梨郷神社から最上川を越えると直ぐである。
苔生した参道は強く降り出した雨で滑る。
雪駄を愛用しているが、底に凹凸が無く、濡れた地面は滑りやすいのが欠点だ。
ホームセンターで観葉植物に水を散布したばかりの床で仰向けに大転倒し、腰を強打した。
スローモーションの様に宙に浮き、天井が見えゆっくり床に落下するという経験の
後に激痛が襲ってきたが幸いにも怪我は無かった。
自分の身体が随分頑丈だなと驚いたものだ。
そんな事を思い出しながら拝殿に向かう。
薄暗くなった参道には出店の業者が準備を始めていた。
獅子舞いはもう出掛けている雰囲気で、留守番の関係者数名が車座になり歓談中だ。
中央の賽銭箱の後ろに獅子頭が赤と黒の二頭が安置されていた。
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赤い獅子頭は一寸見で渡部重左衛門の作と分かる。
先ほど訪れた梨郷神社でも見たばかりである。
渡部氏の生家はこの近くの中沖だから、近辺に多くこのタイプの獅子頭が多い。
この近辺では珍しい紺と白の獅子幕で、頭の後ろにタテガミの縄が着いていて興味深い。
加賀風に梵天を噛んで置かれていた。
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一方、総宮系の黒獅子頭は昭和期の竹田吉四郎の作と思われる。
ハート型の鼻の穴が作風の特徴の一つだ。
同所薬師堂にも吉四郎作の獅子頭がある。
吉四郎作の獅子頭にも総宮系の波模様でなく、赤獅子と同じ紺と白のツートンだった。
伊勢の獅子神楽にも同じ様な幕が用いられている。
今の八幡神社の獅子舞を見ると総宮系の舞だが、幕は神楽系の幕を使用している。
重左衛門の作の赤獅子は明治期で今の総宮系導入以前は、米沢に近い川西の神社の獅子舞の様
に獅子廻しを行なっていたのだと想像出来る。
同所の薬師堂を始め、すぐ隣の大塚の熊野、東大塚羽山神社、犬川の龍蔵神社が総宮系の獅子
舞いを導入している。
獅子舞を探しに西に向かった。
風に乗って太鼓の音が、途切れ途切れに西から流れて来る。
病院の南の菊田あたりの地区を通ると小さな神社に幟が立って、住民が集まって獅子を迎える
準備をしていた。
尋ねると、ここの公民館でお休みするのだと言う。
さらに獅子はここに岡を越えてくるんだと指差して教えてくれた。
それでは待っているのも難なので、道を登っていく
すると岡の上は墓地で見晴らしが良い。
太鼓の音が大きくなってきた。
獅子舞の行列が病院の南の薬師温泉という老人施設に入って行くのが見えたので行ってみる。
施設での獅子舞い御信心が終わっていた。
三頭目の獅子頭は佐藤耕雲のように思える。
薬師堂でも獅子頭は竹田吉四郎と佐藤耕雲の作と続いている。
獅子舞一行はびしょ濡れの中、岡を登って移動している。
なかなか見れない光景で良い。
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集落に着くと幟が立っていた大宮子易神社の門前で警護掛りが始まった。
警護に足を絡めて抵抗する形で面白い。近くでは、おんぶしてしまう警護掛かりもあり
それぞれの神社の個性を醸している。
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警護掛りの途中に御大、高田 権宮司が現れた。
90歳を越えても現役バリバリの宮司として御活躍中だ。
お祭りシーズンが終わったら、獅子舞のお話を聞きにお邪魔する予定で楽しみである。
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以前、高田宮司からお聞きした「しーーっ しーーーっ」という𠮟声が幕の中から
聞こえていた。
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