烏帽子山千本桜保存会設立30周年記念誌に以下のような原稿を寄せた。「未来へ」の題する文章であるが私の好きな歌の題でもある。この歌に重ねて文章を認めた。駄文であるがお読みいただきたい。
未 来 へ
沖縄出身の歌手キロロの「未来へ」という歌がある。二十年以上も前にリリースされたこの歌は中学校や高等学校の卒業ソングとして歌われていた。原曲はキロロの一人玉城千春が中学三年の時に母親に宛てて書いた曲であり、結婚式で両親に贈る歌としても使われることがあるという。この歌はやわらかなメロディと、歌詞に込められた思いに触れ、もう一頑張りしてみようと元気をもらえる私の好き歌である。この「未来へ」をニュージーランド出身の歌手ヘイリーが、カバー曲として澄んだ歌声を響かせ聴く人を魅了する。
私は烏帽子山公園に咲き誇る桜とヘイリーの歌う魅惑的な歌声「未来へ」を重ねて映像作品を創った。見る人を烏帽子山公園の桜に誘う作品で、烏帽子山公園の桜の魅力を余すことなくスクリーンに映し出していると自画自賛している。
十数年前、千本桜保存会の事務局長の話があり、わけもわからずお引き受けした。かつて烏帽子山公園の桜をただ漫然と「きれいだな」と眺めていたが、その時から烏帽子山公園の桜は、私のカメラの被写体となった。以来十数年、一年を通して烏帽子山公園にのぼり、写真を撮り続けた。土手に咲く早春の小さな花々に心を躍らせ、桜の蕾のふくらみ具合を気にし、今年の桜はどうだろうかと開花に胸をときめかせた。一瞬でも早く桜の開花を見届けたいと公園を歩き回った。撮った写真は数千枚になる。
例年になく雪の少ない今年の冬、温かな日差しに誘われて烏帽子山公園にのぼった。おみ坂の階段そばに、季節を間違えたかのように水仙の芽が顔をだし、小さなつぼみが膨らんでいた。桜のつぼみは固く、開花はまだまだ先である。
春の兆しを見せ始めると、今年の桜はどうだろうかとやきもきする。開花している桜をいち早く見つけたいと心躍らせながら、今日こそは今日こそはと歩き回る。
烏帽子山公園の桜は百数十年前、この赤湯に住む人々の浄財と労力によって桜が植栽された。厳しい冬の寒さを乗り越えて咲くソメイヨシノ、エドヒガン、シダレザクラなど見る人の心を躍らせ、命の躍動を実感し春の訪れを享受しながら、先人が植えた桜に思いを馳せる。
この桜を次の世代に伝えてことこそ、今私たちに課せられた課題である。ヘイリーの歌う「未来へ」の曲にのせて映し出される桜を、未来に生きる子ども達や若者に遺していきたい。
※烏帽子山公園は自然にできたものではない。先人の知恵と労力と多額のお金が費やされている。その歴史は公園内にある「偕楽園碑」に刻まれている。刻まれている文字はほとんど読めないがそばに解説の看板があるのでせひお読みいただきたい。
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