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白い巨塔

 数年前放送されたテレビドラマ゛白い巨塔゛

 アンコール放送を収録し、主人と一緒に観た事を思い出しながら見ている。

 大学病院に転院し、初めての゛教授回診゛の時

 『白い巨塔みたいだね』と喜んだのが懐かしい。

 面会が制限されている病室にも・・・゛教授回診゛に限っては例外となる。(苦笑)


 多忙な医師と十分に納得がいくまで何度も話をするのは難しい事だと思う。医師の方からセッティングした時は、十分な時間があるけれど、こちらから説明を求めた時には、本当に聞きたいことを要領よく、優先順位をつけて、言葉も選びながらだった。状況が厳しくなればなるほど、納得いかない事が多くなり・・・それは、医師と話をする事で受け入れていくしかなかった。最後をどう迎えたかは、その後の遺族の生き方に、本当に大きく影響すると感じている。

 

 

ニュアンスが伝わらない

 普段、何気なく使っている言葉。当たり前に伝わると思っていた言葉。

 隣県の病院に転院して、言葉が通じない事に気付いた。同じ東北なのに・・・分からない事が分からないと思ったけれど、やっぱり伝わらない。

 症状を訴える時の微妙なニュアンスが伝わらない。共通語では、表現しきれない。

 東京に転院して、更に言葉は伝わらなくなった。看護師さんに、聞き返される事が多いので、どうしても改まった会話になってしまう。

 幸いにして主治医は山形県出身。
 
 『僕は分かるから大丈夫』

 と言う彼に、ものすごく親近感が沸いた。

 地元の病院から転院先を決めるとき、

 『家族から離れて違う土地での治療はとても大変な事です』

 と医師が言った。

 微妙なニュアンスが伝えきれない・・・こんな些細な事も、とっても大きな壁だった。

お手紙届いたかな?

今朝娘が、

「お父さんに、お手紙届いたかなぁ・・・」といいました。

 「えっ? いつ出したの?」と尋ねると、

 「昨日」

 「どうやって出したの?」とまた尋ねると、

 「鶴に頼んだ! 折り紙にお手紙書いて、鶴を折って、仏様にお供えした。
  お母さん、鶴は渡り鳥だべ! お父さんの所にも渡っていがれっぺした。」と。

 「そうだね。渡り鳥だね。でも、お父さんは今どこにいるのか鶴に分かるの?」
と尋ねてみました。

 「大丈夫! お父さんの住所にお願いしますって書いたから!」と。

 自信たっぷりだったので、私も鶴に手紙を届けてもらう事にしました。

 主人とは入院中もたわいもない話を毎日していました。なんてことない話を気軽にできていた主人を失って物足りないなぁと感じます。その胸の内を娘に話したら、

 「お母さんだって、お父さんの事ちゃんと胸さしまったんだべ!胸さしまったお父さんに、話しかけてみな。ちゃんと答えてくれるから!」と。

 小学生の娘に諭されているようで・・・(汗)

 主人が亡くなる二日前から、「今、生きてるお父さんをしっかりここ(胸に手を当てて)にしまっておいて」と娘達に何度か話しました。しっかり胸に刻んでくれたからでた言葉なんだろうなぁと思っています。
 

あるものでやる

 夜、寝る前、子供達とほぼ毎日、お父さんの話をします。楽しかった思い出や病気の事、命を落としてしまった事、その日の気分によって話題は変わります。

 父親が亡くなって一ヶ月が過ぎ、娘達にも、心境の変化を感じます。あの時、こうした方が良かったんじゃない?という思いも、時間の経過や、成長の過程でいろいろででくるようです。いろいろな思いが、恨みや後悔に変わらないよう、いつも向き合って話し合っていきたいと思っています。

 闘病中、こども達が知らなかった事、あえて伝えなかったことも、少しずつ話しています。

 昨夜は、

 「お母さん、T先生から、二回目の移殖の話を聞いたとき・・・お父さんに適したものは無いとO先生からは聞いていますと言ったの。そしたらT先生は『あるものでやる。それしかないでしょ』って言ったんだよ。本気でやってくれるんだと分かって、お父さんもお母さんも嬉しくて、涙がでたよ。」と話をしました。

 すると娘が、
 
 「お母さんも、ご飯の支度するとき、いつも、あるもので作るっていうもんね」と言いました。

 この切り替えしには、かなり驚きましたが、普段のの生活でも゛あるものでやる゛が根底にあるから、あの時、医師の言葉に妙に納得したのかもしれないと振り返りました。

 無いからと諦めるのではなく、゛あるものでやる゛これは時に強い武器になる事を確認し合いました。

逃げ道

 主人が入院中

 私にひどく叱られた時・・・娘達は、こっそり主人にメールを送る事があった。

 可愛いのは、゛自分も悪かったから仕方ないけど・・・゛という言葉が最後に入ること。

 先日、

 「もうお父さんいないから・・・お母さんに、すごく怒られたとき、誰に相談するの?」と聞いてみた。

 二人とも口を揃えて

 『おばちゃん』(主人の姉のこと)

『おばちゃんなら、お父さんと似てるから、お父さんと同じ答えが返ってく ると思う』と。

 ちゃんと逃げ道を確保してるなら、今まで通りでいいかな。