HOME > 白血病から考えたこと

手紙

 主人が入院していた頃、よく手紙を書いた。

 地元の病院に入院中の時は、交換日記。毎日面会に行けたので、日記をリアルタイムに交換する事ができた。ただ、ちょっと不満だったのは、主人からのメッセージが子供達へのものしか無かったこと・・・私も書いてるのに・・・と何度抗議したことか(笑)


 隣県の病院に転院してからは・・・・葉書をだした。
 メールで瞬時に情報交換できることに慣れてしまっている私達は、葉書に違和感を感じた。相談を書いても、もう解決してしまっていたり、飼っていた爬虫類の事を書いたけど・・・届いた時は、死んでしまった後だったり(苦笑)
こんな事が何度か続いて、子供達もメールでやりとりする内容とと葉書でやりとりする内容を考えて選ぶようになっていった。

 東京に転院した時、下の娘が

 「今度は東京にお手紙がだせるね」と喜んだ事がとても印象的である。

 東京へは、三人分まとめて、封書でだした。

『50円の葉書をそれぞれに書くよりは、80円でみんなまとめて封書で出した方が安い!』
 これも子ども達の意見だった。結構・・・堅実的だ。

 何十通も交換した手紙の内容のほとんどが、日常生活のたわいも無い出来事だった。でも、これが互いの距離を縮めてくれていた気がする。

 『もう、お父さんに、お手紙書けないのが寂しいね』
 と昨日娘が呟いた。これからは、お父さんに伝えたいことをどんな方法で伝えようとするのか、そっと見守っていきたいと思う。

がん患者の家族だった頃

 ガンは治る病気と言われるまでに医学は日々進歩しているけれど、
 極めて治療が難しいガン患者の家族となってしまった。しかも、小さい子どもがいる働き盛りの主人が患者。好奇の目を向けられるのはごく自然な事。田舎の小さな町ならなおさら・・・。

 小学生の娘達に事あるたびに伝えて来たこと・・・・

 『大事な事は、必ず、お母さんから話すから、誰かの話に振り回されない  事・・・お母さんを信じて・・・。』

 大人たちの無責任な会話で、子供達が傷つく事だけは避けたいと願っていた。
 
 娘達には、私の口から淡々と事実を告げてきた。それは、娘達が望んだことだったから。

 発病して間もない頃、娘達にどう話していいのかも分からず、

 『子どもには関係ない!』

 と言ってしまった事があった。

 すると、即座に

 『お父さんの事なのに、関係ないわけがない!』

 と言い返されてしまった。

  "関係ないわけがない・・・大好きなお父さんの大事な事だもの"

  これは、娘達の一緒に闘う覚悟だと思った。
 
 

統計学的な数字

 主人の病名が確定して、最初に医師に尋ねたのは・・・

 『治るんですか?』でした。

 医師の答えは・・・

 『治る人もいます』

 そこから気になってくるのは、統計学的数字。

 治癒率

 成功率

 長期生存率などなど・・・・

 これから、30年生きたいと考えていた主人にとって・・・普通に考えて、希望になるような統計的数字は最初からありませんでした。

 しかし、わずかな確率でも、数字がある事が、私達にとって希望でした。
 数字はないと言われて臨んだ最後の治療も、治療を受けられる事そのものが希望でした。
 
  数字がなくても、希望をもてた事・・・これは、たくさんの人達の支えがあったからこそです。

  

思い出の味

 食べる事が大好きだった主人との思いでは・・・やっぱり食べ物が多いかな

 子供たちも、何か食べる度に、お父さんと一緒に食べたねってよく言います。

 今朝の思い出の味は、゛さつまいも゛

 ゛五郎島金時゛という種類のサツマイモ

 昨年の秋初めて、五郎島金時の天ぷらを食べた時・・・笑みがこぼれました。

 これが、サツマイモの天ぷらって食べ物なら、今まで私達が食べてたサツマイモの天ぷらって何?ってくらい衝撃的な美味しさでした。
 
 あの時の感動を思い出しながら・・・今朝は素揚げに・・・。
 
 秋になれば、毎年思い出すんだろうなぁ・・・一緒に食べたことを・・・
 

娘たちへ

 幼くして、父親を亡くした、貴女たちの、悲しみ、寂しさを思うととても切なく思います。

 でも、お母さんは、貴女たちを可愛そうだとも、不幸だとも思っていません。

 貴女たちの心にはお父さんがいっぱい詰まっているはず・・・。お父さんに愛された記憶がたくさん詰まっているはずです。短い期間で、たくさん愛してもらった事を貴女たちは分かっているよね。

 貴女たちの、前向きに生きる力に、お母さんはいつも励まされます。

 いつもいつも前向きに・・・とはいかないけれど、もう一緒に泣く事も出来る、頼もしいパートナーに成長したね。

 難しい事を相談しても、賢明な選択をしてくれる貴女たち・・・お母さんは、貴女たちをとっても頼りにしています。