彷徨っている。
心が揺れている。
人間界での、近所付き合いが難しい。
俺のフィーリングで言えば、細やかなつまらん下世話の金やら付き合いの話しである。
そして、偏屈だの、変わりモノだの、手におえない奴、などなどの批判を、どうぞご自由にと受けて、そして流し、面倒な気遣いだけの付き合いなんぞ辞めちまおうと決心したのである。
それをしたところで、俺の生活は変わらない。
むしろ、今まで奉仕とか地域の為と思ってしてきた事をしなくて済むので、気分も、実費もかからない。経済的にはプラスになるはずである。
しかし、借金もあり、そしてその借金を長らく待っていて下さる方もある。
我が家の状況を加味し、きっと支払うと信じて下さっている信用貸しの方もある。
出来る限りの最大限の返済を試みるのだが、それでもほんの少しづつ・・・。
子育てが大変だからと言って・・・・・
本当にありがたく、それに甘えてもいられないのだが、どうにもならない、いや、しなければならない我が家である。
彼の御仁には、本当に落涙の感謝である。
ただちにご返済を完了して、そして感謝の念を示したいのだが、不甲斐ない甲斐性なしのオイラには、もう少し時間が必要みたいなのである。
クマなど追っている場合ではないのであるが、他に・・・どうしようと言うのか、自分でも・・・、しかし、きっと完済を果たすのである。
それにしても、つまらん話に、ワタシはアホみたいに角張り、そして損をするのである。
損などどうでも良いのだが、きっとその俺の損を相手は得と考えるのだろう・・・・・。
そんな人はごく一部なのであるが・・・・・。
竹を割ったみたいなキパットな性格なのであるからして、カチンとくると平気で損をしてでも、関係を切り払いたい人間であるが、損は損であり苦しい。
人付き合いも苦しくなる。
あてもなく、アッシを連れて野を彷徨う。
霧の中、ストロボの光でアッシの目玉が恐ろしげに光る。
魂も彷徨うのだが、その身もさまようのである。
親子の熊が目の前を横切って走る。
鉄砲は持って来ていない。
それでいいのだ。
親子が慌てて逃げ去る後を目で追い、そして、その親子が私たちの追手から逃れ切り、そして新しい未来にあらん事を願うのである。
鬼の「マタギ」=「又鬼」であるが、人でもある。
彼女と、その娘が残した足跡が愛おしい。
彼女は知り合いの熊。その娘も僕は知っている。
14~5日程前に出会ったクマである。
どうか生き延びて欲しい。
僕は彼女を追うかもしれない、しかし生き延びて欲しい。
おかしな感情だが、そうなのである。
新しい月が、急な山の頂に見えた。