最上義光歴史館

最上義光歴史館
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■「津軽海峡」と「天城」の思い出
 かつて青函連絡船が運行されていた頃、それは夜間に青森駅を出て早朝に函館に着くのですが、大晦日の船内では紅白歌合戦が放映されます。以前、その様子を記録した映像が放送され、年の瀬に連絡船に乗り「津軽海峡冬景色」を観ている乗客の姿に、思わずこっちまで入り込んでしまい、それまでなんとも思わず聞いていたこの曲が、今ではあのイントロを聞くだけで泣けてくることがあります。中学の修学旅行でこの青函連絡船に乗った時は、ただただ眠くて、気づいたら函館で、その時は、あの「は〜るばる来たぜ、函館ぇ〜」という歌だけが、頭の中で響いていました。
 天城方面にも行きました。浄蓮の滝はやはり見ごたえがあります。大きいので写真に収めるのがなかなか難しい。ここの滝壺には「女郎蜘蛛伝説」というのがあり、美しい女の姿になった女郎蜘蛛を見かけた樵(きこり)は、そのことを口留めされるのですが、いわゆるそういう話です。浄蓮の滝には「天城越え」の歌碑が設けられています。ちなみに竜飛岬には「津軽海峡冬景色」の歌碑が設けられていて、こちらはボタンを押すと「ごらんあれが竜飛岬、北のはずれと」と2番の歌詞だけが流れるそうです。
 あと観光名所と言えば、天城山隧道(旧天城トンネル)でしょうか。心霊スポットとしても有名らしいのですが、今は「千と千尋」のトンネルとも言われているそうで、以前は「伊豆の踊子」のトンネルとして有名でした。ちなみに川端康成が「伊豆の踊子」を執筆したという「湯本館」は心地のいい温泉宿です。お湯がとてもいい。また、「千と千尋」の湯屋のモデルだという「積善館」には広いお風呂場があり、ここの蒸し風呂がまた独特なのですが、天城の話と離れてしまうので、ご紹介は別の機会に。それにしても四万温泉のお湯はいいです。ほとんどが自然湧出で、飲泉もできるというのはすごいことです。
 話を戻すと、天城で一番記憶にあるのは、「孤独のグルメ」で紹介されていたわさび園かどやの「わさび丼」です。自分ですりおろした生ワサビをご飯にのせ、鰹節に醤油をかけるだけという、要するに「ねこまんま」の生わさびのせなのですが、これがやたら美味しい。添えられたワサビ茎の佃煮がまたいい。なお、すりおろさず残った生ワサビは持ち帰りできます。

■「カラス」と「雪」の話
 モネの絵というと、「睡蓮」とか「積みわら」とか「鉄道橋」とか「教会」とかを、時間とともに移ろう光の色で描き分けた連作を思い出されるかもしれませんが、「雪景色」を描いた作品も少なからずあります。光の変化を描き分けた連作はないのですが、雪化粧した「積みわら」の絵もあります。
 その中でもオルセー美術館蔵の「かささぎ」と題される作品が有名で、日本でも何度か展示されていますが、もう本当に、雪の光加減を見事にとらえています。しかしながらその「かささぎ」は、そう言われないと見落としそうな、雪景色の中にさりげなく小さな黒い筆跡で表されています。カササギは、上部が黒、腹部が白、尾が鮮やかな青色をしたカラスの仲間です。カササギは日本にもいるにはいるのですが、佐賀近辺にしかいないそうで、日本にはこれを含めて7種類のカラスがいるそうです。
 これを知って、なぜか「津軽には七つの雪が降るとかぁ〜」と口ずさみそうになりましたが、それはさておき、当館の手前にある人工池のほとりにはたまに、どうも他とは違う鳴き声のカラスが来ます。動物好きの当館学芸員に尋ねると、あれは近くの交差点の信号機の音を真似しているのだとか。興味のある方はぜひご来館を。雪が積もれば、あのモネの絵のような情景を、この一風変わった鳴き声とともに目にすることができるかもしれません。
 ちなみに山形は「津軽の七つの雪」のような詩情あふれる雪は少なく、降るのは「ボタ雪」とか「ドカ雪」とか、あとは「滑る雪」とか「滑らない雪」とかです。生活情報としては「重い雪」か「軽い雪」か、「積る雪」か「積もらない雪」か、「残る雪」か「残らない雪」かも重要です。まあ、こんな感じなので、津軽のような演歌は生まれないのかなぁ、山形は。

展示替えの作業のため
■ことわざの話
 いつものことわざシリーズですが、今回はたいしたオチにもならなそうなので、裏日誌に回します。鎧にまつわることわざとしては、「衣の袖から鎧が見える」というのがあり、本音が見え隠れする、という意味ですが、その由来は平家物語にあるとのことです。
 「物語要素事典」の「重ね着」(?!)の項目には、「武士を召集し法住寺の御所へ押し寄せようとする平清盛のところへ、嫡子重盛が諌めにかけつける。清盛はあわてて鎧の上に法衣を着、胸板の金具が見えるのをひき隠しつつ対面」したとあり、実はあわててしまいバレバレであるという話なわけで、これは「頭隠して尻隠さず」に近い感じです。
 ちなみにこの「重ね着」の例示では他に、「法衣の上に鎧を着る。」、「死装束の上に羽織を着る。」、「他国の軍服の下に、自国の軍服を着る。」というのも載っていて、これを全て「重ね着」という括りにしてしまっているのがすごいところです。
 それはさておき「衣の袖から鎧が見える」というのは、私はてっきり「腹に一物をもっている」という意味合いなのかなと思っていました。ここで「一物」と言うと、あの神様にお願いする唄が思い出されますが、いや、ここでやめておきます。さすがに当館にもコンプライアンスというものが、はい。

■甲冑と映画の話
 これは別にディスるわけではないのですが、「ダースベイダーは、伊達政宗の甲冑」説と「上杉謙信の甲冑は、全身銀色の南蛮胴」説は、いずれも有名ではありますが、事実ではないという話です。
 これはあくまでネットによる確認情報なのですが、まずは、伊達政宗の甲冑の話から。スター・ウォーズの制作関係者から黒漆五枚胴具足を所蔵している仙台市博物館に写真の提供依頼があり、また、1997年に発行された"STAR WARS−THE MAGIC OF MYTH−"という本の188−189ページには、ダースベイダーと伊達政宗の黒漆五枚胴具足の兜部分の写真が並んで紹介されているとのこと。ここまでは事実です。しかし「ウキペディア」によると、「ルーカス博物館の館長のレイラ・フレンチによれば、ジョン・モロが役者をロンドンのコスチュームショップに連れて行き、そこで黒いオートバイ・スーツと黒いマントを見つけ、それに第一次世界大戦中のドイツ軍のガスマスクとナチスのフリッツヘルメット(シュタールヘルム)をモデルにしたヘルメットを追加したものであるという」、とのことです。
 次に上杉謙信の甲冑について。「Yahoo知恵袋」のベストアンサーには「上杉謙信が実際に着用した鎧は何点か現存していますが、その中には南蛮胴は一つもありません。日本での南蛮胴は、南蛮との交易が盛んになったことから見られるようになりますが、安土桃山以降です。また、記録上でも謙信に纏わる南蛮胴は存在しません。つまり、1570年代に死去した謙信が着た可能性はかなり低いでしょう。上杉謙信と南蛮胴との関係ですが、映画『天と地と』で上杉謙信は南蛮胴を使用していました。(中略)そして、大河ドラマ『風林火山』では、(南蛮胴を)上杉謙信を演じるGACKTさんが着るに至ったと推察します。」とのことでした。
 それにしても最上義光の甲冑は、映画でもTVドラマでも、ましてSFでも取り上げられるわけでもなく、某大河ドラマでは「関ケ原の戦い」に突入するも名前すら出てくる気配がなく、「どうする」以前の状況ではあります。しかしここは、これを改めていくべきではないかと思い、まずはドラマのタイトルを考えてみました。例えば、「それにしても義光」というのはどうでしょうか。やはり、いけませんかね。失礼しました。あと、「ヨシミツじゃないよ、ヨシアキだよ。」という番組名も考えましたが、あっ、許してください、ごめんなさい。

■ナレッジマネジメントの話
 学芸員さんの間で、刀剣や甲冑についての話をするとき、品物や資料の知見については多くを語らず、どこの誰が何を持っているという情報交換に熱が入ります。そしてそれは家族関係の話であったり健康状態の話であったり、言葉としては何なのですが、いわゆるナマモノの情報です。つまり、いつ出物がでるかと虎視眈々に、とまではいかないまでも、そんな情報のアップデートを図っているわけです。それは学芸員同士だけではなく、収蔵品の運搬を請け負う業者さんであったり、刀剣や甲冑を趣味としている方などにも探りが入ります。収蔵品の入手にあっては、単に金銭の勝負だけではなく、タイミングが重要であり、これまでの付き合いも当然大事になります。これが寄託や寄贈ということにでもつながれば、学芸員の面目躍如といったところでしょう。
 しかも刀剣や甲冑は、様々なレベルのマーケットが形成されていて、しかもそれは国外にも広がっていて、しかも外国のコレクターには結構な金持ちがいて、それが相場を引き上げる原因にもなっていたりして、こういうことからも、当館のような資金に乏しい弱小博物館では太刀打ちできないわけでして。やはりここは、普段からの不断の情報収集で勝負するしかありません。
 ただし、このような情報のほとんどは、個人レベルの暗黙知であり、これをどう形式知に変換して、作業の効率化や知識の共有を図るか、いわゆるナレッジマネジメントが組織の課題ではあるのですが、逆に学芸員の存在価値もそこにあるわけで、難しいところではあります。いくらDXだ、AIだ、と言ってみても、やはりナマモノの情報は、まずはマンツーマンが基本とは思いますが、最近はそれもSNSなどで知ることになる場合もありまして、悩ましいところではあります。そう言えば、かの長寿スパイ映画にもこんな組織課題を背景にした話がありましたが、映画と違いこちらには、カーアクションや爆破シーン、そしてお色気シーンというのもありません。