オトコギ・おとこ気・・・
とまあ、良く言うが、どういう気であるのか検証してみた。
俺は、以前、道路で車に轢かれてペッチャンコのサルを見つけたのだが、
何と、そこに小っちゃいサルがしがみついていた。
冬の出来事。
某スキー場でリフトのおじさんをしていた頃の話である。
冬の未明の出勤時、それを見つけた訳である。
サルは、俺のブドウ園を、冷汗が流れる程に喰い荒らし、悪さを致す小憎らしいカタキであった。
そんなモノ、いらん。死んでしまえと思ったのだが・・・・
通り過ぎたあと、車をバックさせ、しがみついていた子ザルを捕まえた。
放置すれば、後続車に轢かれるか、いずれにせよ仲間はいない。
まだ春は遠い季節。
死ぬことは間違いなかったろう。
ブドウ園の敵ではあるが・・・・・
いくらカタキと言えど、雪の夜に捨て置かれ、それが、万一保護法違反となろうとも、泣く子を見捨てる事など出来ぬ。
軽トラに仕舞い込み、たまたまあったロープで暴れないように縛り、一日仕事をした。
帰りの時間にも、彼は生きていた。
家に持ち帰り、食い物を与えた。
カタキではあるが、その命。
君が自活できよう春までは、俺が保障する。
その後、ブドウ園荒らしに来れば、害獣駆除で容赦なくその命、頂こう。
が、家に置いてみて、ビックリ仰天、簡単でない事に気付いた。
あれは、2次元的移動の犬とは違い、3次元の移動を得意とする。
平たく言えば、平面的な活動の犬に対し、奴は柱や木に登ると言う事である。
車庫の、鉄骨の梁の上に登り、小便垂れる訳である。
鉄骨の腐食が心配になる訳で・・・・・その後やっぱり腐食・・・・
ちょっと、始末に困窮した。
努めているスキー場に相談した。
「じゃぁ、春までうちで面倒見よう。」
当然、捕獲も飼育も禁止されている動物である。
スキー場に預けるにあって
「これは保護動物で、非狩猟鳥獣である。飼育してはいけない動物である。
この場合、保護に当たるのではと思うけれど、いずれにせよ自活できる季節を迎えたら、必ずそれは、山に放たなくてはなりませんよ」
と、諄く申し述べた訳である。
その時点で、狩猟者たる私も、これが、保護であると認識していた訳であるが。
ある時、スキー場に警察の手入れがあった。
密告による、「保護動物の飼育違反の疑い」と言う事である。
たまたま、休みだった俺にも連絡が入った。
「え????、なんで???」
令状を持ち、サルやその他関係物は押収された。
私は、ただちに、その警察署に出向いた。
「そのサルを捕まえたのは俺です。」
知らん振りでも、どうにかなったのかもしれない。
しかし、俺にはそういう事が出来ないのである。
俺がした事には、俺は責任を持つのである。
良きにせよ、悪しきにせよ、俺の行動に、俺は責任を持つ。
大した事であるなんて言わないが、告発された事案に名乗り出ると言う事は、結構ビビるし、勇気も必要だ。
逮捕という事態も覚悟した。
「逮捕される覚悟で来ました・・・・」
「じゃあ、歯ブラシと下着持ってきたぁ?」
「え・・・・・・・・、・・・・・・・・。」
「冗談だよ、自分からこんな風に名乗り出る人を、警察は逮捕なんかしない。」
その言葉に救われたし、自分の行動は正しかったのだと理解した。
黙っていたら、多くの人に迷惑がかかった事だろう。
その時は、不覚にも(結構あちこちで泣いているのだが)、多くの人前で、涙をこぼした。
その後の事を話せば長くなるのだが、その時点で、自活できない動物を保護し、自活できる状況になってから放せば、それは保護だと思っていた訳である。
しかし、実態は、動物保護法第8条違反。(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)
非狩猟鳥獣の捕獲に当たる。
如何なる状況であっても、保護動物を捕獲飼育してはならん。
そういう場合は、救護所があるので、そこに持ち込むように。
なのである。
みなさん、ここのところ、注意してくださいね。
法の解釈は、個人が行い解釈するというレベルではない。
それは、司法が行うところなのであるが、甘く考えていた。
日本には、「ツルの恩返し」はじめ動物と人間の関わる話が数多い。
それを聞き、読み、育ったオイラには、弱者を助ける事は当然だと思ったからである。
そして、それが、種を越えてでも為すべき慈悲であり、義務、あるいは道徳、人情であると信じていた。
しかし、法は法である。
書類送検。
銃保持者で、狩猟者である。
そう言う立場の責任を、重々承知し、そう言う立場にある自分の責任を感じていた。
狩猟者、銃保持者でなけでば、知らぬ法なのだが、狩猟者としてその法を知りながら、誤解とはいえそれを犯した訳である。その責任は重い。
おまわりさんには、銃も狩猟も放棄します。
銃は、ただちに廃銃にします。
しかし、地域の害獣駆除などに資する若手としてより一層、従事者の減少に関与してしまう事に申し訳なく、地域の農家や狩猟仲間に申し訳ないと思う。と言った。
「まあ、待て・・・・・」
おまわりさんはそう言った。
検察に出向き、事情聴取やら取り調べやら・・・・・
起訴か、不起訴か、起訴猶予なのか・・・・
「君の始末は、追って沙汰を申し述べる」
と言う事であった。
数か月後、
担当の検察官から「起訴はしないが、その罪は罪である。忘れず今後社会に資する事ですな」の旨、沙汰があった。
平たく言えば、無罪放免な訳だ。
その後、おまわりさんとはどう言う訳か折り合いが宜しいである。
「男気」だね~
今時、自分がやったなんて言う人見た事ないよ・・・・・・
だって。
よかれ悪かれ、私は告発した人を恨む気もないし、まして探し出そうとも思わない。
その事で、自分の行動を省みて、社会や法などに従うまでである。
間違えは正せばよい。曲がっていたら、まっすぐにする努力をすればよい。
或いは、そこでしっかりと自分の意見や主張も欠かさない。
しかし、我儘であるかどうかの自問は欠かさない。
そんな中で、今でも銃を持ち、狩猟者でいられる。
当時の関係各省庁、警察の皆さん、関係者には、現在でもご迷惑をおかけしたことも去る事ながら、それ以上に、状況を理解し、考慮され、酌量され、一緒に悩んだり、頭を抱えて頂き、そして現在の私の存在となっていることに、深く感謝しているところである。
自分の行動や、発言には、それ以前も、以降も変わらず責任を負う、
失言や失敗もある。全ては無理だろうが、そういう信念である。
インディアンの言葉、という本に、こんな言葉がある。
テレホン人生相談でおなじみの加藤諦三先生の著書でもあり、その番組でも良く言われている。
変えられることは変える努力をしましょう。
変えられない事は受け入れましょう。
くよくよ悩むより、みんなで一緒に考えましょう。
本当に、私はわがままでありながら、幸せであると感謝している。
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