「議員は有権者の直接選挙で選ばれ、議決権を行使することによって、その意志が表明される。したがって、個々の賛否が問われることはない」「市民説明会の前までは会議録が公開されないなど報酬引き上げに関する資料の提示が十分でなかったが、9月5日の時点ですべてをHP上などで公表している。現時点では説明不足はない」「あらゆる手段を通じて、市民への周知を図ってきた。再度、説明会などを開く必要はない」…。聞くだにおぞましい“利得”まみれの大同団結の末、「花巻市議会議員報酬調査特別委員会」(高橋修委員長=議長を除く議員24人で構成)は以下に再掲する「議員報酬引き上げに関する陳情書」(8月22日提出)を議員23人(1人欠席)の反対で、不採択となった。
私は冒頭の参考人陳述に際し、2年前の3月議会へ提出した「市政の重要課題について、議員相互間の議論を尽くすことを求める」―陳情の件について、触れた。当時、市民の関心は新花巻図書館の立地問題やJR花巻駅の橋上化(東西自由通路)の成り行きに集まっていた。「議会の活性化」を求めるこの陳情は付託委員会ではいったん採択されたものの、本会議では逆に反対多数で不採択となった。
「この件については議会内の特別委員会(新花巻図書館整備特別委員会)で審議が尽くされている」―。反対討論に立った議員の発言に腰を抜かした。議会特別委は令和2(2020)年12月17日付で解散されていたが、件(くだん)の議員は当時はまだ、議員職にはなかった。議会特別委の解散以降の新人議員は8人に上っていた。「図書館議論に一度も加わったことがない議員がこれだけいてもなお、議論は尽くされたと強弁する」―。これほど市民を愚弄(ぐろう)する議会を私は見たことがなかった。市政運営の原則である「二元代表制」はこの時点で実質的に崩壊したと言ってもいい。市民への“背信”行為はその後も身をひそめる気配はなかった。
一大プロジェクトである図書館案件は去る6月議会で「駅前立地」が賛成多数で可決された。この時の賛成討論者はこの日の「報酬調査特別委」で采配を振るった高橋委員長である。「いつまでやってんのか」―。図書館の病院跡地への立地を求めている市民に向けた、あからさまな誹謗中傷、いや暴言に怖気(おぞけ)が走った。「これは”人権侵害“そのものではないか」と―。私自身、市議経験があるだけに今回の陳情提出には正直、戸惑いを覚えた。しかし、「高橋」発言で限界を超えたと思った。駅前立地に賛成した議員のほとんどはいまに至っても、その理由を議場の場で公にしていない。こうした「市民無視」の中で突然、降ってわいたのが今年7月の市民説明会での「報酬アップ」の提案だった。
「本件は、報酬額の問題にとどまらず、議会制度の信頼と正統性に関わる重要課題です。市民の声に真摯に向き合い、開かれた議論を尽くすことを強く要請いたします」―。今回の陳情書はこう結ばれている。報酬審議の継続やアップ率の見直しなどに関わる発言は一切、なかった。こんな市民のささやかな願いを容赦もなく踏みにじり、この日「イーハトーブ」議会は自爆を遂げた。お見事と言うしかない。「もう、リコール(議員解職請求)しか残されていないのかもしれない」―。こんな絶望感だけが頭の中を去来し続けている。
ここまで一気に書いてきて、ハタと心づいた。在職中、議会傍聴に来ていた3・11の被災者(内陸避難者)の人権を擁護しようと発言した一件が、逆に「議会の品位を汚した」として、私自身が懲戒処分(戒告)に処せられたことがあった。目の前の議員の振る舞いを見ているうちに、この”悪夢”のような記憶が突然、よみがえった。「市民の代表者として、その品位と名誉を損なう一切の行為を慎み…」(政治倫理基準)―。「花巻市議会議員政治倫理要綱」(平成26年3月告示)はその目的について、こう定めている。「高橋」発言こそが同じ理由で処分に付されるべきではないのか…
※
<議員報酬引き上げに関する市民説明と意見聴取の徹底について>(再掲)
趣旨:
議員報酬を月額339,000円から最大幅で439,000円へ引き上げる提案について、花巻市議会基本条例およびまちづくり基本条例の理念に基づき、市民への十分な説明、意見聴取、透明な手続きの確保を強く求めます。あわせて、厳しい経済情勢と市民感情をふまえた再考を要請いたします。
理由:
物価高と円安の影響により、市民の暮らしは極めて厳しくなっています。食品価格は高騰し、実質賃金は過去3年間低下が続いています。光熱費や生活必需品の支出に苦しむ市民にとって、議員報酬の10万円増額は「議員ファースト」と捉えられても仕方がありません。
市民に選ばれた議員が、自らの報酬を引き上げることには極めて高い説明責任が伴います。ところが、これまでの議論は十分な情報開示もないまま進められており、多くの市民が経緯を把握できないまま、報酬引き上げが先行した形です。
花巻市議会基本条例第24条第2項は、報酬改定時に「市民の意見を参考にすること」を定めており、第8条・第9条も説明責任と応答責任を明示しています。また、まちづくり基本条例でも、市民参加による熟議と合意形成が原則とされています。
一部で「市民説明会」が実施されたとはいえ、広報の範囲や議論の中身は不十分で、議員一人ひとりの賛否理由すら説明されていない現状では、市民の納得には到底つながっていません。
このまま拙速に議決すれば、議会そのものへの信頼が大きく損なわれかねません。報酬引き上げに先立つべきは、まず信頼の回復であり、十分な説明と参加の機会です。
要望事項
1.報酬引き上げの根拠資料や審議経過の全面公開
2.議員個々の賛否理由の説明責任の履行
3.市民が参加可能な説明会や意見交換会の再実施
4.パブリックコメントなど市民意見を反映する制度の導入
5.現下の経済状況をふまえた慎重な再検討
本件は、報酬額の問題にとどまらず、議会制度の信頼と正統性に関わる重要課題です。市民の声に真摯に向き合い、開かれた議論を尽くすことを強く要請いたします。
(写真は陳情提出の参考人として、意見陳述する私=9月16日午後、市議会委員会室で)
★オンライン署名のお願い★
「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。
「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。
私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
●オンライン署名の入り口は以下から
●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ
・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba
・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/
・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/