内装材として最もよく使われている材料は、石膏ボードでしょう。(写真は下地材に石膏ボードを取り付けている途中です。)
乾式工法(工場で生産されたボードやパネルを取り付ける工法)として施工性もよく、そこそこの強度と防火性能があり、しかも安価です。
もともと壁はその土地でとれる材料で塗り上げていたはずで、土物壁に代表されるような湿式工法が主流でした。
しかし、工業化や施工性・コスト性を追求するにしたがって、全てにおいて「湿式」から「乾式」へ移行してきているように感じます。
かつてはその腕を競い、職人の中でも一目置かれていた左官職人さんも、ずいぶんと数が減ったのではないでしょうか。
高度成長とともに急速に進んだ「乾式化」によって、我々日本人の心も乾いてしまったような気がします。
しかし、これから迎える「心の時代」では、みずみずしく潤った心が必要です。
もう一度「湿式」の良さを見つめ直す時が来ています。
「乾式」から「湿式」へ
床と五感の相関関係!?
写真は無垢(むく)のフローリングを張っているところです。
表面だけ木を張った合板フローリングもありますが、無垢材は重厚さが伝わってきます。
同じフローリングでも、材質や色調で随分と違う印象を与えるものです。
さて、私たちの体が一番触れる住宅の部位はどこでしょうか?
それは床ではないでしょうか。
そして、人間の五感に一番働きかける部位も床だと考えられます。
畳を例にとりましょう。
見た瞬間にくつろぎ感が視覚にうったえ、足のすり音が聴覚にうったえ、織り目の起伏感が触覚にうったえ、イグサの匂いが臭覚にうったえます。(さすがに直に味覚にはうったえませんが、日本料理を食べるときには和室を連想させます。)
日頃あまり意識しない五感ですが、ちょっとだけ五感を働かせ、家の中でそれぞれどのように感じているのかを意識してみてはいかがでしょう。
きっとおもしろい発見があるかもしれません。
高断熱だけでは語れない、人と地球に優しい住宅
地球温暖化対策、省エネルギーの観点から考えると、住宅における断熱性能の向上は必要不可欠です。
特に北国における、室内間の温度差が誘発する脳梗塞対策としても同様です。
断熱材とは、名前のとおり外部からの熱の出入りを断ち切るものです。
しかし、夏や冬はその効果が顕著ですが、中間期といわれる春や秋は、逆に外部の熱をとり入れるほうが効果的な場合もあります。
元来日本人は、この自然の摂理を上手に利用してきました。
伝統的な日本家屋は屋根をかけ、軒やひさしを出して夏場の日差しを遮断します。
冬場(晩秋)には、高度の低いやわらかい日差しが家の中まで入ってきます。
中間期には家の窓を開け放ち、心地よい風が通りぬけます。
この考え方をパッシブと呼びます。(これに対して、空調機や換気扇を利用することはアクティブです。)
近年、高気密高断熱(本来は高断熱が重要で、高気密ありきには異論があります。)を唱える住宅が増えていますが、軒やひさしもなくのっぺりとした外壁に、サッシだけがついている住宅をよく見かけます。
しかし、軒やひさし、樹木などの遮熱性を上手に活用し、自然のエネルギーを最大限利用することが肝要だと考えます。
風が通る心地よい空間と、しっかりした断熱性・遮熱性とのバランスの良さが、人と地球に優しい住宅だといえるでしょう。
三角関係で安定する?
阪神大震災で死者6433人のうち、木造住宅の倒壊で約5000人もの人が亡くなられたという事実をご存知でしょうか?
その後の研究によって、倒壊した木造住宅の大多数について、構造上必要とされる耐力壁が十分確保されていなかったと報告されています。
筋かい(すじかい)は、地震や台風などの外力に抵抗するための耐力壁の一種です。建物全体にバランスよく配置し、筋かい計算による必要量を満たすことが求められます。
それと同時に、筋かい端部の接合部をいかに固定するかが重要です。住宅金融公庫の仕様書でも推奨されている、Zマーク表示金物を使用することが望ましいとされています。
さて、筋かいの本質は何でしょうか?
それは三角の形状を作って、構造的に安定することです。
キャンプ用テントやピラミッドも三角で安定するし、トラス構造も三角の集合体です。
でも我々人間の場合は、三角関係で安定しているとは言い難いですけどね。