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内断熱(充填断熱)のデメリット③

内断熱の場合、室内の水蒸気が構造躯体に侵入しないように、室内側に防湿フイルムによる気密施工が、必須となります。

しかし、気密工事後に、内装下地として施工する石膏ボードに打ち込むビスは1万本以上となります。

つまり、防湿フイルムは、フイルムに穴を開けずに気密テープで施工するものの、内装材の施工は、気密層にビスによる無数の穴を開けてしまうのです。

その他にも、床と壁や天井と桁部分の気密や、コンセントやスイッチ、床下や天井の点検口、照明器具や配線・配管部などの多くの箇所の気密を確保しなければなりません。

こうした気密部分は、経年により年々劣化し、大きな地震に遭遇すれば、構造は被害がなくとも、気密の低下は免れないのです。

気密性能が低下すれば、冷気が室内に侵入し、熱効率が悪くなり、住み心地の低下や光熱費の上昇を招きます。

さらに、水蒸気の粒子は10万分の2ミリと微細ですので、ちょっとした隙間でも、水蒸気が壁体内に入り込み内部結露の危険性が高まり、耐震性や耐久性にも大きな影響が生じてくるのです。

宮城のような寒冷地では、気密性能を表すC値(隙間相当面積)は、2㎝/㎡以下が必須で、これ以上だと熱損失が大きいばかりではなく、内部結露の危険性が高まります。

※ 理想は1.0以下です。

2㎝/㎡以下というのは、最低限の基準で、必須の条件というのが、ある意味常識ですが、3年後に義務化となる省エネ基準では、防露性能を確保する旨の記述は、あるものの、数値の基準もなければ、測定の義務化もない為に、高気密・高断熱・省エネとは名ばかりの住宅が、現在も建て続けられているのが、日本の住宅業界の悲しい現実です。

気密性能が悪いと、室内の水蒸気が、防湿フィルムなどの気密層をすり抜け、温度差のある壁体内に入り込む量が増加します。

内断熱で使用されることの多い、繊維形の断熱材でも、基本的に吸湿性は低いのですが、湿気を外に追い出すための透湿性は、非常に高い素材です。

つまり、湿気を含んだ空気が断熱材の中を通過することで、壁体内にある構造材や金物が、露点温度以下に冷えていれば、内部結露が発生する可能性が高くなります。

一応、理論上は、結露が発生しても、腐れない防腐材を使用し、後々乾いて外部に排出されるとなっているのですが、現代の住宅は、耐震性を向上させる為に、構造の外部に、構造用合板などの耐力面材の施工が主流です。

耐力面材が何であれ、その表面温度は、露点温度以下に冷えており、湿気を含んだ空気は、せき止められ結露が発生する危険が大きいのです。

こうして、壁体内で発生した結露は、面材や柱・土台を濡らしてしまい、腐朽や蟻害発生の要因となる訳です。

そもそも、断熱材は、素材そのものではなく、素材の中の空気が固定されることで、断熱性能が発揮されるのです。(制止空気の熱伝導率は、0.02W/mK で、とても高い)

サッシのガラスをペアやトリプルにするのは、ガラスの断熱性能ではなく、ガラスとガラスの間の空気やアルゴンガスなどを固定させることで、断熱性能が発揮されるのです。

つまり、断熱材の中に湿気を含む空気が移動していれば、十分な性能は発揮されないということも理解しなければなりません。

また、湿気の多い梅雨時などは、常に壁体内は高湿の状態にさらされます。

いくら高級な布団でも、乾燥機や天日干しもせず、裸のままの状態で、押し入れの中に何年も入れっぱなしにしていたら、布団はどうなるでしょう。

布団は、乾燥してフカフカな状態でこそ暖かいのです。

布団は洗濯して乾かせば、また使用できますが、壁の中や床下・天井裏の断熱材はそうはいかないのです。


内断熱(充填断熱)のデメリット②

  • 内断熱(充填断熱)のデメリット②
内断熱の場合、柱や筋交いに加え、構造や開口部の取り合い、構造金物や配線・配管部が多数あり、こうした部分を隙間なく施工するのは、物理的に難しく、どうしても、断熱材を寄せたり潰しての施工になってしまいます。

また、防湿フイルムが不要とされる袋入れの断熱材を、カットした場合はカットした小口面から、水蒸気が侵入しないように、フイルムで保護するのが施工マニュアルに記されておりますが、実際の現場では、そのまま施工する大工さんがほとんどです。

断熱材はそもそも、断熱材の中に含まれている空気が、断熱の役目を果たしており、制止空気の熱伝導率は、0.02W/mK で、とても高い断熱性能を有しています。

つまり、寄せたり潰したりしては、性能を十分に発揮する事は出来ないという訳です。

そして、大なり小なり隙間も生じてしまい、断熱の欠損部分が生じ、内部結露の危険性が高まってしまうのです。

最近では、隙間を出来るだけ無くす為の施工法として、吹き込み断熱も増えてはきていますが、断熱材をそのまま充填する施工法に比べ、施工精度は確かに高まるものの、隙間なく断熱するのは、難しいのが現実です。

また、構造材として使用される木材の中には、必ず水分が含まれており、水分の含む割合を含水率といいます。

通常、高気密・高断熱住宅の場合は、建築後の木材の収縮による建物の不具合を軽減するために、乾燥材を利用するのが、大原則ですが、出荷される時点においての含水率は、概ね無垢材で18%・集成材で15%の含水率が基本となります。

しかしながら、乾燥材を使用して建てられた住宅でも、後々乾燥が進む事で収縮し、痩せやくるい・割れが生じてしまうのです。

つまり、乾燥することで、木材は数ミリ程度痩せてしまい、痩せた部分は必然的に、隙間となり、無断熱になる為、その部分は断熱の欠損部分となってしまいます。

こうした断熱の欠損部分では、室内との温度差によって引き起こす、内部結露の危険が非常に大きくなり、断熱性能の低下や木材の腐朽にもつながり、耐震性や耐久性の低下の大きな要因になってしまうのです。


「エコチル調査」サポーターになりましょう。

  • 「エコチル調査」サポーターになりましょう。
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エコチル調査とは、「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」と呼びますが、子どもの健康と環境に関する大規模な全国調査です。

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環境省では、多くの国民にエコチル調査を広めるために、エコチル調査のサポーターを募集しています。調査報告や活動内容などメルマガで配信されますので、ご興味のある方は、サポーター登録はいかがでしょうか。(もちろん無料です)

エコチル調査のHPは→http://www.env.go.jp/chemi/ceh/

内断熱(充填断熱)のデメリット①

  • 内断熱(充填断熱)のデメリット①
今週は、内断熱(充填断熱)のデメリットを改めて紹介したいと思います。

内断熱の最大の欠点は、何といっても構造躯体そのものが、非断熱部分となることで、室内と室外の温度差の激しい季節においては、熱橋(ヒートブリッジ)という文字どうり熱を伝える橋となります。

木造であれ、ツーバイであれ、鉄骨であれ、構造材は、基本的には断熱材ではないので、おのずと非断熱部分(全体の20%前後)となり、熱橋の影響により熱損失が大きいものになります。

つまり、冬は、室内の熱損失を助長し、夏は40℃近くもなる外壁の裏側から、熱を室内に侵入させる要因となります。

そして、この熱橋は、住み心地の悪さや光熱費の上昇に影響を及ぼしますが、それより怖いのは、温度差によって発生する壁体内結露による構造の腐朽であり、長期間、熱の伝導により収縮と膨張を繰り返すことで、狂いや痩せ・割れといった構造の変形・毀損を招き、年々、劣化が進み、耐震性の低下にもつながるのです。

昨年4月の熊本地震において、旧耐震の住宅のみならず、新耐震基準の住宅の多くが、半壊や全壊の被害を受けましたが、こうした経年劣化による、耐震性の低下も大きな要因となっています。

参考までに、主な建築材料や断熱材の熱伝導率を比較してみましょう。

<建築材料>
〇 杉・ヒノキ0.12W/mK
〇 軽量気泡コンクリート0.17W/mK 
〇 コンクリート1.6W/mK
〇 鋼材53 W/(m K)W/mK)
 
<断熱材> 
〇 グラスウール16K0.046 W/mK
〇 高性能グラスウール24K0.036W/mK
〇 吹き込み用グラスウールGW-1- 0.052 W/mK・30K相当 0.04 W/mK
〇 ロックウール0.038W/mK
〇 ポリスチレン3種0.028W/mK
〇 ソーラーサーキット断熱材0.024W/mK

鉄骨の熱電導率は大きすぎて、比較するまでもございませんが、断熱性がある程度有する木材でも、熱伝導率は0.12W/mKと大きいのがお分かり頂けると思います。

そして、この熱伝導率を用いて、各材料の熱の抵抗値を算出することが出来ます。

熱抵抗値とは、材料の熱の伝わりにくさを表す値です。

裏表に1℃の温度差がある場合に、ある厚さの材料の中を、面積1㎡あたり、1秒間に伝わる熱量の逆数で、当然、値が大きい程、熱が伝わりにくく、断熱性能が高いということになります。

熱抵抗値(m2・ K/W )は、材料の厚さ[m]÷熱伝導率W/(m・K)で求められます。

例えば、柱3寸5分(10.5㎝)の場合は、0.105÷0.12=0.875(m2・ K/W)の熱抵抗値となり、グラスウール16Kで厚さ100mmの断熱材の熱抵抗値は、0.10÷0.046=2.17m2・ K/Wとなります。

つまり、グラスウール断熱材2.17m2・ K/Wと、同等の性能を柱に求めると、2.17(熱抵抗値)×0.12(木の熱伝導率)=0.26 となり、柱は、26㎝角(7.5寸)の太さが必要で現実的ではありません。

要するに、内断熱の場合、壁内部は、熱抵抗値2.17m2・ K/Wの断熱部分と熱抵抗値0.875m2・ K/Wの構造部分が混在しており、将来、目に見えない壁の中で、様々な不具合が生じることは、ご理解いただけるのではないでしょうか。

ちなみに、標準のソーラーサーキットの熱抵抗値は、0.06÷0.024=2.5m2・ K/Wとなります。

もちろん、外断熱ですので、熱橋の影響は受ける事なく、高い断熱性能が長期間発揮され、構造部分の性能も、オマケ程度ですが、逆に付加されるということになります。

少々、複雑で面倒な話になってしまいましたが、新築時の住宅性能を長期間発揮する為にも、断熱方法は非常に大事で、重要なポイントとなりますので、是非ご理解いただければ幸いです。


ナイチンゲールの「看護覚え書」を読んで

  • ナイチンゲールの「看護覚え書」を読んで
看護師のお客様に、「社長がいつも言ってることは、ナイチンゲールの本にも書いてますよ。」とお聞きして、早速その本を購入しました。

看護のバイブルとして知る人ぞ知る、その書籍の名は、「看護覚え書」。

看護師の方なら、ほとんどの方が、看護学校時代に読んでいるということで、どんな内容の本だろうかと興味津々読んでみました。

1859年に出版されたという、この「看護覚え書」ですが、150年以上前の本でありながら、今読んでも全く色褪せることのない大切な事柄が詰まっており、感銘を受けました。

クリミアの母として知られ、近代看護の母として、全世界の看護関係者の指南書ともなっているこの本には、私達がいつもお伝えしている「換気と温度の重要性」についても、非常に詳しく書いてあります。

13章からなる「看護覚え書」は、「換気と保温」の重要性から、始まります。

そして、第一章の冒頭には、

・よい看護が行われているかどうかを判定するための基準としてまず第一にあげられること。

・看護者が細心の注意を集中すべき最初で最後のこと。

・何はさておいても患者にとって必要不可欠なこと。

・それを満たさなかったら、あなたが患者のためにする他のことすべてが無に帰するほど大切なこと。

・反対に、それを満たしさえすれば他はすべて放っておいてさえよいと私は言いたいこと。

それは「患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、屋外と同じ清浄さに保つことである」と述べているのです。

ナイチンゲールは、看護を考えるとき、真っ先に「空気の問題」を取りあげ、換気の重要性やその原理、原則を述べており、換気に適した構造、窓の開閉、外気を取り入れる、患者を暑がらせたり、寒がらせないように適温を保ち、患者さんの自己治癒力を高めることが大切であると説いてあるのです。

そして、この「看護覚え書」は、看護婦の看護の手引きとして書いたものでなく、人の健康について責任を負う女性に考え方のヒントを与えたいという目的で書いたものであって、すべての女性はナースであるとも言っています。

「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを 適切に整え、食事内容を適切に選択し 適切に与えること 。こうしたすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味すべきである」

看護の原点と基本的原理を論述する本書は、看護を学ぶすべての者の必読書であるとありました。

ナイチンゲールは、病気を治すには、何をさておき、まずは、空気環境と温熱環境が大事であるとこの本で説いているのですが、病気を治すために大事ということは、すなわち病気を予防し、健康を維持する上でも重要だということではないでしょうか。

そして、この本には、換気と保温以外にも、下記に挙げた、看護の原理・原則ともいえるポイントが多岐にわたって紹介されています。

〇第2章・住居の健康 〇第3章・小管理  〇第4章・音  〇第5章・環境の変化 
〇第6章・食事 〇第7章・食物 〇第8章・ベッドや寝具 〇第9章・陽光
〇第10章・部屋と壁の清掃 〇第11章・からだの清潔 〇第12章・おせっかいな励ましと忠告 〇第13章・病人の観察

こうした内容は、私達の住居の環境衛生上においても重要で、看護に従事されている方のみならず、家庭での育児はもちろん、家族が病気になった時の看病や親の介護にも、非常に役立つものであり、現代に生きる私達にとっても、参考にすべき書籍だと思いますので、是非多くの人に読んでいただきたいと思います。

そして、このナイチンゲールの考え方は、ソーラーサーキットの設計思想そのものであり、ソーラーサーキットの家での暮らし方においても、多くの点で、一致しており、改めて私達の家づくりに間違いはないと確信した次第です。