空気の汚れと身体の冷えが病を引き起こす

  • 空気の汚れと身体の冷えが病を引き起こす
ナイチンゲールが、150年も前に書いた著書「看護覚え書」という本がありますが、第一章「換気と保温」の冒頭に、看護にとって、一番重要なこととしてあげているのが下記の言葉です。

それは、「患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、屋外と同じ清潔さに保つこと」なのである。というものです。

そして、空気の汚れと体の冷えは、病気の回復を遅らせたり、悪化させたりするばかりでなく、健康な人にとっても重要で、病気の半分は、空気の汚れと身体の冷えが引き起こすと説いているのです。

このナイチンゲールの教えを、そのまま現代に置き換えるのも、少々、無理があるかも知れませんが、空気の汚れによる、喘息やアトピー・シックハウスや化学物質過敏症患者の増加や、家の温度差によるヒートショックによって、多くの方々が心疾患や脳疾患に見舞われている状況を鑑みると、現代においても、空気の汚れや身体の冷えが病を引き起こしていると言っても過言ではないような気がします。



現代の暮らしは、無数の化学物質によって成り立っており、外の空気よりも、家の中の空気の方が何倍も汚れているのは、紛れもない現実です。

現代のシックハウスは、建材や家具・カーテンなどに含まれるVOC(揮発性有機化合物)よりも、日常使う、消臭剤や芳香剤・柔軟剤や防虫剤などの生活用品に含まれるVOCやカビや細菌などから発する微生物由来のMVOCの影響が大きいと各方面で指摘されるようになりました。

特に、消臭剤や柔軟剤の香りによって、多くの方が苦しんでおり、香害被害として、大きな社会問題にもなりつつあります。

日本人の死因の3番目が肺炎になったのはご存知でしょうか。



1番多いのは、もちろん悪性新生物、いわゆるガンとなるわけですが、ガンの部位別比率も、男女ともに圧倒的に多いのが肺なのです。





肺がんは、タバコなどの影響もあると思いますが、大気中や室内の空気汚染の影響も大きく、肺炎と肺がんを併せると、呼吸器系の疾患が、死因のトップとなり、心疾患・脳疾患と続き、死因のトップ3が、空気の汚れと身体の冷え(温度差)が、起因しているとも言えるのです。



私達は、無意識の内に、一日にペットボトル3万本以上の空気を取り入れますが、一番多く空気を取り入れるのは、家の中の空気であり、一番多く呼吸しているのは睡眠をとる寝室となり、就寝中の空気環境も非常に重要なのです。



湿気や結露が多いのも、寝室で、その影響でカビやダニが繁殖しやすく、寝具はダニの格好の棲家でもあります。

また、タンスやクローゼットには、害虫から衣服を守るための防虫剤を使用している方も多く、バラジクロベンゼンなどの有害物質も揮発しているのです。

そして、案外、見落とされているのが、就寝中にも、呼吸によって酸素を消費し、二酸化炭素を排出し、汗や呼吸によって水分も発しているということです。

通常、外気中に含まれる二酸化炭素の濃度は、400PPM前後で、都心の市街地でも600PPMと言われています。

室内の二酸化炭素濃度は、800PPM以下が望ましいとされていますが、ビル管理法にもある1000PPM以下というのが、一般的な室内濃度の基準です。

しかし、締め切った寝室で、大人2人が寝ていると、徐々に二酸化炭素濃度が上昇し、朝方にはゆうに5000PPMを超えている場合も少なくありません。

二酸化炭素濃度が上昇するということは、当然酸素濃度も減少するわけで、朝の目覚めが悪かったり、頭がボーとするのは、空気の悪さも影響しているのです。

最近では、空気清浄機を寝室に設置する方も、多くなってきましたが、空気清浄機は空気を循環しているだけに過ぎず、ハウスダストや汚染物質を吸着はするものの、酸素が増えたり二酸化炭素が減ったり、湿気を追い出すわけではなく、あくまで換気のサポート役という考え方も必要です。

常に換気された新鮮な空気の中で、寒さや暑さを感じることなく、ぐっすり眠ることで、免疫力も高まり、病気にかかりにくい丈夫な身体になり、ガン細胞の発生や増殖をも防ぐのです。



昔から、体の冷えは万病の元とも言いますが、冷えによって、体温が1℃低下することで、免疫力も30%も低下するそうです。

ご存知の方も多いと思いますが、人の体温は時間帯によって変動し、就寝中は体温が低下しますが、寝室が寒いと呼吸によって冷たい空気を何時間も体内に取り入れ、さらに体温の低下を助長するのです。

就寝中の突然死は、様々な要因がありますが、以前ためしてガッテンで、寝室の寒さがもたらす体温低下の影響も大きいと紹介されていました。

布団の中は、寝室の寒さとは関係なく、どなたも寝具や寝間着によって、30℃から35℃になっており、そうした中、冷えた空気を長時間取り入れることで生じる、身体への負担は大きいそうです。



ちなみに、睡眠に適した寝床内の温度は33℃前後で、室温は15℃から20℃と言われています。

寝室の温度が、15℃から20℃を保つことで、羽毛布団1枚とシャツ一枚で、スムーズな眠りにつき、寝返りで布団を剥いだりせずに、熟睡出来る様になり、トイレに何回も起きることもなくなります。

住まいの空気環境と温熱環境を整えることは、健康寿命を伸ばすためにも、重要だということをご理解いただければ幸いです。

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