東大塚 羽山神社

  • 東大塚 羽山神社
川西町東大塚の羽山神社に訪れた。

いま現役の獅子頭は自分の制作で、獅子幕も納めているが久しぶりである。



獅子頭制作時にお祭りを見に来て驚いた記憶がある。

まさに暴れ獅子の様相で、神社に獅子を入れる時点で乱闘が始まってしまった。

太鼓打ちの若者が何故か怒っていて、獅子振りと何か怒鳴り合っていた。

更に激高した太鼓打ちはバチを獅子に向かって放り投げ、それが乱闘開始の合図になったのだ。

獅子ごと若者達と一塊になり揉み合う様に神社の暗い後ろに流れ、ドタバタと乱闘と怒号が

祭りのクライマックスの境内に木霊するのであった・・・。

隣で傍観していた総代の方に「毎年こうなんですか?」と尋ねると

「まぁ~何時もこんな感じだな」と笑いながら答えた。

この方も若い頃は暴れたのだな?

近くのおばちゃんも「あらあら、また始まった」・・・ポツリと呟く。

ちょっと脚色しながら記憶を甦らせてみたが獅子舞乱闘もお祭りの一つだったのだ。





さて、こんな暴れ獅子の歴史を持つ羽山神社の獅子舞いは現在どうなのかと神社に行ってみた。

獅子舞いは既にお出かけで、近くで太鼓の音が聞こえる。

留守番の関係者にお願いして隠居の獅子頭を拝見する。





二頭あり、記名は無いが、小振りの黒獅子は金子豊夫の作風で、

もう一頭の赤い獅子頭は宮内の美尚堂工房の菊池忠男氏の作である。







実は、もう30年前にもなるが、こちらの造形物の制作会社に勤めていたのでこの獅子頭に憶

えがあった。強化プラスチック製で頑丈に立派に作られているが、頑丈過ぎて大きく重くてこ

ちらの獅子舞いには適さなかったので使用したのは数年だという。

奇しくも、次の獅子頭が自分に依頼が来るとは何か運命的なものを感じたのだった。








撮影を終えて橋を越えると、のぼり旗が見え人が集まっていた。

丁度これから獅子宿の公民館に入り、お休みするのだという。

集落の家々を廻っていた。獅子頭は大丈夫かな?と様子を伺うが破損も無く達者な様子で安心

した。



関係者の話だと、時代が変わり暴れ獅子はすっかり大人しくなったそうだ。

駐車場にはパトカーがあり、お目付役の駐在さんも獅子舞いに同行している事も影響してるの

かも知れない。



納品後、獅子頭の顎の軸付近が破損して修理後何事も無い。新しい獅子幕も半分まで破け修理

してから以後は修理依頼も無い。



二十名程の小学生たちが旗を持って歩いている。

笛太鼓の若者達も沢山居て賑やかである。

米沢や高畠、川西の一部は獅子廻しだけで舞いは無く、久しぶりにお馴染みの総宮系の獅子舞

を見るとヤハリ良いものである。




公民館前で警護と獅子の力くらべ「警護かかり」が始まった。

警護の棒を見ると棒の先に和紙の御幣が付いていて、なる程なと思った。




修験山伏や地蔵が持つ錫杖(しゃくじょう)が警護棒の由来かと考えていたのだが・・。

また警護が巻いているサラシにご祝儀の束を差し込んでいる。

なんか威勢が良い。



警護掛かりの際、警護の手が獅子頭の顎の隙間に手を差し込んで舌の根元を掴んでいる。

獅子の急所が舌なのだと聞いた事が有る・・確かに急所を押さえられ苦しくて口を全開にしな

がら獅子宿に押し込まれるのだろう。




今、トアル神社の獅子幕修理の依頼がきている。警護掛りの際、麻の前幕がボロボロで苦労し

ながら縫い合わせている痕がある。

こちらの警護掛かりの様に、顎の幕の隙間から獅子の舌を掴めば獅子幕の破損は少ないだろ

うから合理的である・・・。





考えてみると獅子はキチンと警護掛りしてキチンと公民館にお休みしたが、昼間はまさか駐在

さんや子供達の面前では暴れる訳にはいけないだろう。

きっと本領発揮は夜遅く、神社境内に入ってからなのだ・・。



2016.09.01:shishi6:[コンテンツ]

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