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エアコン規格の摩訶不思議

  • エアコン規格の摩訶不思議
エアコンの選定をする場合、畳数表示を目安にする方がほとんどだと思いますが、この規格は、無断熱で隙間だらけの住宅が、大半だった1964年に業界団体が統一の基準を決めてから、50年以上経過した現在でも、同じ規格だということをご存知でしたでしょうか。



グラフを見てわかる通り、国内には4割ほどの無断熱住宅もあり、気密や断熱の不十分な住宅も多く、エアコンが効かないというクレーム防止のために、変更していないというのが、建前のようですが、何も知らずに、台数を余計に買わされたり、オーバースペックのエアコンを買わされないように注意しなければなりません。



こうした表示も、無断熱に近い隙間だらけの古い住宅を基準にしているのです。

参考までに、このエアコン表示の見方を紹介します。

左上にある期間消費電力量は、東京をモデルとし、 設定室内温度は、 冷房時27℃/暖房時20℃ で、冷房期間は5月23日~10月4日・暖房期間は11月8日~4月16日 です。そして使用時間: 6:00~24:00の18時間 の使用量の目安で、暖房使用時の外気温の設定は7℃です。

※ 宮城の場合は、地域係数という基準では、1.6となっているので、この数字の1.6倍が目安となります。

つまり、期間消費電力586Kw×27円=15,822円が東京での電気料金の目安となり、宮城県では1.6倍にして25,315円というのが、大まかな目安となりますが、この数字は気密や断熱性能の不十分な古い建物の目安で、性能の高い高気密・高断熱住宅の場合、5分の1位になりますので、年間5,000前後の電気料金となります。

右上にある7.2という数字は、APFという通年エネルギー消費効率で、冷房と暖房を併せた消費効率を指しており、1の消費エネルギーに対して、7.2倍の能力を発揮する機種ということで、数字が大きければ大きいほど省エネ性が高いということになります。

※ ソーラーサーキットの家では、APFの数値よりも、冷房をあまり必要としないため暖房COPという暖房効率の高い機種を選定しております。

次に冷房(2.2KW)と暖房時(2.5KW)の能力が表示されておりますが、定格時の能力で、この能力を発揮するための1時間当たりの消費電力が、右側に表示されています。下段の数字は、最低と最高の数字となっており、例えばこのエアコンの場合0.3KWから5.9KWまで対応ができますが、5.9KWのフルパワーで運転すると、1480Wの消費電力を必要とするということで、エネルギー効率は悪くなってしまいます。

※ エアコンは定格時の運転が一番消費電力が少ないように設計されています。

そして、左下にある4.5KWの表示ですが、外気温2℃の場合に必要な容量を明示しているというわけです。

※ 2℃というと、仙台の真冬の温度になるので、宮城で、断熱が不十分な住宅の場合は、6畳間に、6畳用のエアコンをフルパワーで、つけてもなかなか暖まらず、電気代もかなり高額になるということです。

私が、簡易的に、エアコンの必要能力を計算する方法として、用いるのは

Q値(住宅の熱損失係数)×部屋の大きさ×25℃(冬期間の部屋の温度ー最低気温)です。

※ 宮城の場合だと、冬季の最低温度は―5℃位ですので、室温を20℃にして温度差を25℃で計算しています。

ソーラーサーキットの標準仕様のQ値は約1.5位ですので、6畳の広さを暖房する場合、1.5×9.9×25=371Wとなりますので、計算上は、400Wの熱量で十分となります。

つまり、ハロゲンヒーターの弱運転(500W)で十分という事になり、逆に暑くなります。

ただ、ハロゲンヒーターなどの電気式の暖房器は、エネルギー効率は、1に対してあくまで1ですので、500Wの出力するハロゲンヒーターも、電気代にすると1時間あたり(1KW)27円で計算)13.5円かかるのに対し、上記の6畳用エアコンだと150W位の消費電力で済むので、4円位でOKとなります。(割安な夜間電力だと1.5円位)

この辺が、昨今のヒートポンプエアコンの優秀さという訳です。

ちなみに、120㎡(36.3坪)+16.5㎡(5坪の小屋裏)程度の大きさの建物の場合は、

1.5×136.5×25=5118Wとなり、計算上は2.2KWと2.8KWのエアコン1台ずつで、家中の熱源が、ほぼ間に合う計算になります。

※ ハイスペック仕様だと、1.3×136.5×25=4436Wとなります。

住宅の場合、部屋間の間仕切りも多いので、、少し余裕をみて1Fに4KW(14畳用)+2Fに2.8KW(10畳用)で、合計6.8KWのエアコンを設置しているのが通例で、間欠運転ではなく、24時間連続運転しても、年間の冷暖房費は、十分6万以内で収まるのです。

ただ、注意しなければならないのが、C値(家の隙間面積)で、いくら新築で、省エネ基準を満たしていても、C値が、1.0を超え、2とか3とか5とかのレベルになると、暖められた空気が逃げていき、足元から冷たい空気を引っ張り込みますので、2割~5割増しのエアコンの容量が必要となり、設定温度も高くなることで、光熱費はもちろん、運転音や風量などが気になったり、露点温度も上がる事で、結露が発生しやすくなったり、様々な不具合が起きてきます。

よく、建売やローコスト住宅などを購入なされた方が、エアコンでは暖まらない・暖房費が高いという声が多いのは、断熱性能もさることながら、気密性能も低いからで、換気を消したり、電気ストーブやホットカーペット・中には禁断のファンヒーターを使用してしまい、結露に悩んでいる方も多いのが現状です。

一方で、大手メーカーなどでは、こうしたクレームを避けるために、全館空調システムや床暖房システムをセットする手法がよく見られますが、多額のイニシャルコストとランニングコストを覚悟しなければなりません。

よく、新築でも、入浴するのに、寒くて換気を消すという方も多いようですが、こういう話を聞くと本当に悲しくなってしまいます。

※ 浴室暖房乾燥機を必ず勧めるのもこうした理由です。

参考までに、3年後に義務化となる省エネ基準のQ値2.4(UA値で0.75)で計算してみましょう。

※ 現在、新築されている住宅でも、70%~80%が大体このレベルです。

2.4×136.5×25=8190Wとなります。

こうした住宅のC値は、概ね5.0というのが、相場ですので、5割ほどの割り増しをして計算しなければならず、8190W×1.5=12285Wとなり、最低でも2.8KW(10畳用)のエアコンが4.5台は、必要になるわけです。

こうなると、機器代のイニシャルコストもさることながら、ランニングコスト的にも、全館暖房にはとても不向きで、いる所だけ暖める局所暖房となり、部屋間の温度差も最低でも7℃から10℃と広がり、寒い箇所や躯体内で、結露が発生してしまうのは、ある意味しようがないのです。

しかも、この数値は新築時のもので、経年劣化により、徐々に低下していくことも理解しなければなりません。

建売であれ、注文住宅であれ、多くは、エアコン暖房が基本となりますが、気密と断熱が不十分だと必ずこうした不具合が必ずつきまといますので、くれぐれもご注意ください。





大事なのは将来の性能



画像は、長期優良住宅の認定を取得するために、第3者の評価機関より発行される設計評価書と建設評価書の表紙です。

小さな但し書きにご注目下さい。



〇 この評価書は、時間経過による変化がないことを保証するものではありません。

つまり、長期優良住宅の認定を受け、最高等級の建物でも、将来の性能を保証するものではないということなのです。

人間の身体も老化が進むように、どんな素晴らしい建物であっても、経年による劣化は必然ですが、出来るだけ新築時の性能を保持できる建物でなければなりません。

屋根や外壁・設備機器は、劣化により修繕や交換は簡単ですが、目に見えない部分は、そう簡単に補修や交換は出来ないわけで、住み心地や省エネ性・耐震性なども含めた耐久性を左右する気密性能と断熱性能が劣化しない為の家づくりが、真の長寿命住宅には必要です。

この二つの性能が低下することで、湿気や結露によって、建物の性能や耐久性が著しく劣化するのは、これまで何度もご説明させていただいたので、ご理解いただけると思います。

しかしながら、日本の悪しき習慣により、現代の家づくりにおいても、根本的な湿気対策や結露対策は、残念ながら不十分であり、湿気や結露しても腐らないかのごとく、薬剤に頼った対策が大前提となっているのが現状で、薬剤が、どれほど効果が持続するのか、健康への影響はないのかなどは、実質的には、検証されておらず、定期的な点検と管理を実施し、不具合があれば、補修・修繕して、長持ちさせる手法が中心となっています。

しかし、補修や修繕は被害箇所のみの補修であり、気密や断熱性能の劣化部分の補修は、費用的にも技術的にも、現実的には困難なのです。

※ 家の隙間や湿気や結露で水分を含んだ断熱材の補修は出来ず、益々劣化が進みます。

湿気や水に弱いのが木材の最大の欠点です。



湿気に強い断熱材を後続の外側に断熱するのが、外断熱です。



壁の中の木材は、熱橋も防ぎ、断熱材は入らないので、常に空気に触れた状態となります。



断熱性と通気性という相反する性能を融合させて、家を長持ちさせます。



ソーラーサーキットの家は、完全な外断熱と二重通気によって、高い気密性と断熱性が長期にわたり保持され、構造が常に空気に触れることで、木材の耐久性も飛躍的に向上し、薬剤に頼らず、新築時の性能がいつまでも保持できる本物の長寿命住宅です。

大事なのは、設計上の数値でもなく、完成時の性能評価でもなく、将来の性能なのです。

ソーラーサーキットの家は、

「いつまでも強く・いつまでも快適に」

住む人と建物の健康をいつまでも守り、50年後も価値ある資産として次の世代に引き継げる理想の住まいだということをご理解いただけると幸いです。

W断熱(付加断熱)急増の謎?

  • W断熱(付加断熱)急増の謎?
現在、太陽光発電の設置には、経産省によるゼロエネ補助金を受けられるために、各社ZEHの推進に積極的です。

弊社でも、ZEHビルダーとして国に登録しており、補助金の活用が可能ですが、前回説明させて頂いた通り、ZEHの制度には、矛盾も多く、補助金を受けようとすると、様々な検討が必要となり、不合理な対応を強いられる場合もあり難しい側面もございます。

特に、これまで、断熱を重視してこなかったメーカーは、UA値をアップさせるために、躍起になって商品開発に取り組んでいます。

そこで、導入が進められているのがW断熱という付加断熱の手法です。(内断熱+外断熱)

補助金の採択を受けるにはUA値が高く、一次エネルギー消費の削減率が高いほど有利になる背景があり、計算上の数値を上げるための断熱強化を、各社進めているという訳です。

これまで、外断熱のありもしないような欠点を、散々、指摘していた方々が、手のひらを返したように、外断熱のメリットを強調するようになり、内断熱と外断熱のメリットを融合させた理想の断熱と、もっともらしい宣伝をしているのには、驚くばかりです。

しかし、外断熱には外断熱ゆえの施工の難しさがあり、長年の経験に基づいたノウハウも必要なのです。

これまで、外断熱の家を造ったことのないメーカーさんや、経験のない職人さんが、見よう見まねでマニュアル書を見ながら、まともな外断熱を造れるとは、思えないのが正直なところで、それこそ外壁の脱落や、白蟻など、多くの問題が発生するのではないかと心配です。

特に、外断熱に適した構造材の検討もなされておらず、気密も測定しないメーカーが多く、防湿フィルムを施工しない建物もあり、水蒸気の動きについて、全く理解していない付加断熱がほとんどで、結露や雨漏れなどによる住宅の腐朽や蟻害・空気環境悪化にともなう健康被害など、将来を非常に危惧しています。

W断熱の危険性や問題点についての話は、拙著「外断熱が家族を守る」でも紹介しておりますし、先日ブログでもアップさせていただきましたので、ご興味があればご覧になってみて下さい。

付加断熱の注意点→http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=404674

付加断熱の逆転結露→http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=438510

もともと付加断熱は、梅雨もなく夏も爽やかで、冬場の温度差が30℃も40℃もある北海道などでは、確かに有効だと思いますが、梅雨もあり、夏場も暑く、真冬でも20℃からせいぜい25℃程度の温度差でしかない宮城では不必要な断熱でもあります。



弊社では、外断熱単独でも、標準の断熱仕様で0.43・ハイスペックで0.34というUA値の性能にて、数多くの住宅をつくらせていただいており、皆さんが省エネで快適な暮らしを送っております。

正直、性能値をさらに向上するために、内側への付加断熱も検討した時期もありましたが、住み心地に加え、光熱費の削減にも、ほとんど効果がなく、逆に、夏の爽やかさや耐久性を発揮するための通気性を殺してしまうために、付加断熱の導入は見送りました。

なぜならば、ソーラーサーキットのUA値は、確かな断熱施工と高いレベルの気密施工によって、輻射熱効果も発揮され、計算値以上の性能を発揮するからです。

さらに、計算上は加味されませんが、二重通気や四季対応型の換気システムによって、建物を冷ます効果が生まれる事で、夏場の冷房負荷が、断熱だけを考えた建物とは、比較にならない程低いのです。

加えて、気密の劣化もほとんどなく、内部結露の心配もなく、湿気に強いポリスチレン断熱材を使用することで、その性能が将来にわたり保持できる本物の省エネ住宅であり、長寿命住宅と言えるのです。

一方、W断熱や充填断熱のUA値は、あくまで計算値であり、完璧な断熱施工の難しさやいい加減な気密によって、計算値どうりの性能を発揮するのは困難です。

しかも、繊維系の断熱材は、徐々に湿気や結露によって、性能は低下し、益々結露の危険性が高まり、住み心地はもちろん、光熱費の上昇、耐震性や耐久性が低下してしまうのが、現実なのです。

そしてまた、仮に、正しい施工をしたW断熱であったとしても、有効なのは、冬場だけの話です。

UA値0.18とか0.22とか、ビックリするような、数値を宣伝しているメーカーもありますが、せいぜい冬場の暖房費で1万から多くても2万円程度少なくなるだけで、逆に冷房費が上昇するのは、間違いなく、断熱強化に大きなコストをかけるメリットはないのです。

窓を小さくしたり、少なくしたり、外側にブラインドをつけるなどして、夏の暑さ対策をするメーカーもございますが、日射対策にも限度があり、人が生活している以上、生活熱が発生するために、室内に熱がこもってしまい、夏だけに限らず中間期においても冷房の使用が必要となるのです。

魔法瓶や保冷パック・魚箱の中が冷たさを維持するのは、氷や保冷剤があるのと同じように、
夏涼しいのは、あくまでエアコンが大前提ということをご理解いただきたいと思います。

単に、見た目の数値を上げるための付加断熱は、十分な注意が必要なのです。




ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の矛盾

国の政策な流れもあって、ハウスメーカーが積極的に推進しているのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)ですが、各社ZEHのレベルもまちまちで、様々な矛盾を抱えているのが現状です。

一般のユーザーには、なかなか伝わる事のないZEHの矛盾も含め、ご説明させていただきますのでよろしければお付き合い下さい。

そもそもZEH(ゼッチ)住宅とは、住宅の断熱性能を向上させ、空調・給湯・照明・換気(家電や調理は含まず)を省エネ性の高い高効率の設備にして、基準エネルギーの最低20%を削減し、かつ一次消費エネルギーを太陽光発電などの再生エネルギーによって、エネルギーを創りだし、収支をプラスマイナスゼロ以下にする住宅を指します。

※ 誤解している方も多いのですが、ZEHは、電気料金全てがゼロになるという事ではなく、あくまで、冷暖房・給湯・換気・照明(家電や調理は含まず)などの一次消費エネルギーと太陽光などで生み出すエネルギー収支をゼロ以下にする住宅となります。実際は、太陽光を必要以上に上げたり、冷暖房も全館冷暖房では間欠運転がベースで、ユーザーの節約志向も働く側面があり、光熱費がゼロになるケースも多いのですが、一応頭に入れておいてください。

ZEH基準を満たすには、いくつかの条件があります。



〇 UA値(外皮平均熱貫流率)を0.60W/㎡K以下とする。(改正省エネ基準は0.75)
〇 基準一次消費エネルギーから20%以上の消費エネルギーを削減
〇 太陽光発電などの導入により、基準一次エネルギーから100%以上の消費エネルギーを削減

つまり、使うエネルギーから創るエネルギーを引いて、プラスマイナスゼロ以下にするということになります。

そして、断熱性能やプランニングによって、大きな差が生じ、問題となるのが、太陽光パネルの設置容量となります。

設置容量を算出するためには、それぞれの建物のUA値(外皮平均熱貫流率)を計算した上で、室内を〇主たる居室〇その他の居室〇非居室と分類しなければなりません。

主たる居室は、キッチン・ダイニング・リビングとなりますが、リビング階段や吹き抜け・リビングに間仕切りがない場合の廊下やホールなども、主たる居室として算入しなければなりません。

そして、その主たる居室の面積に合わせ、エネルギー計算をするために、大きくなればなるほど、消費エネルギーが必要とされ、大きな容量の太陽光の設置が必要となります。

本来、断熱性能が高い家は、出来るだけオープンな間取りで開放的な暮らしの方によって、小さいエネルギーでも、効率よく家中が快適になるのですが、ある意味逆行しているかの基準ともいえます。

こうなると、主たる居室の面積を減らすために、LDKを小さくしたり、吹き抜けやリビング階段をやめたり、間仕切りの壁やドアを設置するなどの検討が必要になります。

また、間取りの調整が難しい場合は、太陽光の設置面積を増やすために、極端な片流れの屋根にするなどの、不合理ともいえる調整が必要となってくるのです。





上の画像をみてわかる通り、UA値が0.37とZEH基準を上回る性能の建物でも、オープンな間取りにすると9.0KWの太陽光が必要となり、リビングなどに間仕切りをつけただけで、6.3KWの太陽光でもOKとなるわけです。

しかし、実際のソーラーサーキットの家では、この程度の大きさの建物で4人家族の場合ですと、4.8KWの太陽光でも十分にゼロエネが可能となり、前回説明したように、必要以上の太陽光を上げるメリットが少ない現状の中、無駄なイニシャルコストとなるのです。

太陽光を設置すべきか否か→http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=439764

ZEH制度には、小さな建物だったり、立地条件が悪かったりで、ゼロエネにならない建物もあるために、75%以上を賄う、nearly ZEH(二アリー・ゼッチ)という基準が設けられております。

冷房負荷が少なく、平均C値0.46㎝という高い気密性能を実現したソーラーサーキットの家は、この二アリー・ゼッチでも、十分ゼロエネルギーが可能です。

つまり、ZEHを超えた本物のZEHともいえる建物であり、経年変化が少なく、長期間にわたりゼロエネになる建物だということをご理解いただければ幸いです。

次回は、W断熱の急増の謎を投稿させていただきます。







気密が悪いと家が腐れる?

  • 気密が悪いと家が腐れる?
なぜ私達が気密にこだわるのか?

それは、ズバリ!将来、大事な家が腐れてしまう可能性が大きいからです。

一般の方は、気密性が高いほど通気性が失われ、腐れそうな感じがすると思います。

確かに、昔の家の様に断熱材が入らない隙間だらけの住宅の場合は、湿気や結露も通気性の良さ?から、すぐ乾き、水蒸気は外部へ放出され、結露による腐朽よりも白アリによる食害の方が問題でした。

しかしながら、オイルショック以降、中途半端な気密化と断熱化が進み、床下や壁内・小屋裏に断熱材を充填する内断熱(充填断熱)の住宅では、日本独特の湿気の影響により、梅雨から夏にかけては、水蒸気が、外部から侵入し、冬場は、室内の水蒸気が壁体内に侵入することで、温度差による結露が発生するようになり、カビも生え、白あり被害の増加とともに、構造材の結露による腐朽が多く見られるようになったのです。

そして、現在の家づくりも、気密性を疎かにしている住宅が多く、内部結露の問題は解消されておらず、中途半端な気密化と断熱化が進む中で、逆に危険性が高まっていると言っても過言ではありません。

水蒸気は、水蒸気分圧によって、水蒸気量の少ない方(温度の低い)へ移動する性質があり、冬期間は、外へ向かって移動する力がはたらくために、壁体内に水蒸気が侵入しないように、防湿フイルムで気密化を図らねばならないのです。



上記は、充填断熱の正しい気密施工の画像ですが、このように気密の重要性を認識し、現場に反映しているメーカーは、まだまだ少ないのが現実です。



このように、気密がいい加減だと目に見えない箇所で、内部結露が発生します。

壁体内に露点温度以下の箇所があれば、侵入した水蒸気は結露水に変化するのは必然です。



例えば、冬場の室内の温度を22℃・湿度60%としましょう。14℃が露点となり、14℃以下の箇所には、結露が発生します。湿度が60%でもこうなのですが、換気をけしたり、加湿機をつけたり、ファンヒーターをつけたり、洗濯物を室内干しをしたら、湿度はすぐ70%にも80%にもなるわけで、露点温度は、さらに上昇し、窓ガラスはもちろん、温度の低い押入れや床下、壁の中ななど、いたるところで次々と結露が発生するのが、ご理解いただけると思います。

ガラスの結露は拭けば済みますが、水蒸気の粒子は10万分の2ミリで、微細ですので、ちょっとした隙間はもちろん、ガラスやタイル・金属以外の建築資材も透湿してしまい、目に見えない温度の低いところで、結露となって、悪さをするという事を理解しなければならないのです。

一方、外断熱の気密化は、若干意味合いが違います。

外断熱は、構造の外側に断熱材を施工し、断熱材の外側で気密工事を施します。



外側で、気密と断熱の施工をすることで、これまで外部の影響を受けていた床下や壁の中・小屋裏が、室内側となるのです。

つまり、外断熱の気密化は、水蒸気が壁体に侵入するのを防ぐのが目的ではなく、外気側の温湿状況の影響を最小限にして、床下や壁や小屋裏の温度を室内に近い状況にするのが目的で、目に見えない部分を結露が発生する露点温度以下にしないための気密化ということをご理解下さい。

ここからが本題です。

省エネ意識の高まりから、ようやく一般的になりつつある高気密・高断熱住宅ですが、その歴史は非常に古く、今から35年以上も前に遡ります。

契機となったのが、家の断熱化にともなう室内外の温度差がもたらす内部結露によって、北海道で発生した「ナミダタケ事件」で、新築3年目の住宅の床下に大量のナミダタケが発生し、床が腐り落ちるという事件が発生しました。

こうした悲惨な被害は道内に拡がり、実に何万棟もの住宅が被害を受け、地元のマスコミでも取り上げられ大きな社会問題にもなりました。

原因は、壁内の結露水や床下の湿気が、グラスウールに吸収され、木材を濡らしたことにより発生したものと解り、単に断熱材を厚くするだけでは、暖かくならないばかりか、水蒸気が壁体内に侵入し、建物に重大な被害を及ぼすということが明らかとなったのです。

こうした教訓によって、ようやく高断熱化と高気密化がセットとして考えられるようになり、高気密・高断熱住宅が日本に誕生したのです。

しかしながら、北海道では当たり前の気密化ですが、本州の建築関係者の意識は低く、本物の高気密・高断熱の家づくりに取り組んでいる造り手は未だに少ないのが現実なのです。

これは、結露被害の深刻さや気密の重要性への認識が乏しい事が、最大の要因ですが、高気密化という、名前からくる偏見や誤解・拒否反応が、根強いものがあるのではないかと思います。

風通しが悪そう。息苦しくなりそう。シックハウスになりそう。中には子供の抵抗力が低下して、ひ弱に育つといった誤った考える方をしている方が、未だにいらっしゃるのは驚くばかりです。

その結果、中気密?で高断熱まがいのアンバランスで危険な住宅が現在もなお建てられ続けているのです。

温度差がもたらす結露は、断熱の不十分な住宅で、寒ければ寒いなりの、暑ければ暑いなりの生活を送っていた時代には、そう問題にはなりませんでした。

しかし、経済の発展にともない、私達の暮らしも、快適さと利便性を求め、冷暖房が当たり前となり、室内外の温度差は冬も夏も大きくなりました。

同時に省エネ性を求め、家の断熱化が進められ、サッシや断熱材が急速に普及したのですが、気密性は考慮されなかったため、熱損失は大きく、どうしてもファンヒーターなどを用いた局所暖房が中心となり、温度差から結露が生じ、窓ガラスのみならず、寒い部屋の押し入れや床下・壁体内にも発生するようになったのです。

しかし、結露については、ある意味しょうがないというかの様な場当たり的な対処が、現在も続いており、結露を防ぐというより、湿気や結露しても腐らない薬剤に頼った、ちぐはぐな家づくりが、進められているのが日本の家づくりの実態です。

ご存知のように防蟻工事の保証も5年が一般的です。

また劣化対策として、防腐材を注入した木材が多く使用されておりますが、防腐薬剤の効果は何年なのか?結露に対してどこまで効果があるのか?健康被害はないのか?などの、検証は実質されていないのです。

これから、家を建てられる方は、家の長寿命と住む人の健康を守るためにも、気密と断熱・換気をセットにした考え方が重要で、気密を疎かにすると、いくら断熱にこだわっても、内部結露によるナミダダケ事件の再来の危険性が十分考えられるということをご理解下さい。

何度か、ご紹介していますが、内部結露による住宅被害は、シロアリはもちろん、土台や柱の腐朽も、消費者の住まい方(暖房方法や換気・生活スタイル)にも関係しているので、一概に瑕疵や欠陥と認められず、瑕疵保険では保証されずあくまで自己責任となるのです。

昨今、ZEH推進の流れもあり、見た目の数値をあげるための、断熱化が進められています。

さらに耐震性を向上させるために、柱の外側に構造用の面材を張る施工法が普及しており、壁体内の水蒸気はせき止められ、益々結露が発生しやすくなっているのです。

結果的に、結露に対しての対策は不十分であり、内部結露による被害が、将来起こる危険性が大きい家づくりが、進んでいるということをご理解いただければ幸いです。