野生・・・
外は吹雪だ。 朝っぱら、暗いうちから風が唸りを上げていた。 俺の「おっかないもの」の一つに「風」がある。 どうにも強風が怖いのである。 山小屋などに泊まって、山頂付近の凶暴な風の音を聞くと、小屋が飛ばされるのではあるまいか、などと変てこな恐怖におののき、一睡もできないなどと言う事がままあるのである。 テント泊などで強風に煽られると最悪である。 テントごと飛ばされて、谷底に落っこちて血だらけペッチャンコになってしまうのではないか、と、リアルな血みどろの想像が頭の中を駆け巡り、発狂寸前に至るのである。 だが、誰一人として、俺がそんな風に見えるとは言わないのである。 自宅でも同じである。 屋根が剥がされ、布団の中から空を仰ぎ、降る雪が顔に積もるのではないか・・・という全く妙な恐怖心から寝ていられないのである。 寝ている間に風が凶暴性を増し、竜巻に姿を変え襲い掛かるのではないか、家ごと家族全部を山の上まで吹き飛ばしてしまったら、一体どうやってサバイバルすりゃいいのか・・・・ だいたい、強風の日に窓に近づく事さえ怖いのである。 なものであるから、今朝は未明から目が覚め、レディー・カカァのパンツなどに掴まり、朝まで脂汗を流しながら恐怖と戦うのである。 パンツを引っ張られるレディー・カカァなどは高いびきで、オイラが風の音に恐れおののいているなど全く気付いていない事であろう。 たまに目が覚めて、何でパンツなど掴んでいるのかスケベジジイなどと言われ、風がおっかないなど言って見ても、「アホ、寝ろ」と言われるのであるから、レディー・カカァも一応怖いのである。 ついでに記すと、「穴ぼこ」も怖いものの内である。 土管、マンホール、公園の小山の穴ぼこ、クマの穴などは最たるもの、似たような形状と言うか状況で言えばエレベーターと称す箱などなど・・・・ あれらは非常に恐ろしい。 土管に顔を突っ込むと、向こうから水が沢山流れてきて、水攻めにあうような恐怖感がある。 土管に入れ、などと言われたら・・・・たとえ向こう側まで数メートルであっても遠慮したいのである。 万が一100メートルもあったなら、途中で発狂する。 クマの穴など絶対に入らない。 誰が何と言おうが入らない、覗くのもおっかなくて仕方がないのに、入ったりできるかぁ~~~ エレベーターなども、時々乗らざるを得ない状況があるが、出来る事なら避けたいのである。空気がなくなって窒息してしまうのではないか・・・、こんな箱の中で・・・・ウッ、ゲッ、クルシイ・・・・となってしまう。 停電などして、途中で止まってしまったりしたら、これもパニック、発狂、急きょ特殊部隊隊員と化して、天井の管理用ハッチをぶち明けて、ワイヤーに掴まりひたすら上を目指して登ってしまいそうである。 まあ、書き出すと1篇の譚となるほどである。 こう見えて、怖がりなのである。 クマも怖い。結構怖い。遠くで見るから耐えてるが、近いと・・・一昨日みたいだと心臓も止まりそうなくらい魂消るし、怖いのである。 怖そうな、モノであるが、 鹿の骨と筋肉を齧るチビ犬「アッシュ」の顔が怖い。 何ちゅう顔して噛り付くモノやら。 奴は、一人で「ヴ~」と唸りながら噛り付いている。 ヴーヴ~ヴェ~と唸りながら一人で楽しんでいるのである。 デカバカポチはありゃまぁ~と言いながら、アッシュを眺めているのである。
2011.12.23