山形工科短期大学校第二十五期生のみなさん、本学への入学、誠におめでとうございます。
本日は、みなさんの入学を共に祝って頂く筈のご来賓が出席出来ず、また保護者の皆さまにもご不便をおかけして申し訳なく思います。新入生のみなさんは、せっかく始まる新しい生活において、予想以上に長引く新型感染症に不安を抱かれている方もいらっしゃると思います。しかし、我々教職員と、皆さんの所属する派遣企業が新たな学びの場をしっかりと整え、全面的に支援致しますので、是非、住環境を創り出すための知識・技術をしっかりと学んで頂きたいと思います。頑張って下さい。
みなさんがこれから生活される長井市について、少し紹介します。ここは人口二万七千の一地方都市ではありますが、二〇一八年の二月に国の文化財「重要文化的景観」に選ばれるほど、歴史的な建物や町並みが多く残り、そこで今現在、人々のかつての営みも継承されています。江戸時代の商人のお店や明治時代の洋風建築などがあり、水路が至る所に流れていて建築やまちづくりを学ぶ上で大変適した場所です。時期をみて学習の一環で見学会を行いたいと思いますので期待していて下さい。
さて、時節柄、私の式辞も短くしなければなりませんので、先人の言葉を一言だけ紹介してまとめにしたいと思います。
昔の人は本のなかをじっくり自分の足で歩いたのです
これは小説家三島由紀夫の言葉で、雑誌などで文章が粗末にされることを嘆き、文章というものは、もっとじっくりと味わうべきだと指摘したものです。本来は小説の読み方について書かれたものですが、ここでは少し違う意味で受け取って下さい。建築や家具を学ぶ際、もちろんどんな材料をどのようデザインし、どのように造るかがとても重要で、そのために教科書や参考書があります。しかし、それだけで本当の勉強になるでしょうか。建築や家具は、それを必要とする人がいて、そのために造る人がいる。結局、人が大切です。人がどのようなことを考えて造り、使うのか。そこを踏まえず、ただ造り方だけを覚えてやみくもに造ってもそれは人のためのモノとはなりません。モノづくりを学ぶことと同時に、ヒトを理解することが大切なのです。ではどうすれば良いか。これを知るためには、教科書以外に、建築や家具について書かれた様々な図書をじっくりと読むと良いでしょう。建築家、デザイナー、職人の言葉を知ることで自分の目指すべき道を見つけることも出来ます。インターネット上の情報は一過性のものが少なくなく、信憑性が疑われるものもあります。また、色々な場所に出歩くのが難しい昨今ですから、是非、専門書を読んで少しでも建築や家具を身近に感じて下さい。若い頃に読んだ本は必ず自分の糧となります。本のなかをじっくり自分の足で歩いて下さい。
この3月に卒業した学生が作った卒業制作は、一般の方々からデザインや使い勝手についてたくさんの高い評価を頂きました。新入生の皆さんも、使うヒトのためとなる建築や家具を創り出せるよう、日々努力して下さい。
皆さんの二年間の成長に期待しつつ、その第一歩となる今日の良き日を改めてお祝い申し上げます。
令和三年四月三日
山形工科短期大学校 学校長 小幡知之
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