼が来て土地を見に行ったんです。
建売密集地の狭い土地の一軒家。
現場を見てめげました。

ところが、家の中に通されると、6畳の部屋に家族がいっぱいいて、
鍋物を用意して、「ようこそ、いらっしゃい」って感じで迎えられたんです。
「この人たちの家がつくれなければ、建築家でいる意味がない」と思いました。

広い土地で、予算がたっぷりあれば、誰がやってもそこそこのものはできる。
条件が限られているから、建築家の力が問われていると思うんです。
だから、「悪条件に恵まれる」というところもあるんですよ。

By中村好文

(プロフェッショナル仕事の流儀4より)
2008.04.20:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

家が主人公という意味

「家が主人公」というのは、住宅としていい家をつくりたいということです。
クライアントの要望を全部聞いてあげて、それを全部盛り込んでもいい家になりません。
要望には十分応えるけど、ときには必要のないものは排除します。

僕の事務所では、「施主」とは呼ばないんです。
施主というのは「施す主」ですから、その下に僕がつき、さらに工務店などのつくり手が連なるという構造になる。
それはよくないと思っているので、「クライアント」(依頼者)と呼んでいるのです。
つまり横並びなんです。そこには上下関係はないわけです。

いいものをつくれば、それがクライアントにとってもいいことになる。
そこにプロフェッショナルの役割があると思うんです。
プロとしての経験もあるし、それによって築いた信念もあるから、そこは崩しません。

By中村好文

(プロフェッショナル仕事の流儀4より)
2008.04.19:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

オーダーメイドと普遍性

お客様にとって、いいと思ってもらえる家にすることが一番ですが、
次の世代の新しい人にも、やっぱりいい家だと感じてもらいたい。
個人にぴったりの家でありながら、一方では普遍的な家でもありたいと思っています。

かって、世界中の名作といわれる住宅を見て歩いた時期があるんです。
その時、外国の家でも、「ああこれはいい住宅だな」と思えるものがあった。
以来、自分のつくる家もそうありたいと思うようになりました。

ジーンズのように普遍的なよさを持っていて、なおかつ普段着として愛される家。
パーティ用の服を着て毎日は暮らせませんよね。
肩ひじ張らずに着られて、しかも着心地のいい服が普段の生活には大事でしょう。
そんな住宅をつくっていきたいですね。

By中村好文

(プロフェッショナル仕事の流儀4より)
2008.04.18:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

プレゼンテーションに凝る理由

プレゼンテーションという言葉は、プレゼントから派生したものですよね。
だから、ある種の贈り物をする気持ちがある。
お客さんは、どんな設計になるのか長い間待っています。
だから、その瞬間はすごく大事。できるだけ楽しんでほしいんです。

そういう企みを考えるのは大好きなんですよ。
うちの事務所のカレンダーにはスタッフ全員の誕生日が書き込んであって、
その日にはお誕生会をするんです。幼稚園みたいに飾り付けをして。

人生は楽しい方がいいじゃないですか。
子どものころからイタズラが得意。
イタズラが職業になればいいのにと思うくらいです。

By中村好文

(プロフェッショナル仕事の流儀4より)
2008.04.17:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

手書きの理由と、その効用

家の図面を引くときは、僕はずっと手書きです。
手で描く効用は、「手で考える」感じなんですよね。
「目を養い、手を錬る」という言葉があるでしょう。
「手練」ともいいますよね。

手で描くときには、筆記用具が必要です。
鉛筆とボールペン、そして筆ペンでは、タッチが全然違う。
スケッチをしていて、「何だか調子が出ないなあ」と思っていても、
筆記用具を変えたとたんに進みだしたりする。
それが「手で考える」ということかもしれません。

By中村好文

(プロフェッショナル仕事の流儀4より)

私の乏しい頭でも、企画はパソコン上で考えるより、
紙の上で自由レイアウトしながら考えた方が創造的になるような気がします。
脳科学者の茂木健一郎さんによると「脳は不確実性を喜ぶ」のだそうです。
2008.04.16:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]