今日は湿度と換気の関係について紹介させていただきます。
最近、水蒸気の話が多いですねとお客様から言われましたが、湿気(水蒸気)は、人の健康においても、建物の耐久性においても、とても重要な要素となりますので、たかが湿気と思わず聞いていただければ幸いです。
高雨多湿のこの国では、大昔から、暮らしにおいても、住まいにおいても、湿気を解消するために、様々な知恵と工夫を凝らし、湿気との戦いを強いられてきました。
化学の発達した現代でも、湿気対策は続いており、空調機器や調湿建材・家庭用品や薬剤など様々な商品が開発されていますが、未だにあちらを立てればこちらが立たずで、根本的には、解消できずにいるのが現状ではないでしょうか。
しかも、家の防露性に関しては、無防備で相変わらず中途半端なままで、造り手はもとより、消費者の湿気に対する理解不足も否めず、益々、湿気による健康被害や建物劣化が増え続けていると言っても過言ではありません。
昨日、トリコスポロンによる夏型過敏性肺炎増加の話を紹介しましたが、喘息やアトピー・アレルギー性鼻炎などの症状が悪化するのも、シックハウスの症状が出やすいのも、この季節で、結局、その大きな要因は、湿気が及ぼす空気の汚れだということをご理解いただきたいと思います。
室内の湿気(水蒸気)は、生活によって発生する水蒸気と外から入ってくる水蒸気によって、構成されるのは、お解りいただけると思います。
人は、呼吸や汗によっても、1時間に起きてる場合は、約100グラム・寝ている間でも50グラムの水蒸気を発していると言われています。(夏は発汗もあるのでより多くなる。)
その他にも、炊事や洗濯・入浴やトイレ・洗面などによって、大量の水蒸気が発生しており、4人家族で1日約10リットルもの水蒸気が発生すると言われています。
※ 家干しの際の水蒸気は含まれていませんが、家の中で5Kの洗濯物を干すと約3リットルの水蒸気が発生します。また冬期間にファンヒーターを使用すると、燃焼した分の水蒸気も発生します。
こうした生活で発生する水蒸気は、常時換気し、外部へ排出すれば、室内の湿度は、さほど上昇しませんが、換気が不十分だと、湿度が上昇するばかりか、室内の内装材や家具・寝具・洋服など湿気を吸収する全ての物に、その水蒸気は吸収され、物質に含まれる含湿量が増えると、今度は有機物の分解や臭い成分の揮発が進み、臭いが気になり不快なばかりか、細菌やカビ・ダニなどの繁殖や虫の侵入や大量発生にも繋がってしまうのです。
特に、室温・湿度とも、高くなるこの時期は、熱と湿気で汚染物質が揮発しやすく、様々な物質の酸化や化学反応により、一年で一番室内の空気が汚れているという認識も必要で、家の中がむっと感じるのはこうした理由なのです。
この時期に、室内の湿度が、常時80%を超えて、湿気対策にあれこれ頭を悩んでいる方も多いのですが、家の高湿度は、絶対的な換気不足が大きな要因であり、除湿機や乾燥機・エアコンだけでは、なかなか解消できないということをご理解いただきたいと思います。
また、面倒な数字を上げてしまいますが、28℃の場合には、空気1立米あたり約27グラムの水蒸気を含むことができます。
120㎡(36.5坪)の家の気積は、家全体で約300立米となり、300×27=8100グラムの水蒸気を含むことが出来るのです。
仮に、湿度70%だとすれば、8100×0.7=5670グラムの水蒸気量を含んでいる計算となり、これに、生活で発生する水蒸気10リットル(10,000グラム)が加わるということなのです。
この10リットルという大量の水蒸気は、速やかに外部へ排出しなければ、家の中は大変なことになるのがお分かりいただけると思います。
<換気システムのない住宅の場合の換気回数>
しかしながら、日中も不在がちで、おちおち窓も開けれない中、適切に換気されていないご家庭も少なくないのです。
しかも、24時間換気が設置されていても、冬の延長で消していたり、つけてても気密性能が低い場合やフィルターのメンテが悪いために、下のグラフのように2時間に1回という基準の換気回数を満たしている住宅は、驚くほど少ないのが現実です。
<換気システムが備わっている住宅の換気回数>
生活で発生する水蒸気は、除湿よりも、まずは換気で排出するのが基本で、その次に状況に応じた除湿だということをご理解いただきたいと思います。
外から入ってくる湿気については、明日また紹介させていただきます。
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