夏になると、日本各地の日当たりの良い道端の藪や山野に、白い花をいっぱいにまとったセンニンソウが目を引きます。センニンソウはつる性の多年草で、無毛の茎は勢いよく長く伸びます。葉は羽状複葉で、小葉は卵円形で3~7枚付けます。葉柄で他のものにからみよじ登ります。花は盛夏から初秋にかけて円錐花序にがく片4枚の白い花を多数つけます。茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起す有毒植物です。
和名のセンニンソウ(仙人草)は、白い花をまとった姿が仙人をイメージすると思いきや、花の後に果実より伸びた銀白色の長毛が密生した様子を、仙人のひげにたとえたことに由来しているようです。センニンソウの別名には、ウマノハオトシ(馬の歯落とし)、ウマノハコボレ(馬歯欠)、ウシクワズ(牛食わず)、ハコボレ(歯欠)、ハグサ(歯草)などがあり、これは有毒植物である所以(ゆえん)です。学名のClematisは「若枝(clema)」、ternifloraは「3つの葉の(ternifolius)」に由来します。
10月頃に根及び根茎を掘り出し、水洗いした後、乾燥したものが生薬 「ワイレイセン(和威霊仙)」です。しかしその利用例はわかっていません。民間では、夏から秋にかけて採取したセンニンソウの生の葉を扁桃炎(へんとうえん)、神経痛、リウマチの痛みの患部に数分貼り付けるなど、少し手荒い療法があったようです。いずれにせよ、センニンソウは毒性が強いので、民間では絶対に飲用しないように注意が必要です。それゆえワイレイセンは、残念ながら漢方の生薬として日本では利用されていません。
類似植物の中国産のサキシマボタンヅル(Clematis chinensis Osbeck)の根は生薬「イレイセン(威霊仙)」と呼ばれ、四肢の関節痛や痺れ、慢性関節リウマチに利用されます。また、イレイセンを含有する疎経活血湯(そけいかっけつとう)は身体の血行や水分循環を良くし、また痛みを抑える働きがあることから、関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛の改善目的に用いられます。中国のイレイセンに対して、和のイレイセンには、活躍の場が無いのが歯がゆくて仕方ありません。
センニンソウ
2025.09.14:masato0525:[コンテンツ]
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