換気システムの違いを理解する

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2003年に施行されたシックハウス対策法によって、換気設置が義務化となり、15年を経過しました。

しかし、設置は義務化でも、使用は個人の自由ということもあり、24時間換気システムというのに、間欠運転しているユーザーも少なくありません。

上記の画像は、換気方式の導入割合を示したグラフですが、相変わらず第3種換気(自然給気・機械排気)のシェアが高くなっており、第1種の熱交換換気(機械給気・機械排気)の普及率は30%にも満たないというのが現状です。



3種換気の割合が高い最大の要因は、何といっても導入コストで、義務化になったからとりあえずつけるという造り手が、未だに多いのです。

そして、ユーザー側も、換気といえば、これまでは、レンジやトイレ・浴室にしかなかったこともあり、室内空気の重要性や計画換気への理解が不十分なのも要因の一つで、進められるままに3種を設置させられているケースが多いのです。

一方で、換気が正常に機能していれば、不要ともいえる、消臭剤や芳香剤をはじめ、加湿機や除湿機・空気清浄器などの空気関連の市場は拡大しているから不思議なものです。

3種換気を勧めるメーカーは、メンテナンスが大変とか、ダクトにカビが生えるだとか、電気代がかかるとか、費用が無駄だとか、あれこれ理由をつけて3種換気にしてしまうのが通例で、ローコスト住宅や建売ではほとんど3種換気で、ノンダクトも多く、1種の熱交換にして下さいと言えば必ず多額の追加費用が発生します。

大手のハウスメーカーのモデルハウスでも、1種換気を設置しておきながら、実際に販売する住宅は、3種換気を標準にして、1種の熱交換換気はオプションというメーカーが、まだ多いのが現状で、ユーザーの換気に対しての考え方や予算に合わせて、勧める換気を変えているのです。



そうして、勧められるがままに3種換気を採用したユーザーのほとんどは、上記のように、住んだ後に、大きな不満を抱くようになります。

3種換気は、吸気口のために壁に穴を開けるため、冷たい空気も熱い空気も湿気の多い空気も、そのまま室内に導入するので、温度差のある冬や夏場は、室内への影響が大きいものになります。

その結果、給気口を閉じたり、排気側の電源をオフにしたりして、空気が汚れ、臭いがこもったり、結露の発生など様々な問題が生じてしまうのです。

さらに、場合によっては、寒さを解消するために、燃焼ガスと大量の水蒸気を発生させる石油ファンヒーターを使う方もいるようで、益々空気が汚れ、結露も発生しやすくなるという悪循環を招いてしまうのです。

3種換気を標準にしているメーカーの多くは、気密や断熱も不十分なケースが多く、エアコンではなかなか暖まらず、吹き出し口からの風が不快に感じ光熱費も嵩みます。

ご存知のように、結露は、日々の掃除も大変で、カビやダニの温床になりやすく、健康を害したり、臭いを消すために、消臭剤や芳香剤が必要となり、クロゼットにも防虫剤を使うなど、アレルギーやシックハウス・などの原因にもなります。

弊社のお客様で、消臭剤や芳香剤を多用している方はいらっしゃらず、拙宅でも飲み会などで、タバコや焼き肉などの臭いのついた洋服に使用するために、玄関にファブリーズは置いてありますが、ほとんど使わず、トイレにも芳香剤はありません。

特に最近では、洗濯物を家干しする方も多く、生乾きのイヤな臭いを軽減するために、香りの強い柔軟剤を使う方が増えていますが、柔軟剤に含まれる有害物質によってご家族や周囲の人にも影響を与え、香害として、大きな社会問題にもなってきており、建材の化学物質より、これら室内に充満する化学物質によって、シックハウスを引き起こし、やがては化学物質過敏症を発症させるとの話も良く聞かれます。

実際、弊社でも、20年ほど前までは、1種換気と3種換気を併用していた時期がありましたが、お客様からの不満も多く、APなどの物件を除き、一種換気に全て切り替えました。

3種換気は、関東以南の地域であれば、さほど問題にはなりませんが、宮城のような寒冷地では、後々、寒さによって様々な問題が発生するのは間違いなく、熱交換機能のついた1種換気が必須なのです。

掃除が面倒という方も中にはおりますが、何か所も給気口のある3種換気の方が逆に大変ともいえるのです。

フィルターのメンテナンスは、常に綺麗な空気の中で健康に暮らすためには必要な作業となります。

汚れの程度にもよりますが、3、4ヵ月に1回、僅かな時間で作業が済みますので、お忘れなき様お願いいたします。


電気代は、月1,000円程度かかりますが、不安定な窓開け換気に頼ることなく、大事な空気の守り役としての役目を果たしてくれることを考えれば、安い位だと思います。



人間が摂取する物質の中の重量比を比較すると、室内の空気の比重が一番大きく、一人があたりの必要な空気量は、二酸化炭素の濃度が基準にし、、健康に害を及ぼさないとされる濃度1000PPM以内にするには、1時間あたり約30立米の換気量が必要とされ、室内の空気が2時間に1回の換気量が求められています。



モデルハウスでは、空気の汚れや換気が正常に働いているかの確認も兼ね、二酸化炭素の濃度計も設置しております。

また、最近では、コストを抑え、寒さのクレームを解消するために、1種換気のノンダクト式換気を勧めるメーカーもあります。

そうしたメーカーは、結局は、導入コストや工期・施工の面倒さを敬遠するために、穴を開けて配線するだけで済むノンダクトを勧めるだけであって、メンテナンスを考えれば、何台も設置しなければならず逆に面倒といえます。

1台で時間当たり50立米もの負荷がかかることで、音や換気効率からいっても、後々問題が生じ、オフにしたり、弱運転にしなければならないことを理解しなければなりません。

そして、あえて付け加えさせていただければ、こうしたメーカーの多くは、室内空気には基本的に無頓着で、換気を正常に働かすための気密の重要性すら、ほとんど認識していないのも現実です。



上記のグラフの通り、気密が1.0を超えると、漏気量が一気に増加し、換気を作動しても、周囲の隙間から空気を呼び込むだけで、リビングや寝室などの空気は滞留してしまい上手く換気されないのです。

つまり、排気口付近の隙間から、外の空気を引っ張って、また外に排出する形になるので、室内の空気は汚れたままになってしまうのです。

弊社では、換気が義務化となる20年も前から、1種換気を標準にし、これまで1000棟以上に1種換気を設置しておりますが、皆さんが空気環境の良さに満足され、ダクト内のカビなどの問題は発生しておらず、未だに交換したケースもありません。

24時間換気はその名のとおり、連続運転が基本となり、空気が正常に機能し、室内に気流があれば、梅雨時の除湿を心がければ、カビなどの心配はありません。

そして、換気の給気口を壁に設置した場合、居室や間仕切りの多い家では、換気のショートカット(経路の乱れ)を引き起こし、建物の隅々まで換気するのは、非常に困難となり、はっきり言って、臭いのこもりやすい家になってしまうのです。



上記のグラフは、日本で一番断熱が進んでいる北海道のリフォームセンターのものですが、一般的に優秀とされるC値1.0でも、給気口からの給気量は、僅か50%しかないとされており、計画どうりの換気性能を発揮する気密性能を0.5以下にしなければならないというのが、ある意味常識とも言えます。

しかしながえら、気密の基準が無くなった現状の中、3種換気やノンダクトを採用しているメーカーで、全棟気密検査を実施し、C値0.5以下の気密施工するメーカーはほぼないのです。

気密が悪いということは、穴の開いたストローで、なかなか上手く吸えないのと同じです。

もちろん、弊社の家は、平均0.5というC値ですので安心ですが、空気の淀みをなくし、家の隅々まで換気するには、換気経路を考慮したプランニングも必要になります。

それぞれの建物に合わせ、適切な換気設計にもとづき、高い気密性能と確実な断熱工事を実施し、メンテナンスを行えば、冒頭に紹介したご不満のほとんどは解消するということをご理解いただきたいと思います。





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