いま、先日獅子頭拝見でお借りした破損した広幡の一の宮神社の獅子頭を修復している。
大破損し忘れ去れようとしていた所で、ひょっこり現れたタイミングは
何か・・出会いとしか言いようが無いような気がするのだ。
お焚き上げ用の棚に入って、顎も無く無惨に破損したこの獅子頭だったが蘇生しようとしてい
る。
恐らく一の宮神社の歴史の中で最古の獅子頭で、何度もの祭りで破損し、修理を繰り返してい
る事が分かる。
獅子頭に打たれた数多くの釘を一つ一つ抜き、補強のため取り付けられていた木片を脱却す
る。
使命執行の呪縛から解放された獅子頭はポツリポツリと語り始めた。
両軸穴部分が破損し方側は無くなって、その為か顎と片耳が紛失しいる。
それ以前、漆職人による本格的な修理が行なわれた痕が見られる。
仮の修理で穴を開け麻紐で結び固定している痕も残っていた。
頭の丸い鉄釘は近代に入ってからで、鉄や銅の角釘は江戸時代の痕跡である。
獅子頭の顔の様式や、耳が別に作って紐や棒で取り付けるのではなく彫り上げた耳である事が
珍しい。
彫り込んでいる歯の彫りに固執が見られ、細かい線彫り等無く塗りも黒の漆の上に本朱をザッ
クリ塗り上げている。
持ち手が脳天の裏に溝を彫り低い位置で獅子頭を保持していたようだ。
僅かな獅子幕の破片が付着しているので、飾りの獅子頭ではなく祭りで活躍したのだろう。
目の縁にしっかり金箔が残っていて、少し擦っても剥がれない丈夫さだった。
現在、判明した事は僅かだが仕上がるまで、この獅子頭を見守っていきたいものだ。
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