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【産経ニュース】赤湯温泉(山形県南陽市) 上質ワインと名湯に浸る

 東北で酒といえば日本酒。山形も日本酒どころとして知られるが実はワイナリーが12カ所あり、ワインの日本三大産地の一つに数えられる。その中で九百余年の歴史を誇る山形県南部に位置する南陽市の赤湯温泉にはワイナリーが4カ所も集中、同温泉は「ワインと温泉」で全国に売り出すキャンペーンを開始した。

 平安時代の発見

 赤湯温泉の発見は平安時代の寛治7(1093)年、武将、源義綱がお告げにより湧き出る湯を発見したことに遡(さかのぼ)る。戦で傷ついた家来たちが湯につかると傷は治り、傷から出た血によって温泉が真っ赤に染まったというのが「赤湯」の由来だという。江戸時代には、米沢藩上杉家の御殿湯として栄えた。

 そんな名湯の温泉旅館の若旦那衆が秋晴れの10月中旬、観光ブドウ園「紫金園」で地元ワイナリーのワインに合う、厚さ2センチの山形牛を使ったすき焼きメニューを披露した。

 参加したのは、赤湯温泉旅館協同組合に加盟する14旅館中8旅館。肉のボリュームに負けないように、割り下に赤ワインや酒かすを使用したり、ゴルゴンゾーラチーズやアンズソースを使った新感覚のすき焼きになっている。



地元ワインに合う山形牛を使ったすき焼きの新メニューが観光客らに振る舞われた=10月17日、山形県南陽市の紫金園



 料理ごとに南陽市出身のソムリエ、久松茂さん(52)が最適な地元ワイナリーの銘柄を2種類ずつ選択した。「ここのワインは大手ワイナリーと違って量産されておらず、質にこだわった家庭的な各ワイナリーの個性を楽しめる」と話す。

 なぜ、旅館の若旦那衆たちがワインと温泉のコラボに乗り出したのか。理由は観光客の減少だ。ピーク時の平成4年には69万1千人いた観光客も昨年は15万1千人に。東日本大震災の影響も響いた。

 こうした事態に危機感をもった同組合の若旦那衆たちが中心になり、今年1月の国の緊急経済対策の一つ、観光庁の「魅力ある観光地の再建・強化事業」に「ワインの似合う大人のまち」として応募したところ613件中の78件の一つに選ばれた。来年の山形デスティネーションキャンペーンに向け、ワインと温泉のコラボで集客を狙う。

 地域活性コンサルティング会社「バリュー・クリエーション・サービス」の佐藤真一代表取締役は「新幹線の駅がありアクセスもよい。名湯にワイナリー、質の良い山形牛と情報発信次第でその良さが全国に伝わるはずだ。地元の認識以上に大きな可能性を秘めている」と話す。


「紫金園」のワイン蔵。平成2年に瓶詰めされたワインが保存されている=山形県南陽市 


 同地は寒暖の差が激く、ブドウ栽培の適地でワイン醸造も明治半ばに始まった。特に十分一山(じゅうぶいちやま)(標高約500メートル)の急斜面は水はけがよく太陽の光をいっぱい浴び、良質なブドウを生み出す。ただ、厳しい現実もある。急斜面の作業であるため廃業する園も。大正時代から同山でブドウを栽培する「紫金園」4代目の須藤孝一さん(56)は「若い頃は作業がきつくて嫌だったが、今は斜面に広がるこの光景を残していかなければと思う」と語る。

 アジアの桃源郷

 午前6時過ぎ、同組合の須藤清市(せいいち)副組合長(57)がパラグライダーが盛んな同山頂上を案内してくれた。ブドウ畑や田が眼下に広がっていた。「まだパワー不足だが、ワインを軸にした滞在型観光をアピールしたい」と須藤さん。

 明治時代にこの地を旅した英国人女性、イザベラ・バード(1831〜1904年)は赤湯に広がる光景を「エデンの園」、南陽市を「アジアのアルカディア(桃源郷)」と評したという。そこにワインという新しい魅力が加わった。(杉浦美香、写真も)

 【メモ】赤湯温泉は山形新幹線赤湯駅(南陽市)から車で約5分。東北自動車道の福島飯坂インターチェンジ(IC)から国道13号で約1時間。山形蔵王ICから約40分。ワインの醸造は明治時代から。ソムリエの久松茂さんによると、4ワイナリーの特徴は、酒井ワイナリーが「辛口」、大浦ぶどう酒店は「フルーティー」、佐藤ぶどう酒店は「南陽を代表する『金渓(きんけい)ワイン』(同酒店の商品名)」、須藤ぶどう酒は「どっしりとした赤ワイン」という。問い合わせは、南陽市観光協会(電)0238・43・5230か、赤湯温泉旅館協同組合(電)0238・43・3114。


赤湯温泉

 【山形県赤湯温泉 マップ】