元勤務していた設計事務所時代に担当させていただいた仕事です。
※建築物の詳細は伏せて紹介させていただきます。
業務:設計・監理
竣工:1996.3
重機メーカー社屋・整備工場
時系列でみる外壁の工程
一言で外壁といっても、たくさんの工法・仕上があります。
今回は、外壁通気工法を採用したセメントボードへの吹き付け仕上を、工程ごとに時系列で追ってみました。
最初は通気胴縁(つうきどうぶち)と呼ばれる木材を、断熱ボードの上に取り付けている状態です。
胴縁に外壁材を打ち付けると、18mm程度の隙間ができます。暖められた外壁の熱や湿気は、この隙間を通して上方に抜けていきます。これが通気工法です。
続いてセメントボードを通気胴縁に打ち付けた状態です。
次に、下地調整用のベースコートを塗りつけた状態です。
表面の凹凸がなくなるので、仕上材がきれいに仕上がります。
最後に、吹き付け仕上材を吹き付けて完了です。
外壁は大きなキャンバスです
デザイン系の絵画などを手掛けたことがある方はご存知かもしれませんが、エアーブラシという道具があります。塗料を霧状に吹き付けますので、ムラの無い均一な塗装ができるすぐれものです。
外壁に吹き付ける塗装も、原理は全く同じようです。
関係の無い部分に塗料が付かないように、事前に養生シートとテープでしっかりと養生しておきます。
大きなエアーブラシに塗料を入れ、コンプレッサーからの圧縮空気で一気に吹き付けます。
まるで大きなキャンバスに絵を描いているようですね。
古民家に学べ!コミュニケーションをとりもどす間取り
人間が社会の中で生きていく上で、もっとも大切な基本能力は、コミュニケーション能力です。
その能力を養うもっとも身近な活動の場が、「家」にはあります。それは子どもとのコミュニケーションだったり、夫婦・家族とのコミュニケーションだったりします。
しかし戦後、核家族化が進み、「nLDKプラン」と呼ばれる機能分離型の間取りが普及するとともに、家族のコミュニケーションも分離されてしまいました。
例えば、子どもが学校から帰ってきたときに、子どもの顔(その日の様子)を見ることもないまま子ども部屋に直行できるような間取りになってはいませんか?
もともと日本の民家には、「部屋」という概念は存在しませんでした。伝統的な「田の字型プラン」は、それぞれの和室を廊下を介せずに隣接し、ふすまや障子をはずせば一つの空間になります。
古民家には、玄関や台所、居間といった役割を担った「土間」があり、家族や地域の人々とのコミュニケーションがそこにはありました。
家庭内暴力や親の離婚、昨今の若年層の犯罪などをみるたびに、一番身近な「家」の中でのコミュニケーションが希薄になっているように感じられて仕方ありません。
子どもたちにとっても、夫婦・家族にとっても、「おはよう!」「行ってきます!」「ただいま!」「おやすみなさい!」が元気に言える間取り、今だからこそ見直すときです。
日本住宅の良さは、建具文化にあり!
建具(たてぐ)とは、部屋の仕切りや外部との仕切りに用いる、開け閉めすることのできる障子・襖(ふすま)・窓・戸などのことです。
家具と同様に、建具にも造作(ぞうさく)建具と既製品とがあります。
既製品の木製建具を見てみると、欧米に比べて日本製は種類も少なく質も見劣りするようです。木製ならまだましですが、木をまねた樹脂製やアルミ製のものまであり、本物志向の建築主には受け入れられません。
もともと日本住宅の良さは、建具文化にあると考えています。
季節や天候、使う目的によって自由に空間を仕切ったり開放したりして、柔軟性に富んだ住まい方ができます。
この建具文化の良さを、生かすも殺すも設計者の腕にかかっています。
ハウスメーカーさんの場合、使用する建具の多くは標準化されており、比較的自由度が少ないと言われます。
逆に設計事務所の場合、建具は腕の見せ所のひとつであり、建具表といわれる設計図を書きます。
さて、建具や家具の最大の特徴は、建築物の中で唯一“動く”という機能をもっている点です。
そのためデザインのみならず、金物などと組み合わせながら機能性・耐久性が求められます。
それをつくる建具職人さんには、素晴らしい技術と知識があります。
家具職人さんと同様に、山形の建具職人さんは、全国でも最高水準のレベルにあります。
本物志向の建築主には、たいへん喜ばれます。