この栽培方法を、生産者と科学者が力を合わせて確立し、しっかりとした技術体系をつくっていきたい。
台風が年々大きくなっているのも海の汚染が原因ではないかと考えています。
まず、川をきれいにすれば、魚や蛙や虫たちが戻ってくる。
すると、やがて海もきれいになり、台風被害も抑えられるかもしれない。
そんな夢が実現する頃には、きっと人間の心も、ずっと穏やかになっているのではないでしょうか。
自然環境が農業を変えるということは、農業が環境を変えることも不可能ではないと考えています。
それに、食べ物は、心に与える影響もすごく大きい。
だから、生産者は、「命をつなぐ糧をつくっているんだ」という誇りを持つべきです。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
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りんご栽培が教えてくれるもの
りんごの木は、私にとって命を分け合った友だちですね。
見えない部分を見ることが大事と教えてくれます。
例えば、建物でも、電気や水道などは、壁の中。
道路の下には、水道管やガス管などが走っているでしょう。
人間の体だって、大事なものはみんな、見えないところに保護されているんです。
木の根が大事なのも、土の中にあって見えないからです。
見えないからこそ、よけいに勉強しなくてはいけない。
人間は、見えるところだけを見て判断しようとします。
見えない部分を見るための努力や工夫をすることが必要であると
りんごの木が教えてくれているのではないでしょうか。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
見えない部分を見ることが大事と教えてくれます。
例えば、建物でも、電気や水道などは、壁の中。
道路の下には、水道管やガス管などが走っているでしょう。
人間の体だって、大事なものはみんな、見えないところに保護されているんです。
木の根が大事なのも、土の中にあって見えないからです。
見えないからこそ、よけいに勉強しなくてはいけない。
人間は、見えるところだけを見て判断しようとします。
見えない部分を見るための努力や工夫をすることが必要であると
りんごの木が教えてくれているのではないでしょうか。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
諦めずに続けられたのはなぜか
どう答えていいかわからないのですが、ばかになればいいのではないでしょうか。
私は、自分の母や妻を犠牲にして、麻酔学の基礎を築いた華岡青洲を尊敬しています。
私のやってきたことは忘れられてもいいんです。
「肥料や農薬を使わなくても農作物は継続的に生産可能だ」ということだけを伝えていきたい。
私が続けられたのは、後戻りできない状況だったからです。
丸太に家族全員がしがみついて太平洋にでたようなもので、行き先も、いつ着けるかもわからない。
自分が先導したそんな航海にすごく責任を感じていたので、簡単にやめて終わりにしたくなっかったのです。
その一念で、八年も続けられたのではないでしょうか。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
私は、自分の母や妻を犠牲にして、麻酔学の基礎を築いた華岡青洲を尊敬しています。
私のやってきたことは忘れられてもいいんです。
「肥料や農薬を使わなくても農作物は継続的に生産可能だ」ということだけを伝えていきたい。
私が続けられたのは、後戻りできない状況だったからです。
丸太に家族全員がしがみついて太平洋にでたようなもので、行き先も、いつ着けるかもわからない。
自分が先導したそんな航海にすごく責任を感じていたので、簡単にやめて終わりにしたくなっかったのです。
その一念で、八年も続けられたのではないでしょうか。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
反対意見とどのように向き合ったのか
本当に、色んな罵声がありました。「ばか」だとか、「かまど消し」だとか。
かまど消しとは、津軽弁で、家を失くすということ。
「かまど消しとは口をきくな」などといわれて、世間の目はすごく冷たかったですね。
だから、できる限り人と会わないようにしました。
会わなければ会話もない、と思いましてね。
ただ、農家は朝が早いんですよ。
四時になると人に出会うので、三時半には畑に向かっていました。
友達も一人去り二人去り、というなかで、最後まで残ってくれた人が一人だけいたんです。
貯えが一円もなくなって、電気も止められえるというとき、知らないうちにお金を振り込んでくれたり、
様々な形で助けてくれました。
彼は「やめろ」とは一度もいいませんでした。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
かまど消しとは、津軽弁で、家を失くすということ。
「かまど消しとは口をきくな」などといわれて、世間の目はすごく冷たかったですね。
だから、できる限り人と会わないようにしました。
会わなければ会話もない、と思いましてね。
ただ、農家は朝が早いんですよ。
四時になると人に出会うので、三時半には畑に向かっていました。
友達も一人去り二人去り、というなかで、最後まで残ってくれた人が一人だけいたんです。
貯えが一円もなくなって、電気も止められえるというとき、知らないうちにお金を振り込んでくれたり、
様々な形で助けてくれました。
彼は「やめろ」とは一度もいいませんでした。
By木村秋則
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
絶望の淵で見たドングリの木2
五年目には、とうとう木が枯れ始めた。
六年目の夏、万策尽きた木村さんは死に場所を探して、一人岩木山に向かった。
突然、視界にりんごの木が飛び込んできた。目を凝らすと、枝ぶりの似たドングリの木だった。
ふと思った。なぜ農薬をかけていないのに、自然の木には病気もなく、害虫もいないのか。
夢中になって根元を掘り起こした。土は驚くほど柔らかかった。
「もう直感しました。これを再現しようと。再現すれば、りんごは実るんだと」
りんごを育てることより、あの柔らかい自然の土をつくることだけを考えた。
八年目の春、近所の知り合いが駆け込んできた。
「木村、畑に行ってみろ」
白く可憐なりんごの花が、畑を埋め尽くしていた。
涙があふれて止まらなかった。
そのとき木村さんは気づいた。
花を咲かせたのは、自分ではない。りんごが自ら、力を振り絞って咲いたのだ。
「主人公はりんご」。それが木村さんの信念となった。
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)
六年目の夏、万策尽きた木村さんは死に場所を探して、一人岩木山に向かった。
突然、視界にりんごの木が飛び込んできた。目を凝らすと、枝ぶりの似たドングリの木だった。
ふと思った。なぜ農薬をかけていないのに、自然の木には病気もなく、害虫もいないのか。
夢中になって根元を掘り起こした。土は驚くほど柔らかかった。
「もう直感しました。これを再現しようと。再現すれば、りんごは実るんだと」
りんごを育てることより、あの柔らかい自然の土をつくることだけを考えた。
八年目の春、近所の知り合いが駆け込んできた。
「木村、畑に行ってみろ」
白く可憐なりんごの花が、畑を埋め尽くしていた。
涙があふれて止まらなかった。
そのとき木村さんは気づいた。
花を咲かせたのは、自分ではない。りんごが自ら、力を振り絞って咲いたのだ。
「主人公はりんご」。それが木村さんの信念となった。
(プロフェッショナル仕事の流儀13 File No.35より)