南陽市のワシントン桜
アメリカのワシントンで春の風物詩となっている「全米桜祭り」(National Cherry Blossaom Fesytibal)が開催されています。ポトマック公園に八千本近い日本の花とされる桜木が植栽され、70万人以上の人々が桜を愛で楽しんでいるとテレビ等でも報道されます。この桜木は1884年に一人の女性が日本の桜に魅せられ桜の植樹を思いつき、その後ポトマック川沿いを桜並木にしたいと努力した人々によって、1912年に日本から贈られた桜が植えられたといいます。「烏帽子山千本桜保存会10周年記念誌」に次のような一文があり、このワシントンの桜の二代目が南陽市に植栽されていることがわかりました。「ワシントンの二代目桜 赤湯中学校に寄贈植栽」という題で、次のように紹介されています。
『米国ワシントン市ポトマック湖畔の桜二代目を日本さくらの会のご配慮で、5年もの7本を購入することができ、そのうち5本を赤湯中学校校庭脇に横山建設(株)の協力をいただき、10月5日(平成6年)、同校の先生と保存会会員とで植栽し、贈呈しました。2本は来年2代目園に植栽する予定にしています』
烏帽子山公園2代目園にそのワシントン桜が植栽され、表示のプレートも立ってあり20数年の歳月を感じさせる木に成長し来園者を楽しませています。しかし、赤湯中学校に植栽されたといわれる5本の桜については、記録もその姿も見ることができません。
当時の保存会役員はほとんど亡くなりましたので、平成6年当時赤湯中学校の校長であった前千本桜保存会会長柴田正夫氏に尋ねましたが記憶がないと植えた場所等を特定することが出来ず、当時の学校日誌や沿革史等にも記録されていませんでした。
植栽された翌年の平成7年に同校校長に着任した手塚昌男氏は5本の桜を植栽したことは記憶にあるとのこと、さら平成8年に同校教頭であった猪野忠氏は「ワシントン桜」と記されている小さなプレートが吉野川沿いの土手の桜の木のそばに確かにあったと語っております。その後吉野川の水害によってグランドが水浸しとなり、そのプレートは流されてしまったのではないかと猪野氏は語っています。
同校グランドに出向きましたが、どの桜の木がワシントン桜であるかを特定することは困難でありました。グランド東側には樹齢30数年の桜の木が古木に交じって数本植栽されており、これらのどれかが「ワシントン桜」であろうと考えられますが、特定するに至りませんでした。
歴史に名を残すワシントン桜が赤湯中学校に植栽されていることに、かつて同校に勤務し、保存会会員の一人として格別の思いがあります。きっと、毎年咲くこの桜の木が生徒たちの健やかな成長と活躍を見守っているに違いありません。 (文責 加藤正人)