現在、経産省や国交省・環境省によるゼロエネ補助金の制度を活用するために、各社ZEH(ゼロエネルギーハウス)の推進に積極的です。
弊社でも、ZEHビルダーとして国に登録しており、補助金の活用が可能ですが、以前に説明させて頂いた通り、ZEHの制度には、矛盾も多く、補助金を受けようとすると、様々な検討が必要となり、不合理な対応を強いられる場合もあり少々難しい側面もございます。
そして、これまで、あまり断熱を重視してこなかったメーカーは、見かけのUA値(外皮熱還流率)をアップさせるために、躍起になって商品開発に取り組んでいます。
そこで、導入が進められているのがW断熱という付加断熱の手法です。(内断熱+外断熱)
補助金の採択を受けるにはUA値が高く、一次エネルギー消費の削減率が高いほど有利になる側面があり、計算上の数値を上げるための断熱強化を、各社進めているという訳です。
これまで、外断熱のありもしないような欠点を、散々、指摘していた方々が、手のひらを返したように、外断熱のメリットを強調するようになり、内断熱と外断熱のメリットを融合させた理想の断熱と、もっともらしい宣伝をしているのには、驚くばかりです。
※ 実際にW断熱と謳いPRしていても、価格や施工の不安から、実際提案するのは、従来工法というメーカーも多いのが現実です。
外断熱には外断熱ゆえの施工の難しさがあり、長年の経験に基づいたノウハウも必要なのです。
これまで、外断熱の家を造ったことのないメーカーや、経験のない職人さんが、見よう見まねでマニュアル書を見ながら、まともな外断熱を造れるとは、思えないのが正直なところで、それこそ外壁の脱落や、内部結露・蟻害など、多くの問題が発生するのではないかと心配です。
特に、外断熱に適した構造材の検討もなされておらず、気密も測定しないメーカーが多く、防湿フィルムを施工しない建物もあり、仮にしていても、冬と夏の水蒸気の動きの違いや複数の断熱材の透湿性能の違いによる結露の発生リスクについて、全く理解していない付加断熱がほとんどです。
内部結露や雨漏れなどによる住宅の腐朽や蟻害・室内の空気環境の悪化にともなう健康被害など、将来を非常に危惧しています。
W断熱の危険性や問題点についての話は、拙著「外断熱が家族を守る」でも紹介しておりますし、以前のブログでもアップさせていただきましたので、ご興味があればご覧になってみて下さい。
付加断熱の注意点→http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=404674
付加断熱の逆転結露→http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=438510
もともと付加断熱は、冬場の温度差が30℃も40℃もある北海道などでは、有効な側面もありますが、梅雨もあり、真冬でも20℃からせいぜい25℃程度の温度差でしかない宮城では不必要な断熱だと思っています。
弊社では、外断熱単独でも、標準の断熱仕様で0.43・ハイスペックで0.34というUA値の断熱性能と完成時平均C値0.46という業界トップレベルの気密性能にて、数多くの住宅をつくらせていただいており、皆さんが省エネで快適な暮らしを送っております。
正直申せば、性能値をさらに向上するために、内側への付加断熱も検討した時期もありましたが、住み心地に加え、暖房費の削減にも、ほとんど効果がなく、逆に、夏の爽やかさや構造材の耐久性を発揮するための躯体内の通気性を殺してしまうために、付加断熱の導入は見送りました。
なぜならば、ソーラーサーキットのUA値は、確かな断熱施工と高いレベルの気密施工によって、輻射熱効果も発揮され、計算値以上の性能を発揮するからで、もし、UA値をさらに上げたいという要望には、断熱材を厚くすることで簡単で解決するからです。
ソーラーサーキットの家は、計算上は加味されませんが、二重通気や四季対応型の換気システムによって、建物を冷ます効果が生まれる事で、夏場の冷房負荷が、断熱を重視しただけの建物とは、比較にならない程少なく済みます。
加えて、気密の劣化もほとんどなく、内部結露の心配もなく、湿気に強いポリスチレン断熱材を使用することで、その性能が将来にわたり保持できる本物の省エネ住宅であり、長寿命住宅と言えるのです。
一方、W断熱や充填断熱のUA値は、あくまで計算値であり、気密や断熱施工の難しさや熱橋の影響もあり、計算値どうりの性能を発揮するのは困難です。
しかも、繊維系の断熱材は、徐々に湿気や結露によって、性能は低下し、益々結露の危険性が高まり、住み心地はもちろん、光熱費の上昇、将来の耐震性や耐久性が低下してしまう危険性が高いというのが、現実なのです。
そしてまた、仮に、正しい施工をしたW断熱であったとしても、有効なのは、冬場だけの話です。
UA値0.18とか0.22とか、ビックリするような、数値を宣伝しているメーカーもありますが、せいぜい冬場の年間暖房費が、1万から2万円程度少なくなるだけで、逆に暖房費が軽減する以上に、今度は冷房費が上昇いてしまい、断熱強化に大きなコストをかける金銭的なメリットはないのです。
最近は、窓を小さくしたり、数を少なくしたり、外側にブラインドをつけるなどして、夏の暑さ対策をするメーカーもございますが、日射対策にも限度があります。
そして、人が生活している以上、人体からも電化製品などから、発生する生活熱によって、室内に熱がこもってしまい、夏だけに限らず中間期においても冷房の使用が必要となるのです。
魔法瓶や保冷パック・魚箱の中が冷たさを維持するのは、氷や保冷剤が必要なのと同じように、夏の涼しさを維持するためには、あくまでエアコンが大前提ということをご理解いただきたく、単に、見た目の数値を上げるための付加断熱は、十分な注意が必要なのです。
最後に付け加えさせていただきますが、W断熱は、ある意味外断熱化の一種には違いないのですが、結果的に外断熱化されるのは壁部分のみという建物がほとんどで、いわば外断熱もどきの建物であり、将来、外断熱と内断熱部分の取り合いなどから、様々な不具合が生じる危険性が生じる可能性が高いということもご理解いただけると幸いです。
気密も断熱も連続性が非常に大事で、途切れ途切れになるW断熱にはご注意ください。
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2015.09.25 (中山の高梨欽司)火災保険の制度
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2015.08.25 (阿部貴日呼)毎週のように行っています
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2014.12.10 (高橋一夫)ありがとうございます。
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2014.12.08 (ちょーすけ)勉強になります
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2014.12.04 (T氏)ごちそうさまでした!
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