先日も、レンジフードの話を紹介させていただきましたが、以前に一般のユーザーから寄せられた悩ましい質問を紹介したいと思います。
コンセントの周辺や穴から、隙間風を感じるとのことで、キッチンのレンジフードの換気扇を回すとさらにひどくなるそうです。
ハウスメーカーに連絡すると、レンジの換気をつけると、高気密なので、ちょっとした隙間からも空気を引っ張り込むため、換気をつける場合は、窓を少し開けて下さいと言われたそうで、これってしようがないのでしょうかという相談でした。
対処とすれば間違いではないのですが、窓を開ければ寒さを感じ、かといって隙間風も我慢できなくなり、キッチンの換気扇もすぐ消してしまい、家中に臭いがこもっている方は少なくありません。
※ 壁付け型の3種換気の住宅では、冷たい風を防ぐため24時間換気の給気用のシャッターを閉めている方も多いので、益々こうした現象が発生しやすくなります。
なぜ、こうした現象がおきるのでしょうか。
こうした家は、高気密・高断熱とは名ばかりの住宅が多く、中途半端な気密・断熱工事の影響に加え、換気に対しての知識不足によってもたらされる現象でもあります。
まず、レンジフードの換気ですが、メーカーや機種によっても違うのですが、強運転した場合、最低でも1時間当たり400立米から500立米の排気量となります。
数字を見ても?という方も多いと思いますが、例えば、120㎡(約36.5坪)の建物の家全体の気積は、約300立米ですので、レンジフードは相当な排気量だということがわかると思います。
換気は、空気が排出される分に見合う分の空気を取り入れなければ、換気扇が空回りするだけで機能しないので、レンジの排気に合わせた給気を考えなければなりません。
弊社では、レンジフードの換気は同時吸排型といって、排気に合わせて同時に給気される換気を20年以上前から標準採用しています。(レンジフード内部に給気用と排気用のダクトが設置されてます)
また、ハウスメーカーによっては、キッチンの周辺に換気連動型の給気シャッターを設ける場合もあります。
ご質問いただいた方の家は、残念ながらどちらの対策も取られていないので、換気を回すと家にある隙間から、空気が流入しているのです。
そして、おそらくはコンセント部分の気密処理も適切になされていないために、隙間風が流入してくると思われます。
ちなみに、家の隙間面積を示すC値が、最低でも1.0以下の高気密住宅であれば、気になるような隙間風はほとんど感じないと思います。(理想は0.5)
もし、換気の給気を考慮せずに、本当の高気密になっていれば、換気をつけると室内側に負圧がかかり、玄関ドアを開けようとしてもなかなか開かなくなります。
本来の充填断熱では、トップ画像のように、壁体内の結露と漏気を防止するため、コンセントには気密用コンセントボックスを使用するのが、ある意味常識ではありますが、おそらくそのまま普通のコンセントボックスをつけているだけではないかと思います。
※ 画像左が気密処理されたコンセントで右側がそのままつけたコンセントです。
つまり、高気密だから、少しの隙間でも空気を引っ張るのではなく、高気密とはいえない施工と換気に対しての知識不足で、こうした現象が発生してしまうのです。
そして、気密処理が甘ければ、断熱材が薄くなってしまうコンセントの裏側は、断熱欠損となり、室内の水蒸気が、壁の中に侵入し、内部結露の危険性が高まるということも理解しなければなりません。
しかし、こうした対応は、どこの現場でも普通になされており、欠陥とまでは言えないのです。
そして、こうした知識を知らないユーザー側も、何の疑問をもたないことから、なかなか改善されないのが業界の現状です。
レンジの排気に合わせた給気計画や、コンセントや配管貫通部の気密処理などは、普通のお客様が分からないのはあたり前のことです。
本来であれば、造り手側が正しい理解と知識をもって、対処しなければならないのですが、建築コストの問題もあり、業界内でも、温度差があり、手抜き云々ではなく、必要性を理解している造り手も少数の中、なかなか改善されない難しい問題でもあります。
一方で、外断熱の場合は、建物の構造部分の外側に断熱材を施工し、気密処理を実施するので、こうしたコンセント周りの気密処理をせずとも、すきま風などは発生しません。
私のブログは、一般のユーザーに加え、業界の方にもよくご覧いただいており、ユーザーと造り手の双方の知識を高め、宮城の住宅レベルを少しでも向上させたいという想いで書いていることをご理解いただければ幸いです。
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