最上義光歴史館

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「鐵[kurogane]の美2024の展示風景


綾杉のきらめき-刀工月山〜軍勝

 新年度がはじまり当館では、企画展示として「鐵[kurogane]の美2024〜綾杉のきらめき-刀工月山〜」と題し、本県ゆかりの刀工「月山(古刀)」の作品を4月3日から6月末まで展示しています。綾杉肌(あやすぎはだ)と称される独特の鍛えがご覧いただけます。戦国時代の刀剣は、当然ながら実用品であり、地産地消と言いますか、需要のあるところに生産するところができてくるわけですが、当館学芸員によると、刀剣はどこでも作れるわけではなく、まずは材料と燃料が入手できるところ、刀剣であれば砂鉄と炭が入手できることがまず条件で、そして水が大いにかかわるとのことです。
 日本刀の鉄は、日本には鉄鉱床が少ないため、花崗岩などにわずかに含まれる砂鉄を原料としました。「たたら製鉄」です。水辺に自然に堆積した砂鉄を集めたほか、山際を掻き落とした土砂を水路に流し、比重で選別する「鉄穴(かんな)流し」という方法で砂鉄を得ていました。そのための水がかかせません。また、たたらでは、燃料は「石炭」ではなく「木炭」を使用するので、近くに炭となる樹木があることも望ましい条件となります。
 月山は名水の地として有名です。環境省の昭和の名水百選にも「月山山麓湧水群」として入っており、「月山自然水」などの名称で県内のスーパーで販売されています。かつて山形市内の某百貨店では、正月初売りの時にこれを若水として来店者に無料で配っていました。実は数年前にこの百貨店は倒産してしまい、県庁所在地では初めて百貨店が消えた例となりました。しかし、その建物はいまも残っており、地下食品売り場にある井戸からは、地下水がこんこんと湧き出ています。主に建物の空調の冷却タワーに利用されていました。付近の商店街では、このようなビル用の井戸が他に何本も掘られ、一時期、地下水の汲み上げ過ぎによる地盤沈下も起きました。
 話を元に戻すと、築城においても水が重要でして、生活用水は言うまでもなく、堀の水をどうするかというのも課題となります。特に堀の水は、川から引き込むのが一般的かとは思いますが、山形城の場合は地下水で満たすことができました。ちょうど扇状地の縁にあたる場所で、築城当時は地下水が豊富に湧出していたようです。しかし一時期、地下水位が下がって空堀になってしまいました。そうです。地下水のくみ上げ過ぎによるものです。しかしその後、地下水を動力で揚水し、農業用水路からも水を引き込み、現在は水を湛えた堀となっています。
 刀鍛冶にしろ築城にしろ、水は極めて重要な立地要件になるのですが、先端産業のAI開発でも水の確保が必須条件となります。AIのデータセンターでは、日に何百万リッターの水が冷却水として必要とのこと。最近、国内誘致で話題となった大規模半導体工場も大量の洗浄用水が条件で、誘致できた場所はそもそも地下水などに恵まれていたものの、国や関係自治体は上下水道等の整備確保にそれなりの費用をつぎこんだそうです。
 ということで、今も昔も興産に水は欠かせないという話ではありましたが、最上義光にも水をありたがる言葉があります。「命のうちに今一度、最上の土を踏み申したく候、水を一杯飲みたく候」。これは、朝鮮出兵にあたり、肥前名護屋城に留まった時に郷土への想いをうたったものです。水に恵まれれば業を興し千金を手にすることもできますが、一杯の水にも千金の価値があります。ふむふむ、今回はなんかいいこと言ったような。

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