『・・・日の光に照らされ、輝く紅葉を照葉という。もちろん朝の光、昼の光のなかにある葉は美しい。しかし色づいた葉は夕方にこそ映えるものだと、いつ頃からか思うようになった。夕闇に輪郭が溶け込んでいくような赤や黄に目を奪われる。・・・
・・・〈山くれて紅葉の朱(あけ)をうばいけり〉蕪村の句の17音には、刻々と流れる時間がある。色彩が暗闇に飲み込まれるまでの間に、葉っぱたちがいっときの競演をみせててくれる。もしも窓の外に少しでも木々があるなら、その時間を待ってみてはいかがだろうか。
夕刻に自らの人生を重ねる年ごろの人も。そんなときが来ることをまだ想像できないという人も』
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