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【2013/12/28 毎日新聞】ニューイヤー駅伝:役所チームで町おこし 山形県南陽市

 わが古里のアピールに、山形県南陽市が「ゆるキャラ」ならぬ「走るキャラ」で挑む。国内のトップランナーが群馬・上州路を駆け抜ける元日の風物詩「ニューイヤー駅伝 第58回全日本実業団対抗駅伝競走大会」(毎日新聞社など共催)に、公務員チームを組み初出場する。新発想の町おこし、果たして効果のほどは?【浅妻博之】

 午後5時15分。市役所各課で仕事を終えた選手たちが近くの広場に集まり、ランニングを始めた。辺りはもう真っ暗だ。陸上部は11人。ケニア人の嘱託職員を除く10人はフルタイム勤務で練習時間は限られる。朝は午前6時に顔をそろえ、走ってから出勤。「残業や土日業務で走れないこともあるが、同僚の配慮で練習時間を確保しています」と堀宏和主将(27)=スポーツ文化課主事=は話す。

 県南部に位置する南陽市は山形新幹線「つばさ」で東京から約2時間半、中心部の「赤湯駅」で降りる。ブドウや洋梨のラ・フランス、菊の産地で、赤湯温泉は平安時代開湯の観光名所。だが全国的な知名度は低く、人口は平成に入って1割減の約3万3000人。南国を思わせる市名から「暖かい地方に米は合わない、と誤解される」とぼやく米作農業者もいる。

 過疎から抜け出そうと一念発起したのが2006年に就任し、現在2期目の塩田秀雄市長(61)だ。高校時代に駅伝選手だったこともあり「テレビ中継で『南陽市役所』のゼッケンが映れば全国に知られる」と、08年から「公務員ランナー」獲得の行脚を始めた。箱根駅伝出場の中央学院大、早大、山梨学院大、上武大、城西大などの監督に直談判し頭を下げた。当初は難色を示されたが、関東の記録会にも顔を出す熱意が認められ、1人、2人と入庁者を増やしていった。11年には8人となり、ニューイヤー駅伝予選の東日本実業団大会への出場人数7人を超えた。同年の初挑戦は、本戦出場圏の13位に22秒差の14位と大健闘。12年は15位だったが、今年は13位に滑り込み、構想から5年で悲願を達成した。公的機関では警視庁や自衛隊の本戦出場は過去にあるが、地域振興目的は極めて珍しい。

多くの地方都市が「ゆるキャラ」で巻き返そうと必死になる中、なぜランナーなのか。「ゆるキャラ人気は一過性で長続きするとは思えない。地元の若者が県外に行っても自信を持って紹介できる取り組みにしたかった」と塩田市長。今年度からスポーツや文化・芸術で全国レベルの大会入賞者に市の採用試験の特別選考枠も設けた。

 部員の大半は話をもちかけられるまで南陽市を知らなかった。宮城県出身で中央学院大から入庁5年目、堀主将は「最初は1人で練習をしていた。構想が実現するとは思えず、仕事も練習も中途半端だった」と振り返る。千葉県出身で大学は堀主将の後輩の大野紘崇(ひろたか)選手(25)=市教委管理課主事=は「市民の方々の支えがあり、家庭も持った。恩返しの気持ちで頑張りたい」と、元日に向け意気込む。


ニューイヤー駅伝に向け調整する南陽市役所の選手ら=東京都町田市で2013年11月30日、田原和宏撮影


南陽市役所陸上部公式サイト 【<<前に戻る】


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