話すことで・・・

 とっても真面目で口下手な医師が主治医になった事があった。

 彼がとても厳しい話しをした時、

 『薬飲んだだけで、一発で治る方法ないの?』

 と主人が軽い気持ちで言うと、彼の目に涙が浮かんだ。

 そんな薬などないことは十分に分かっていた。彼の涙を見て、私達は医師はもう諦めていると思い込んだ。諦めた医師の下で治療を続けるのは嫌だと思った。

 そう思い込んだまま転院し、その後も彼の涙が頭から離れることはなかった。


 この医師の想いを知る事ができたのは、主人が亡くなった後だった。

 最後まで治癒にこだわった主人と
 現実の中でいい時間を少しでも長くと願った私との間に立ち
 医師として出来ることを考え続けてくれていたことを少ない言葉の中にもしっかりと感じた。

 今となってからでも、彼と話しができて良かったと思う。

 天国の主人にも彼の想いが伝わっていますように・・・。
2010.04.18:主人:[白血病から考えたこと]

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