すきやばし次郎

  • すきやばし次郎
先日、18年ぶりに国賓として来日したオバマ大統領が、安倍総理と会食した事で、大々的に取り上げられた鮨店「すきやばし次郎」ですが、ミシュランの三つ星レストランを7年連続で獲得している超有名店で、店主の小野次郎さんは現在も88才の高齢にもかかわらず調理場にたっているそうです。

世界の食通をも唸らせる名匠の技はいかに生まれ、培われてきたのか。 小野さんの仕事へのこだわりをどうぞお読みください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(――しかし第一線で働き続けるのは、大変なことですよね。)

(小野)
私の場合はまず、手が商売道具ですから大事にしています。 こちらの手が柔らかいと、シャリの硬さがちょうどいい具合になる。お客様がご覧になった時もきれいな手のほうがいいでしょう。
だから年中、手袋を外したことはありません。夏でも外へ出る時は必ず手袋をします。

またコーヒーは、飲むと2、3時間は口の中に味が残りますから、一切口にしません。ニンニクや葱も、息をした時に臭いがお客様のほうに移りますから、葱は店が終わってから、ニンニクは12月の29日以降しか食べません。

(――いろいろと気をつけておられるのですね。)

(小野)
でも本当に自分がこの商売を徹底してやろうとしたら、そのくらいの気を使わなかったら、おいしい物はできないと思います。食材にせよ、お絞りにせよ、お茶にせよ、そういうこだわりをやめてしまったら、何の値打ちもない普通の鮨屋になってしまうんです。

だからよそに負けないようないい材料をなるべく仕入れてきて、最高の物に仕上げてお客様に
召し上がっていただく、ということですよね。
 
いまはそれほど技術に没頭しているわけではありませんが、いままで積み重ねてきたものをそのままさらに積み重ねて、どんどんやっていこうと考えている。
 
だから、一生仕事だよ、一生勉強だよ、と言うんです。自分がそういうことを考えながら
やらないと、そこで技術がストップしてしまいますから。

(――日々技術を向上させていくと。)

(小野)
こんなことを言うと、皆さんに「85(当時)にもなって進歩?」なんて呆れられますが、現役でやっている間は、いつでも進歩を考えてやらなきゃダメですよ。 俺は85だからこれで満足、というんじゃなくして、何か新しい、いいものがあったらそれに果敢にチャレンジしてみる。
 
(――従業員の皆さんにもそういうお話をされるのですか?)

(小野)
いや、そんなに込み入った話はしないですよ。ただ自分たちがやる気を起こさなけりゃダメだ、自分で勉強しなかったらダメだ、とは言います。

要するに、親方とか先輩に教えてもらおうと思って入ってくるのは大きな間違いで、自分が上の人のやり方を盗んで勉強し、進歩していかなければいけない。
 
というのは、教えてもらったことというのは忘れるんですよね。自分が盗んだものは忘れない。
会社なんかでも同じだろうと思うんだけど、ポッと教えてやったら忘れちゃいます。
 
自分が苦労して苦労して、これを必ず自分のものにしようと思って、やっと盗んだものは決して忘れない……

………………………………………………

「修業は一生の道」
 小野二郎
(すきやばし次郎主人)

『致知』2010年5月号
 特集「精進の中に楽あり」より


この記事へのコメントはこちら

以下のフォームよりコメントを投稿下さい。
※このコメントを編集・削除するためのパスワードです。
※半角英数字4文字で入力して下さい。記号は使用できません。