無垢材や塗り壁といった自然素材を訴求し、健康住宅を謳う業者も少なくありませんが、素材だけで、空気がキレイになる訳でも健康住宅になる訳ではありません。
先日、構造材と床材を無垢にして、漆喰を壁に使ったのですが、体調が悪いそうでシックハウスでしょうかという問い合わせがありました。
何とも悩ましい相談ですが、理解しなければならないのは、そもそも、無垢材であっても、木材中には、フィトンチッドとも呼ばれるように虫を呼び寄せない天然の化学物質を含んでおり、適材適所という言葉があるように、使う場所や量を間違えると健康に悪影響を及ぼす可能性もあるということです。
そもそも、化学物質の定義は、自然か人口かの区別はなく、この世に存在する物質のほとんどは化学物質という見方も出来ます。
トリカブトや大麻などの有害植物もあれば、じゃがいもの茎や毒キノコ・フグの毒など、植物や作物・魚介類も無数に有害な物質は含まれています。
化学物質の中でも、発がん性のあるだろうとみなされているホルムアルデヒドさえ、野菜や食肉・魚やしいたけにも含まれているのをご存知でしょうか。
画像は、東京都健康安全研究センターの調査データですが、杉のフローリングに火山灰系の塗り壁を使用し、新築したユーザーから、相談を受け調査したところ、TVOCという室内空気中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の総量が17,300μgあったそうです。
この量は、厚労省が定める暫定目標値の400μgの40倍以上の高濃度ですが、その大半が木材中に含まれるテルペン類に属す天然の化学物質です。
テルペン類に属す化学物質は、杉・松・ヒノキなどほとんどの木材に含まれており、空気中で酸化すると刺激性の強いアルデヒド系に化学変化を起こしてしまい昨今問題視されています。
弊社でも、無垢の床材や内装材・漆喰などの塗り壁を使用していますが、何事もバランスが重要で、適量という考え方も必要です。
そして、材料や施工法にも注意が必要で、建ててから壁の割れや床の隙間や反りなどで、後悔するお客様も少なくありません。
また、人によっては、食品や化粧品でも合う合わないがあるように、いくら天然でも合わない物質も多々あり、事前に臭いを嗅いだり、肌に触れることも重要で、折角無垢材を使用しても、施工する際の接着剤や塗料・ワックスなども影響を及ぼすケースもあります。
そして、空気環境を良くするには、何より換気が重要で、適切な換気量が確保できているかが、非常に重要で、換気の種別や使用法、住宅の気密性能にも注意しなければなりません。
※ 何度も説明しておりますが、気密が中途半端だと換気は空回りするだけで、排気の周辺だけ換気され、空気の淀みが生じ、湿気や結露が発生し、逆に自然素材があだになってカビやダニも繁殖しやすくなる側面もあるのです。
余談ですが、ナイチンゲールは病室の壁に漆喰・床に無垢材は、汚れや臭いが付きやすく、水拭きなどの掃除もしにくいために避けるべきとも説いています。
換気や清掃が行き届いた部屋での自然素材は、プラスの作用が働きますが、そうでない場合は、素材の特性上、逆効果の場合もあるのです。
お問合せいただいた方の、詳細についての紹介は控えさせていただきますが、住宅に限らず健康な生活を送るには、物事全体をトータル的に考えなければならず、偏った考えではなく、森全体を見れる確かな目も必要です。
素材に、目を向けることは間違いではありませんが、素材だけ考えるとこうした問題も生じてしまう可能性もあるということをご理解いただきたいと思います。
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