ぶっくぶくの部屋

ぶっくぶくの部屋
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プロ野球はセ・パともにクライマックスシリーズが始まり、
文字通りシーズンのクライマックスを迎えている。
が、しかし…
オレ自身の中ではなかなか盛り上がらない。
以前は、本当にテレビにかじりつかんばかりに観て、
終わってからもスポーツニュース観て、そして次の日には
スポーツ新聞を読んで、ってな具合だったんだがなあ〜。
今じゃ一般紙で結果を確認するだけ。
超人的なオーラを出すような選手も少ないし、意外性も
あまりないし、大贔屓のGも弱いし、なかなかヒートアップ
しない秋…。

File No.269
『前へ!』麻生 幾(新潮社 1500円)
オススメ度★★★★☆

副題が「東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録」。
自衛隊・消防隊・国土交通省東北地方整備局・警視庁機動隊・
災害派遣医療チーム(DMAT)などが、いかに災害現場で
戦ったかという記録である。
これを読むと、それぞれがまさに命がけの戦いを挑んでいた
ことがよくわかる。
われわれがテレビの前でうち震えている頃、彼らは人命救助や
復旧、二次災害の防止などに身命を賭していたのだ。
というか、今でもその戦いは続いている。
中でも、原発事故現場での自衛隊と消防隊の勇気と男気には
感動する。
余りにも高い放射線量のため、なかなか放水活動に入れない
消防隊に、現場にいない政治家がいら立ち解任しようとする。
しかし、現場隊長の自衛隊員はあえて消防隊を突入させる。
消防隊長は男涙でそれに応える。
そう、プライドとそれを支える勇気こそが男の男たる所以なのだ。

国土交通省東北地方整備局の徳山局長も男だ。
道が通じなければ救助隊や復旧部隊が被災地に入れない。
その重要性から、徳山局長は「啓開チーム」を編成し、
ガレキで埋まった道路を切り開き、落ちた橋を通し、ただ
ひたすらに道を通して行った。それも3日間と言う短さで。
人の命の灯が消えないうちにという思いがこれを可能にさせた。
この「啓開」作戦のお陰でどれだけ多くの人命を救うことができたか。

これだけの活躍が出来たのは、当時の国土交通大臣や防衛大臣などの
「親分」が、「子分」たちに対して全幅の信頼を置き、ほぼ全権を
委ね、その責任は自分がとる、という覚悟があったからだ。
もちろん現場の士気は上がる。
こういう「親分」をほんとうの「将器」というのではないだろうか。

義と愛は米沢だけの専売特許じゃなく、サムライの血をひく日本の
男たちに脈々と受け継がれている。


なんだこの小学校みたいなタイトルは?と思われる
だろうが、最近いやに気になって…。
それは街の自転車乗りのルール無視。
傘差し、携帯の「ながら自転車」、堂々たる右側通行、
後ろを確認もしない道路横断、メット&グローブなしの
ロードバイク等々目に余る、というか危なすぎる。
例えば、右側を平然と20km/h以上も飛ばしている高校生を
良く見かけるが、その危険性がわからないのだろうか!?
小路から車が出てくる場合、運転手の第一注意は歩行者と、左側通行の
車&自転車に対して働く。
右側通行してくる自転車などあまり想定していない。
であるから、そこで「悲劇」が起きてしまう危険性が高い、という
ことになる。
一番悲しい思い、痛い思いをするのは自分自身なのだから、
当たり前のことだけど、ルールは遵守することだ。
こんなことを言うオレだって、ルールはキチッと守って自転車に
乗っているが、いつどこで危険な目に遭うかわかったもんじゃない。
市街地に快適な自転車専用道でも出来ないもんかねえ〜。
何せここ米沢は、昔から名にし負う「銀輪都市」なのだから。

File No.268
『宇宙は本当にひとつなのか』村山 斉(講談社BLUEBACKS 820円)
オススメ度★★★☆☆

最近巷で話題になってる本なので買ってみた。
著名な宇宙物理学者である松井孝典の著作をいろいろ読んでいた時も
あったせいか、宇宙論にはすごく興味があって…。
読んでみて、はたまたびっくらこいた。
宇宙全体で、星や銀河などいわゆる原子で出来ている物質はわずか5%
にも満たなくて、残りは約23%の暗黒物質と、約73%の暗黒エネルギー
から構成されているのだそうだ。
とは言っても、この暗黒物質と暗黒エネルギーの正体の何たるかが
わかっていない。現代科学に残された最大のナゾでもある。
でも、現代の科学者たちは、一歩一歩そのナゾの正体に近づきつつ
あるようだ。
暗黒物質の現在の第一候補は「弱虫くん」(WINP)。
「ほとんど反応しない重い素粒子」の英名頭文字の略。

もうひとつ。
よく言われていることだけど、宇宙は今でも膨張し続けているということ。
しかも、最近になって、その膨張スピードが加速しているらしいことが
わかってきた。
もしこのまま膨張スピードがあがっていくと、宇宙はどうなってしまうのか?
「最終的には宇宙は引き裂かれてしまいます」

さらにびっくらこいたのは、この本のタイトルにもなっている「多元宇宙」
のこと。
つまり、宇宙はひとつだけでなく、いくつもの宇宙が存在するのではないか
と主張する科学者が出てきている。
「多次元」の世界と言い、この多元宇宙と言い、ちょっと想像の域を
越えてしまう。
これらを、理論で証明しようとする物理学者や、高度な方程式で解明
しようとする数学者の頭の構造も、凡人のオレには想像の外だ。

最後の方で言及している「人間原理」は、何かとてつもない深淵を
のぞき見るような感じになる。
宇宙の物理法則は、人間が出現するための条件がそろいすぎている、
つまり「うまくできすぎている」というのだ。
暗黒物質があるお陰で星や銀河が生まれ、量子力学の法則があるお陰で
原子が潰れず人間が存在できる。空間が三次元であるお陰で太陽系が
存在し、DNAの二重らせん構造が存在する。
ここまでくると、科学の領域なのか、哲学の世界なのか、はたまた
天の配剤、いわゆる神の世界なのかよくわからなくなるなあ〜。

それにしても、この間のiPS細胞と言い、今回の多元宇宙論と言い、
とてつもない知力がそのナゾに挑みかかっている一端を知るとともに、
ミクロの世界も、マクロの世界も、まだまだわからないことだらけだなあ、
とつくづく思ってしまう。


ひょんなことからオレの部屋にテレビを入れることになった。
テレビなんて殆ど見ないから、なければないで別にいいのだが…。
テレビの置く場所確保や配線、初期設定などなどがあり、
メカ音痴で、超のつく面倒くさがり屋のオレにはかなり難行苦行。
テレビを置く棚の位置をずらそうとすると、スパナがない。
自転車でスパナを買いに行って、やっとこさ棚が出来たとこで
すでに3時間経過。
次にテレビの台(足を)を付けようとしたら、ネジをへんな穴に
突っ込んじまって悪戦苦闘。大汗だくだく。
ど〜れアンテナ配線をという段になって、今度はコードがない。
もうここで気持ちがプツン。
家族は「やっぱりムリだったなあ」みたいな顔してるし。
常套手段のフテ寝を少し思いとどまってメカニックディレクターに
SOS。ようやく事なきを得た時はすでに夜。
確か始めたのは昼過ぎごろ?
「ものぐさ太郎」本領発揮の日曜日半日ツブシの愚行…嗚呼。

File No.267
『漂砂のうたう』木内 昇(集英社 1700円)
オススメ度★★★☆☆

昨年度下期の直木賞受賞作品。
前から読んでみたいと思っていた本のひとつ。
時は明治の初め。
場所は東京・根津の遊郭「美仙楼」。
主人公は、ここ美仙楼の「立番」(客引き兼受付のようなものか?)を
勤める定九郎。
定九郎はもともと徳川の御家人を勤める家柄の次男坊。
レッキとした武士であった。
それが明治の世になって零落し、遊郭の立番を勤める日々を虚無的に
送っている。
世の中は大きく変わっても、武士であった自分は変われないと
思い込んでいたが、実は漂砂のごとくサラサラと流されているのだ、
というのが表題にもなっているこの本の主題。
物語は、美仙楼きっての売れっ妓「小野菊」をめぐって展開していく。
遊郭の独特の風習や風俗などを詳細に描写しながら、「廓」の
雰囲気を醸し出して行く。
妓たちの希望と絶望を織り交ぜながら。
この手腕はスゴイ。
さすが直木賞をとるだけの作品だ。
読み始めると、数分で自分も明治初期の根津遊郭にタイムスリップ
したような感じになる。
時代小説の出来不出来のひとつは、読者をその時代のその場所に
誘う力と技にある、とオレは思う。
この連休の走行距離目標は100km。
初日はあっちこっち寄り道してしまったものの約35km。
目標の3分の1だからまずまず。
2日目は用事があった上に、渋滞イライラでフテ寝して
しまい記録ゼロ。
これが痛かった。
最終日もいろいろと用事はあったものの、朝靄けぶる中を
早目のスタート。
15kmほど走ったところで1回目の休憩で一服。
したっけ、昔の級友にバッタリ。
オレとしたことが、自転車のウンチクなんぞをヘラヘラ
しゃべっちまった。
するとかの級友氏いわく
「でもオマエ、ずいぶん熱心なわりには身体に効果出て
ないなあ〜」
とぬかしやがった!
グサリとハートを射抜かれたオレは、少々気落ちしながらも
さらに走ったんだけど、何だかモチベーション下がっちまって、
プラス20kmですごすご帰還。
3日間(いや正確には2日間)の合計は約70km。
目標にゼンゼン及ばなかった。
行く秋や 鳥啼き 魚の目に涙
芭蕉の句が身に滲みる
(追加注:正しくは「行く春や 鳥啼き 魚の目に泪」)

File No.266
『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房 1143円)
オススメ度★☆☆☆☆

この本、どこの書店やネット販売でもベストセラーになっている。
続編も合わせると300万部を超えると言うから、慢性的な
出版不況のなかではスゴイ売れ行きだ。
とは言っても、買うつもりはサラサラなかった。
ある本を買うためにネットで注文していたら、もう1000円以上
買うと割引になるシステムがあって…、ままよって感じで
クリックしちまった。
であるからして、本が届いてもほっぽリぱなし。
そのうちオレの部屋からなくなったのにも気付かなかった。
そう、またまた家人が勝手に持って行ったのよ。
そのうち、今までには考えられないようなメニューが食卓に
並び始めた。コレナンデスカ?と目で質問するのだが、
「これからはヘルシーメニューでいきますから」とすまし顔。
それから数日後の深夜、本をとっかばえして隠した。
結構きつく追及されたものの、犯人は口を割らず。
(もともとオレが買ったもんじゃん)と心の中で毒づいて…。
かくして、我が家の食卓に平和が戻ってきた、ようだ。

というわけで、この本はなかなか面白そうだが、オレ的には
★ひとつ。
塩分控えめ、油分控えめ、炭水化物控えめ、野菜多く、
総カロリー抑制云々…、ああ〜、もう聞き飽きた。
お医者さんにも、保健師さんにも、周りのいろんな人にも、
いつもいつも言われていること。
それに、この本のメニューをみると、肉といえば豚肉少々で、
あとは鶏肉ばかり。まるでチキンチキンのチキン行列みたいじゃ
ないか。
オレあんまり鶏肉好きじゃないのよねえ。
食べられないワケじゃないけど、進んで食べようとは思わない。

かく言うオレだって、以前は味噌汁を3日に1回にしたり、
ラーメンのスープは3口までにしたり、天ぷらの衣をはずしたり、
塩分や油分の摂取に気を付けていた。
しかし、あることがキッカケで、そのタガがすべて外れてしまった。
それは、ある人と朝めしを食べてた時、
「塩ジャケは口が曲がるほどしょっぱくなくちゃなあ。減塩した
シャケ食べてもさっぱりウマくない。天ぷらの衣はずしたり、
トンカツの衣はずしたりする奴なんかサイテー。自分が美味しい
と思うものを楽しく食べることがハッピーなんだ」
そのとおり!と思ったオレはその日から呪縛を自ら解き放った。
爾来、二人ともメタボに拍車。その人は糖尿に悩まされ、
オレは○○と○○に悩まされ…。当然と言えばトーゼンの帰結。

誤解のないように言っておくが、この本は確かに面白い。
視点もいいし、写真や編集のセンスも良く、ベストセラーになる
のも良くわかる。
でもねえ、
「美味しく食べていたら知らないうちにやせた、そんな楽しい
減量メニューを目指しています」というタニタ食堂担当にして
栄養士の荻野菜々子さんの言葉が素直に耳に入ってこないんだよなあ。
それは、オレがそんぴんのきかず坊主だからだね、きっと。
この本、台所にそっと返しておこうっと。

世の中は秋の三連休。
明日は一部天気が崩れるようだが、まずは絶好の行楽日和
といったところだ。
オレもちょいと用事があって高速道路にのったら、混むわ
混むわ。とくにインター出口は長蛇の列。
SAやドライブイン、観光施設もメチャ混み。
混むのが好きな人はいないだろうが、オレはとくにダメ。
イライラが高じて、何だか頭まで痛くなってきた。
で、ついに目的地キャンセル、途中でUターン、帰宅して
フテ寝と相成った。
まあ、こんなこと一度や二度ではないので、家人も
「ああ、またか」ってなもんで平気の平左。
いくつになっても「待つ」ことを知らないねぇ、オレも。

File No.265
『田中角栄の恋文』(文芸春秋2011年11月号 820円)
オススメ度★★★☆☆

「田中角栄」という名前を知らない人はあまりいないだろう。
いや、平成生まれがもう二十歳を超えているくらいだから、
名前は知っていても、全盛期の彼をリアルに知っている人が
少なくなってきてるのかも知れない。

新潟県出身。高等小学校卒ながら日本の頂点にまで上り詰めた男。
第64代内閣総理大臣に就任したのが昭和47年。
オレが中学の頃。ちょうど政治にも興味がわき出してくる年頃
だったので、福田赳夫との首班指名争いを、少し高揚した気分で
見ていたような記憶がある。
戦後の首相の中で、彼ほど功罪の振幅が大きい人はいないのではないか。
功は何と言っても日中国交正常化。
罪はロッキード事件での収賄。
功罪相半ばするのが日本列島改造論。
彼の強烈な個性と、コンピュータ付ブルドーザーとあだ名される知識と
行動力、ギラギラした欲望とそれを叶えようとするエネルギッシュは
多くの人を惹きつけた。
田中角栄は結局悪いことをしたけれど、人間として嫌いじゃない、という
人は結構多いと思う。
この人間が持つ強力な磁場のせいである。
田中角栄凋落の端緒となった「田中角栄研究」を著した立花隆も、
彼の罪悪を糾弾しつつも、どこかで田中角栄にシンパシーのようなものを
感じてるフシがある。

昨日発売になった文芸春秋の巻頭に、在りし日の田中角栄が、愛人にして
金庫番でもあった佐藤昭子とその娘・あつ子にあてた直筆の手紙が
公開されている。
まさに、本邦初。
佐藤昭子がいたから、田中角栄も人身位を極めることができたと言われる
ほど、彼女の存在は大きかった。
しかし、正妻の座には座れず、田中との間に生まれた娘も認知されず、
ひたすら金銭という裏で田中を支えることに徹した女…。
見るからに気が強そうだ。
プライベートでは、田中は佐藤から相当厳しいことを言われていたようだ。
それに理解を示したり、なだめたり、すかしたり、おだてたりする
田中のラブレターが、すごく人間臭くていい。
普段は威張り散らしていても、惚れた女にゃ弱いのだ。

な〜んだ、田中角栄もフツーの男だったんだなあ、とはオレは思わない。
これほどまでに愛人に心と身を寄せようとする男。
日本一多忙な身ながら、本宅と他の妾宅を駆け回り、いずれにもあふれん
ばかりの愛情を尽くす男。
愛人との間に出来た娘に盲目的とも言える愛情を注ぐ男。
こんなに筆まめな男。
女の前で心を裸に出来る男。
てらいなく愛情を表現する稚気。
こんなはかりしれないスケールの男そうザラにいるもんじゃない。

庶民から天下人に上り詰め、思いのたけ権勢をふるい、世の中を変える
ような仕事をし、正妻を信頼しながらも、側室を愛しみ、一粒種の
息子を盲目的に愛し、いまわの際でも息子の後援を必死に懇願する男、
豊臣秀吉とますます重なって見えてくる。
田中角栄が「今太閤」とあだ名された所以でもあるが…。
田中角栄ってやっぱり豊臣秀吉の生まれ変わりなのかもなあ。

遠方に住む友人からメールが入った。
「9月28日付の朝日新聞みたか?」というもの。
どれどれと探して紙面を繰ってみたら、ああこれか。
「リレーおぴにおん 物欲は世界を救う」という連載物。
自転車乗りのスタイルでタレントの絹代さん(オレは知らんが)
が載っている。
「…スポーツ自転車は、体を劇的に変えてくれます。太ももの
裏側など落としにくい所の脂肪が落ちるし、リバウンドもありません。
後ろ姿から変わってきますよ」だど。
件の旧友は「で、オマエは変わった?」ときたもんだ。
おうおう、悪かったねえ、何も変わらんわ。
タレントが好感狙いでキレイ事言うのと現実は違うのさ!と
旧友の冷やかしに居直り対抗策に出たオレ。
でもこのエッセイ、読み進めていくと、
「旅先で走っていると周囲の景色全体の中にどぼーんと入って
いく感じ。車やバスでは決して味わえない『空気感』を
感じられるのは、最高のぜいたくです」と書いている。
ほう、わかってんじゃんか。
どーれ、明日は天気良さそうだなあ。

File No.264
『星の衣』高橋 治(講談社 2000円)
オススメ度★★★☆☆

この間読んだ高橋治の『風の盆恋歌』がなかなか良かったんで、
もう一丁と思い、吉川英治文学賞も受賞した代表作のひとつで
あるこの本を図書館から借りてきた。
単行本で600頁近くもある長編で、読むのに1週間もかかった。
もっとも、毎晩酔眼を凝らしながらだから…。

舞台は日本に復帰して間もない頃の沖縄。
コザ(現・沖縄市)のエイサー祭りの場面から物語は始まる。
前回の風の盆と言い、今回のエイサーと言い、著者はまつり
好きなのかも知れない。
エイサーはオレも10年ほど前に観たことがある。
南国の情緒と熱気たっぷりの感動的なまつりだ。
この沖縄で、尚子と汀子という二人の女性が、沖縄の伝統の
織物とあわせ、人生を織りなしていく物語。
尚子は内地の男に裏切られ、沖縄に戻り、八重山上布という
伝統の織物の世界へとハマっていく。
汀子は大学教授の夫に先立たれた後、首里織の世界へ。
それぞれが、多くのウチナンチュの暖かい支えと厳しい激励を
受けながら、傷を癒し、それぞれの道を極めていく。
全編を通じて、織物と沖縄の風景の描写が美しい。

尚子が男に捨てられて負った傷は、陶芸作家の栗原によって
癒される。
「年をとるってことはな、あの時に、また別なあの時にと、
いろんな自分の生き方があったんじゃないか、良いこと
悪いこと、総て同じだが、そう思わされながら、そのどれも
二度と手にすることが出来ない…そういったことの積み重ね
なんだ」
こういうことにシミジミ感じ入ってしまう。
なんだそれ?と思う人はまだ読まない方がいいかも。

尚子と汀子はそれぞれの道を歩むのだが、やがて二人は
劇的に出会うことになる。その後段はなかなか感動的だ。
そして、そこまできてやっと、そうか、これは過去から
ずっと蓄積されてきた沖縄の想いと、本土復帰してこれからの
沖縄のアイデンティティを問う物語なんだと気付かされた。
題名になった「星の衣」とは、沖縄の伝統的意匠のひとつが
星の柄であることからきている。
明けの明星と宵の明星、自分の人生にとっての二つの星でもある
二人の男への想いを心の襞に折り込みながら女は糸を紡いでいく。

ここ米沢も織物の産地。斯業界に関係する人たちにはぜひ読んで
いただきたい秀作でもある。
高橋治、なかなかいいなあ。もう一丁いってみっか!

この土日はそれぞれいい話を聴いた。
土曜日は、3月の大震災・大津波発生以来、ずっと被災地に
あって被災弱者の救援・支援・地域復興に身体を張ってきた
方の話。
リアルな悲惨・悲哀がいっぱいだけど、人々の力強い営み、
東北人の忍耐強さ、胸が熱くなるようなエピソードの数々で
みんな時の経つのを忘れてしまった…。
当たり前だけど、「現実・真実は現場にあり!」なんだなあ。
日曜日は、北寺町・東源寺の五百羅漢供養。
この羅漢堂の中の中央に「破杓」という扁額がある。
確か、「ハシャク」と読む。
ご住職様からこの「破杓」についての法話があった。
「破杓」とは、柄杓(ヒシャク)の底が破れて抜けていること。
人は日々の生活を送っているうちに、いろいろな心配事や心に
ひっかかること、ストレス、消えない過去などを知らず知らず
澱のように柄杓に溜めている。これをたまには柄杓の底を
抜いてスッキリと落としてしまえ、という教えが込められて
いるそうだ。
久々に『大言海』や『国語大辞典』を引っ張り出してきて
調べてみたが、いずれにも出ていない。
今日聴かなきゃ一生知らないままだったかも知れない。
やはり、人の話は心を砂地のようにして聴いてみるもんだ。

File No.263
『原発のウソ』小出 裕章(扶桑社新書 740円)
オススメ度★★★☆☆

少し前の雑誌の書評欄にこの本が載っていたので、なにかの
ついでに買ってみた。
いやはや、これは少し深刻なことが書いているなあ。
今までよくわからなかったことも、この本で少しわかってきた。
まず、なぜある線量以上の放射線に被曝すると致命傷になって
しまうのか。
これを、10数年前に東海村・核燃料加工工場(JCO)で
起きた臨界事故を例にとって説明している。
亡くなったお二人の被曝量は18シーベルトと10シーベルト。
4シーベルトが半致死量で、8シーベルトになるとほぼ絶望的。
最初の見た目はヤケドのようだったが、それがだんだん酷くなって…。
つまり、放射線に被曝すると細胞の再生機能がやられるのだそうだ。
それは皮膚だけでなく、肉も骨も内臓も。
筆舌に尽くしがたい断末魔の苦しみだったと言う。

また、放射線被曝を受けた場合の年齢別危険性では、やはり
10歳以下の子供が高いようだ。これが、15歳ぐらいになると
半分ぐらいになり、50歳を過ぎると劇的に低下する。
少しでも汚染された食品を市場から徹底的に駆逐してしまうと
食糧難や農業の壊滅を招くことになる。
だけど、放射線レベルが低いから安全ということでもないらしい。
そこで著者が提案しているのは、
「大人や高齢者が汚染された食品を積極的に引き受ける」
ことによって子供たちを守らなければならないと。
少し大胆な提案ではあるが、中高齢者はそのぐらいの気持ちで
この難局にあたっていかなければならないということだろう。

さらに、原発の海洋への影響も指摘している。
日本の国土に1年間に降る雨の量は約6500億トン。
そのうち川を流れる量は約4000億トン。
原発からは平均7度も水温が高い水が海に放流されていて、
その量なんと約1000億トン。
ここを読んでいて驚いてしまった。

高速増殖炉「もんじゅ」で福島原発のような事故が起きたら
まさに「破局」という話も身ぶるいしてしまう恐ろしさだ。

この本の著者は、原発や放射能の危険性ばかりを強調して
不安をあおっているのか?
いいや、最後にこう締めくくっている。
「もし、安全な地球環境を子どもや孫に引き渡したいのであれば、
その道はただ一つ。『知足』しかありません。…世界全体が持続的に
平和に暮らす道がそれしかないとすれば、私たちが人類としての
新たな叡智を手に入れる以外にありません」
徒に怖れすぎたり、よくわかりもしないのに不安を煽ったりすることは
厳に慎みたいものだが、
足るを知ること。
これは、オレにとっても肝に銘ずべき課題だ。
旧友が訪ねてきた。
もちろん仕事の用事で来たのだが、話は自然に
昔のことに及んでしまう。
ある時期、同じ武道で寝食を共にした間柄なので、
お互いに性格も頭の出来も恥ずかしいことも知り尽くして
いるから、懐かしいというより、まるで裸で姿見を見るようで
ちょっと気恥ずかしさがよぎる。
よくもあんな無茶したもんだ、との冷や汗ものの思い出にも
苛まされる。(出来れば思い出したくない!)
「友遠方より来たりて、亦楽しからずや」というよりは、
「友遠方より来たりて、互いに恥ずかしからずや」かも。
そういうことって、身に覚えあんべ?

File No.262
『経営はロマンだ!』小倉昌男(日経ビジネス人文庫 600円)
オススメ度★★★★☆

前にも書いたかも知れないが、成功した経営者の自伝や評伝という
類の本をオレは余り好まない。
確かに立志伝中の素晴らしい人たちなのだが、後付け・きれいごと・
自画自賛・結果論というイメージを拭いきれない。
まあ、生来の「そんぴん」「天の邪鬼」精神のなせる偏見であろう。
そんなことグチャグチャ言っとらんで、読まなきゃいいだけだろう!?
そのとおり!
でも、オレにも例外がひとつふたつあって。
そのひとつがこの小倉昌男。
ご存じ、クロネコヤマトの宅急便でお馴染のヤマト運輸の二代目社長・
会長にしてヤマト福祉財団の理事長。
会ったことも見たことも声をきいたこともないが、最も尊敬に値する
経営者の一人として今でも崇めている。
なぜか?
ひとつは、「宅急便」という一大イノベーションを成し遂げた男で
あること。(経営者は仕事の結果が第一)
ふたつめは、筋を通す男であること。それがために、お上(行政)
を相手取り、大ゲンカをふっかけたりもした。筋を通すためには
軋轢やケンカなど屁とも思わない剛直さがスバラシイ。
そしてみっつめが、慈愛の心。
小倉昌男は後年、保有していたヤマト運輸の株の殆どをヤマト福祉
財団に投じた。金を出したばかりでなく、自分自身が培ってきた経営
ノウハウを障害者のノーマライゼーションのために惜しみなく注ぎ
込んだのだ。
つまり、自分が会社経営に成功して得た財と、経営者としての経験・
知識・ネットワークなどのソフトをすべて社会のために還元して
のである。
こんな生き方、誰にもマネできない。

なんだ、これだって結果良しの成功譚じゃないか、と思われるかも
知れない。でもオレにはそうばかりには思えないものがある。
うまく表現できないが、顔をみれば何となくわかるような気がする。
筋を通す剛直さと深い慈愛、これが小倉昌男の顔(写真)には
にじみ出ているようにオレには感じられる。
ある程度の歳を重ねると、性格や気持ち、心根が顔や全体の雰囲気・
匂い(加齢臭じゃない)などに出る、と思う。
だから、心の底からまっとうで、深い「愛」を根付かせていないと
「いい顔」にはなれない。
オレはもう遅きに失しているかなあ。心根はやましくないと自分では
思っているんだけど、「愛」が足りないんかなあ。

で、この本は、日経の人気連載シリーズ「私の履歴書」を加筆編集
したもので、小倉昌男の生い立ちから晩年までの足跡をみずから
語っている。
不治の病からの生還や恋愛、「宅急便」創成の頃の苦労、顧客である
三越との決別、旧運輸省や旧郵政省との闘い、組合との闘いと協調、
福祉への道などが等身大で綴られていて興味が尽きない。

ぜひとも話を聞いてみたい、できれば謦咳に接したいと思っていたのだが、
すでに鬼籍に入られてしまっている。
せめて本からでも、啓発を受けたいものだ。
「やれば分かる。やらなければ分からない。失敗したらやり直せばいい」
噛みしめたい言葉だ。

日本の中で好きな街は?と問われたらどこを挙げるだろうか。
もちろん、自分が住んでる街や生まれ故郷を除いての話。
こんな話をしながら酒を飲むのも秋の夜長の一興かもしれない。
で、オレの場合は、いろいろ思い出しながら考えるけど、まずは
この三つは必ず挙げるだろう。
備中高梁(岡山県)
豊後竹田(大分県)
越中八尾(富山県)
それぞれ行ったことがある人も多いだろうから、詳しい解説は
無粋かも知れない。
今夏も越中八尾にちょいとばかり行ってきた。
都合3回目になるが、何回行っても心にシックリくる街だ。
「おわら風の盆」を何とか数年のうちに観てみたくて、その
段取りのとっかかりをつくろうと思って出掛けたのだが…、
それは意外な線から実現に向かいそうだ。
やっぱり、人とは交わってみるもの、話してみるもの、だ。
ここ数年のうちには報告できるかもよ〜。

File No.261
『風の盆恋歌』高橋 治(新潮文庫 438円)
オススメ度★★★★☆

「風の盆」に行きたくて行きたくている時に、古本屋でこの本を
偶然にも見つけ、即購入、即読み。
なんだか、ド演歌調の恋愛小説かなあ、と思っていたら、
どうして、どうして。
文体も洗練されているし、今風の小説みたいに説明し過ぎて野暮ったく
なるようなところがないし、ストーリー展開もドラマティックで
なかなかの好作品だ。
何よりも、坂と水音の街・越中八尾の街の描写が情緒的でいい。
そして、普通の盆踊りとは趣きを異にする、胡弓の音が何となく
物悲しくて幻想的な踊りをうまく表現している。
ここで知ったのだが、「風の盆」とは二百十日に風害除けをする
ことから始まったらしい。

主人公の都築とえり子の物語は金沢からはじまって、八尾をかすめ、
フランスのノルマンディへと飛ぶ。
そして、20年以上もの空白の時を越えて、再び八尾で再会する。
二人の旅路は危うく、常に死の影がちらついている。
いわゆる「道行き」のような趣き。
その結末は、やはり…。
「風の盆」の胡弓の音色のように、哀しい物語でもある。

この本を読んだら、また無性に八尾に行ってみたくなった。
どこかに都築のような男と、えり子のような女がいて、
あのゆるやかな石畳の坂道の街に、二人がほんのひと時だけを
過ごしたしもた屋のような家があるような気がしてくる。

そもそも恋愛小説を読むようなガラじゃないし、あまり好きでも
ないのだが、大人ゆえの哀しみが滲むような物語だったら
読む価値あるよなあ〜。
これがいいと思える人、もしくは、わかるなあと感じる人はオトナ。
いいと思えない人、わからない人はまだガキ、かな。
な〜んてエラそうに言ってるオレも、昨日は老母に、
「50なんてまだまだ洟垂れ小僧だっ!」
と一喝されて、言葉では反論したけど、その実、内心は
かなり応えてたりして…。
んじゃまあ、70歳ぐらいになったら告白してみっかな。
それも、単なるキモいエロジジとしかみられないだろうなあ〜、
ああ哀しっ!

絶好の秋晴れの下、久々に愛輪VB�気魘遒辰道堝發鉾瑤喀个靴拭�
今日は、市内のあちこちでやってる「まつり」を自転車で廻り
ながら視察見聞。
あっちでもこっちでもいっぱい出てるなあ人が。
仕事柄、まつりを主催・運営しているスタッフの人たちの
ご苦労ぶりに真っ先に気が行ってしまう。
でも、この秋晴れと、多くのお客さんとその笑顔に恵まれ、
スタッフの方々のご苦労も報われたのではないかと思う。
個人的に気になったのは、「ホビーフェア」。
何でも今回が初の開催だとか。
会場に入ってみると、インドアありアウトドアありで、なかなか
楽しいフンイキ。
会場中央にはテントとタープが張ってあって、そこにはなんと
旧友の某君がいるではないか!
仮設タープの中でしばし話し込んでいると、彼のアウトドアライフ
がちょっと羨ましくなってきた。
彼もオレと同じサラリーマン、しかも同い歳。
仕事の合間をぬってアウトドアライフをエンジョイしている由。
今では彼とキャンプしたい人が全国から集まってくるとか。
趣味もここまでくれば「達人」の域。
「こんど一緒にキャンプすっぺ」
「おう、いいなあ」
とは言ったものの、ずいぶん前にオレもこの世界に入りかけた
時があったのだが、生来の「ものぐさ」がその先の行く手を阻んで
しまった経験があって…。
うむ〜、何でもやってみる精神を発揮せねばならぬか!
と思いつつ一旦帰宅したら具合がイマイチ。
そうだ、風邪ぬけてないんだったわ、ふう〜。

File No.260
『生命の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命』
NHKスペシャル取材班 編著(文芸春秋 1429円)
オススメ度★★★★☆

少し前にiPS細胞の本を読んで、面白かったんだけど少し食い足りない
気がして、本屋で探してこの本を買ってきた。
大正解!
今、iPS細胞についてひと通りのことを知りたいと思ったら、この本に
限る。(とは言っても、何十冊も読んだわけではないが…)
それにしても、昨年の9月に放送されたというNHKスペッシャル、
なんで見れなかったのか、かえすがえすも残念でならない。

この本は、iPS細胞の発見と世界の研究の最前線、臨床・創薬応用への道、
倫理問題、超複雑系の細胞の世界、日本の研究体制などの内容から構成
され、それぞれ複数のスタッフがチームをつくって取材しまとめている。
そして、巻末には、山中伸弥と立花隆、国谷裕子(クローズアップ現代
キャスター)の鼎談が収録されている。

オレが最も興味深かったのは、「第4章 iPS細胞で深まる生命の謎」。
この章は、ちょっとした推理小説より面白くてゾクゾクする。
iPS細胞は、山中ファクターと呼ばれる四つの遺伝子から作られる。
iPS細胞成立までには、四つの遺伝子そのものではなく、四つの遺伝子
が関わっている何らかの「別の仕組み」に初期化の役割があるのでは
ないかと考えられはじめているそうだ。
そして、遺伝子そのものは書き換えないが、その働きを内在的・後天的
な方法でON・OFFする機構を「エピジェネティクス」と言って、
近年最も注目を集めている細胞内部のメカニズムのようだ。
先に読んだ本で指摘されていたガン化のリスクも抑制・回避の
研究が相当進んでいるらしい。
なんと言っても、たったひとつの受精卵が、分化に分化を重ね、最終的
には60兆もの細胞になるのである。
そのメカニズムはわからないことだらけ、まさに神秘の森である。

後半の鼎談の中にも、すごく気になることがいくつも出てくる。
ひとつがNKT細胞、いわゆるナチュラルキラーT細胞と呼ばれる
もので、がんのような異常な細胞を攻撃する免疫機能のひとつ。
このNKT細胞を増やして、つまり免疫力を強化してがんを克服
するという新たな治療がiPS細胞によって、非常に臨床に近くなって
いるそうだ。これは、すごい朗報じゃないか!
もうひとつは、細胞の中で進化の過程で潜在してしまった再生能力
があるのではないかということ。
つまり、足や手を切断しても生えてくる能力があるのではないかと。
ええっ、ウッソー、と思うかも知れないが、これは天下の山中伸弥と
立花隆が真剣に語っていることだ。
「…わざわざ細胞を取り出さなくても、切れた足がまた生えてきたり
ということがいつかおきるんじゃないかな、と本当に思います」
だど。すごいよなあ〜、人間の生命のメカニズムって。
一体誰が考えたんだろう。
そういうオレたちって、一体どこから来たんだろうって思うよなあ〜。

この山中伸弥率いる京都大学iPS細胞研究所(CiRA)とオール
ジャパンチームが世界のトップを走り続けることを祈りたい。
山中のモットーである、研究の成果をいち早くベッドサイドに届ける、
そのために特許などの知財を押さえる、そして、世界のトップクラス
ではなく、最高峰の研究所になる、という心意気がいいじゃないか!

蛇足ながら、そんなに時間と金をかけずにiPS細胞について知りたい、
という「虎の巻」ご希望の向きには、日本経済新聞2011年9月20日付
の特集面をご覧になられたい。1面にコンパクトにまとめているので
10分でおおよそのことがわかるよ。





今年の秋はなかなかに忙しい。
もともと公私ともにイベントが多い季節であることに加え、
大震災の影響で春のイベントが秋になったりして、ほとんど
毎週末と言っていいほど、なんやかんやあるなあ。
朝晩も急に秋らしくなってきて、世の中はいよいよ行楽シーズン。
春先に心身ともに沈んでしまった分を取り返そうとするかのように、
動く、騒ぐ。
消費支出が増えて、たいへん良いことだ。
でも、オレにとっちゃあ、行楽の秋ならぬ「乞う楽」の秋だなあ。
楽しみしていたツールドラフランスも応募者多数で締め切って
しまってエントリーできなかったし…。
なんか楽しみつくらなきゃなあ〜。

File No.259
『ふるさとの生活』宮本常一(講談社学術文庫 880円)
オススメ度★★★☆☆

自分たちの生活の習俗・風俗(ヘンな意味じゃなくて)・慣習などの
ルーツや変遷、町や村の成り立ち、さらには、祭りの成り立ちなどを
知りたいと思ったことはないだろうか?
そんな年寄りっぽい、と思われるかも知れないが、オレは20歳に
なる前からそういうことに興味があって。
そういうことを調査研究する学問が「民俗学」であるということを
後から知った。
そして、わが国の民俗学界には、柳田国男と折口信夫という二大巨人
がいることも。
その二人とはまた別に、日本列島をくまなく歩き回り、各地に残る
伝承や口伝などを調べ、膨大な著作を残した「歩く巨人」宮本常一
がいたことは、もっと後になって知った。
この本は、日本古来の村がどのようにして出来て、そこの住人が
どのように暮らし、今の現代へとどのような変遷をたどってきたかに
ついて、きわめて平易に説いている。
いわば、若年層向けの「民俗学へのいざない」という趣き。

第1章の「ほろびた村」では、奈良県の十津川村が出てくる。
そう、この間の大雨で大きな被害がでたところである。
実は、この十津川では、明治22年にも大水があって、いたる
ところで山崩れが起き、約600戸ほどが北海道に移住し、
それが今の北海道新十津川町になったそうだ。
また、津波で亡んでは再興を繰り返してきた三陸のことも
ふれている。
そういう天変地異に翻弄されてきた痕跡を訪ね歩きながら
考察する宮本常一の眼差しは、人間の営みに対する深い
慈愛を湛えている。
「…新しく土地をひらいて住みついてゆくときには、人はみな、
自分のいちばん困った時のことを考えて、そのときをきりぬける
ことに重点をおいて村をつくったようです。…なんとかして
世の中を住みよくしようとする努力は生きとし生けるものの
なかにあったといってもいいと思います」
宮本民俗学が、学問のための学問ではなく、人生をより良く
生きるための学問であることの証のような言葉でもある。

文字に書かれたものだけが歴史ではない。
書き文字を持たなかった、いわば「無字文化」を口承や口伝、
痕跡などをたどりながら解き明かしていく庶民の生活・文化は
すごくリアリティがある。
気の遠くなるほど膨大なフィールドワークの積み重ねが、
やがて宮本常一の代表的著作『忘れられた日本人』につながっていく。

一度入ってしまったら、その面白さの虜になってしまうような
宮本民俗学ワールドの、門の前で「おいで、おいで」をしている
ような本でもある。
オレ自身、そんなに深く入ったわけではないが、年とって
「毎日が日曜日」みたいな時がきたら、1〜2年ぐらいずっと
宮本常一の世界にひたっていたいもんだと思う。
その時までボケないようにしなきゃなあ。

夏から今頃までの季節にかけて、我が家の台所のマドに
いつも「ぴょん太」が張り付いている。
こんな小さなカエルが地表から3mはあるマドに登ってきて、
明るさに誘われて来る小虫たちを待ち伏せしてるのだ。
小動物好きのオレとしては、毎年やってくるこのぴょん太が
愛おしくてたまらない。
マドの閉め方が甘い時などは、台所のシンクにちょこんといたりする。
家人や老母が見つけた日にゃ、断末魔の叫び声が近所中にこだまする。
オレは平然と優しく両手で包み込み、庭の茂みに戻してやる。
本当は飼いたいのよお。
一度冗談めかして家人に言ってみたら、
「冗談じゃないわよっ!」と一喝。
そりゃそうだろうな、男子の興味関心事なんて女子にわかるわきゃねえ。
しょせん違う生き物なんだ、きっと。
本当は、カメを飼いたいんだよなあ〜。
少年の頃からカメには逃げられっぱなし。
すげえ夜行性なんだよなあ、カメ吉は。

File No.258
『忘れないあのこと、戦争』早乙女勝元選(文芸社文庫 600円)
オススメ度★★★★☆

先の終戦から66年が経った。
戦争体験者の多くが既に鬼籍に入られ、記憶の風化が始まっている。
絶対忘れてはならない、と言いつつも、世代が変わると記憶が薄れて
しまう。
それはそれで致し方のないことではあるが、せめて「伝え語り」を
聞き、それをまた後世に語り継いでいかねばならないのでは、という
思いが近年とくに強くなってきて…。
そんな思いもあってこの本を手にとったのだが、涙なくして読めないものや、
こんなことがあったのか、という驚きがちりばめられていた。

そう、これは、戦争体験の選集である。
一般から募集して、なんと1559編の応募があったと言う。
その中から42編を厳選して収録したのがこの本。

東京大空襲、広島・長崎の原爆、学童疎開、大陸・半島からの
引き揚げにまつわる体験談が多い。
中でも「真白いごはん」は恥ずかしながら深夜の枕を濡らしてしまった。
毎日毎日出てくる大豆ごはんが嫌いな少年勝司は、その朝また母親に
諌められ、幼いつぶらな瞳に涙をいっぱいためながら登校した。
そして二度と家に帰ることはなかった。
時は1945年8月6日、場所は広島。
そう、少年勝司は「真白いごはん」を夢見ながら、あわれ原爆の犠牲に
なってしまったのだ。
母の述懐、
「私はその朝、食事のことで子供を叱って登校させました。涙を目に
いっぱい浮かべて家を出て行った姿。五十数年経ってもその姿が
目に浮かび、後悔致しております」
母親だって「真白いごはん」を腹いっぱい食べさせてやりたかったに
違いない。
でも、戦争という状況がそれを許さなかった。

こういう実話が42編収録されている。
本来なら、一日一編ジックリ、ユックリ読みたい内容でもある。
そして、せめて伝え語りでも、われわれ一般国民にとっての戦争とは
どんなものであったかを、ひとつひとつ心に刻んでいきたいものだ。

因みに、敗戦の年の平均寿命は男性23.9歳、女性37.5歳だった
そうだ。今の長寿命社会と比べると、いかに異常で異様な社会状況
だったかがわかる。

選者は最後にポツリ。
「過去は消えない。過ぎ去りさえしない」

今秋行なわれる「ツールドラフランス」の申込書が届いた。
もうそんな季節なんだなあ〜。
そう言えば昨年は結婚式があって出れなかったんだっけ。
11月3日・文化の日ってなにかかにかありそうだよなあ。
それより、体力・走力の方は大丈夫だろうか?
7月の桧原湖大会以来、まともに走ってない。
それもこれも「暑さ」のせい。
オレは暑さにメッチャ弱くて…。
暑いと気力もシナシナと萎えてくる。
変わらないのは食欲だけ、というのではちょっとヤバッ。
そろそろ練習再開しようかなあ〜って思ってカレンダー見ると
今週末から「お祭り」だし…。
街なかをガンガン走っているサイクリストを見かけると、
少しアセッてくるよお。

File No.257
『iPS細胞とはなにか 万能細胞研究の現在』
朝日新聞大阪本社科学医療グループ(講談社ブルーバックス 800円)
オススメ度★★★☆☆

「山中伸弥」
この名前を聞いたことがある人は多いだろう。
今、日本で最もノーベル賞に近い男。
iPS細胞研究の世界のトップランナーの一人。

で、iPS細胞って何だ、というのがこの本を読むキッカケ。
以前も関連本を読んだことがあるが、わかったような、わかん
ないような感じだったんで、改めて。

iPS細胞とは、induced pluripotent stem cellの略。
直訳すると、「誘導された多能性を持つ幹細胞」という意味で
山中伸弥が命名したもの。
現在は一般的に「人工多能性幹細胞」と呼ばれている。
山中伸弥は、受精卵のようにあらゆる組織の細胞になる能力を持つ
万能細胞のひとつである「人工多能性幹細胞」を、世界に先駆けて
つくりだし、ヒトの細胞でも成功させたのである。
もしこれが実用化されたら、身体のありとあらゆるところが再生
可能になるという、まさに夢のような発明(発見)である。
山中伸弥は、その人類の夢の扉を一番最初に開けることができる
のだろうか。
マウスでiPS細胞をつくった時点では、確かに驚異的なトップ
ランナーだった。しかし、それをヒトの細胞でつくった時点では
すでに同着者がいた。つまり、追いつかれたのである。
今後も凄まじいデッドヒートが続くだろう。

そのキーポイントのひとつは「特許」。
せっかくの発明でも、特許出願がちょっとでも遅れると水の泡。
世界の「知財」保護・獲得に関する動きはすごくシビアでスピーディ
だ。このiPS細胞もアメリカ企業がイギリスで特許を先行取得して
しまった。後に山中が所属する京都大学に譲渡され(もちろん
交換条件で)事なきを得たが、研究だけでなく知財についても
専門家グループを組織して取り組まないと国際競争には到底
勝てない、ということだろう。

山中伸弥はもともと外科医だったのだが、あまり腕が良くなかった
こともあって研究分野に切り替えたらしい。
なんか、いいエピソードだよなあ。
そして、彼の今を支えているのは、アメリカのグラッドストーン
研究所時代に学んだVWだそうだ。
つまり、ヴィジョン(V)とハードワーク(W)。
これは研究者に限ったことではないだろう。
でもねえ、ヴィジョンを描けることとか、ハードワーク出来る
ことって、才能なんじゃないかなあと思ったことがあって…。
もちろん努力がそれを引き出すのだろうけど。
たまにいるよね、こういう超人が。
何日もぶっ続けで勉強したり、いろんな仕事に取り組んで
それをテキパキとこなしたり、毎日深夜までデスクワークしても
平気だったりする人。
オレはダメねえ〜。だって「遊びたい虫」がうじゃうじゃわいて
くるんだもん。

で、このiPS細胞、病気の人に使えるのか?
答えは、残念ながら「まだ使えない」とのこと。
最大の障害は、iPS細胞由来の細胞を移植した後、その遺伝子の
運び屋であるレトロウイルスが「がん」化する懸念があること
だそうだ。
もちろん、その「がん」化を抑える研究もかなり進んでいる。

ニッポンの山中伸弥が、人類の夢の扉を真っ先に開けることを
願いたい。扉のカギは外したのだから…。

追記
いまいちスッキリしないんで、もう一冊iPS細胞の本を買ってきた。
近日公開!


先日、甥っ子の初体験にカコつけて久しぶりにパチンコに
打ち興じて、また再凍結したハズだったが…。
それは誘惑に弱いことでは自他ともに認めるオレのこと、
ついついフラフラとまた入ってしまった。
すると、最初の500円ですぐ絵柄が揃い、しかも三連チャン。
たった30分で!
パチンコファンの方ならどのぐらい勝ったかおわかりだろうが、
そうたいしたもんではない。が、オレとしては笑いをこらえきれない。
で、こうなると、これで止めになるワケはなく、数日後、ポッカリ
空いた時間にまたまたフラフラと…。
今日もまた来るかなあ〜なんてルンルンで打っていたのだが、
あれ〜、あれ〜、と言ってる間にズルズルと…。
1時間後のオレはボーゼン。
3回やったトータルは当然ボロ負け。
やっぱり、柳の下に二匹目のドジョウはいなかった。
ん?、ドジョウと言えば、今度の新首相のアダ名もドジョウ!?
まあ、何も関係ないことだけど。

File No.256
『ファントム・ピークス』北林一光(角川文庫 629円)
オススメ度★★★★★

パチンコぼろ負けの帰り、本屋によってこの本を買ってきた。
わき上がる憤怒を抑えながら読み出すと、面白くてとまらなくなった。
舞台は長野県安曇野の山の中。
主人公・三井周平の妻が山中でナゾの失踪をするところから物語が
始まる。
そして半年後に妻の頭蓋骨が偶然に見つかる。
あたかも、亡妻からのメッセージのように。
その後、次々とナゾの失踪事件が起きる。
一体、山で何が起きているのか?
ワクワク、ゾクゾクするような展開が続く。
それは、あたかもエンターテインメント映画を観てるようでもある。
それもそのはず、著者は映画宣伝会社のプロデューサーをやって
いたらしい。
後半になると、少しずつナゾのベールがはがされていく。
そのナゾの正体とは、な、なんと…!
これはすごいストーリーだわ。

これは別の作品もぜひ読まなきゃ、と思い、著者のプロフィールを
見たら…。悲しいことに2006年に亡くなっていた。
オレよりも少し若いから、亡くなったのは40歳代の半ば。
そして、この物語は、生前の著者が世に出した、たったひとつの作品で、
松本清張賞の最終候補まで残っている。
実に惜しい才能だった。
このぐらいの書き手だったら、もっともっと心揺さぶる物語を紡げたのに。

オレは元来、書き手自身のことには殆ど興味がない。
人格とか性格とか履歴とか容姿とか、そんなことはどーでもいい。
作品がすべて。
世にあまたいるアーティストもすべからくこのならい。
絵でも、音楽でも、映画でも同じこと。
だから、作家と握手したいとか、サインをもらいたいとか、コンサート
に行きたいとか、まったく思わない。
だから、この「北林一光」という作家も、たった一つの遺作から、
その才能を心から惜しむばかりだ。

できれば2、3時間、何にも邪魔されない時間をとって、一気に読むことを
お勧めする。さながら映画を観るように。

いやあ〜、パチンコなんかよりずっと面白い。
天国にいる著者の才能への賛辞も込めて五つ★!

毎晩寝床で本読むのが永年の習性になっている。
つい先日も枕元に本を置いてたら、家人が、
「この本読んだんじゃない?そこの本棚にあるよ」
「ええっ!記憶ねえなあ」
「あるって。だって私読んだもん。最初が心中の話でしょ」
(むむ…、確かにそうだ。またやっちまったか)
「黙って人の本読むなよ」
と、テレかくしのフテ寝決め込んだ。
(クソッ、もうオレのハードウエアはいっぱいいっぱいかあ…。
思い出したくないようなイヤな記憶だけ初期化出来ないもんかねえ)

File No.255
『あやし うらめし あなかなし』浅田次郎(双葉文庫 619円)
オススメ度★★★☆☆

そのダブリがこの本。
まあいいや、もう一回読んじゃえ、と思って読み進めていっても、
なぜか一向に既読感がない。
これはきっと、買ってすぐに家人に読み盗られたために、その
存在すら忘れてしまったに違いない。
本は確かに同じもの2冊あるけど、読むのは初めてだ。
(ということにするっ!)
稀代のストーリーテラー浅田次郎が、いま再び注目を集めている。
1回目は『鉄道員』で直木賞をとった時。
これはいい作品だよなあ。
映画も良かったあ。
誰の人生にも1回ぐらい奇跡が起きるかも知れない、と思ってしまう。
同じ本に収録されている『盂蘭盆会』も良かったなあ。
そして2回目の今回は、だいぶ以前の作品である『日輪の遺産』が
映画化され話題になっているらしい。
かく言うオレも、この本で浅田次郎を読むようになった。

それから比べると、今回のこの本は少し食い足りない。
中味は、コワイばかりじゃない「怪談」7編。
最初の『赤い絆』は確かに少し気味が悪かった。
『骨の来歴』は何だか読んだことがあるような…。
なかなか心がジーンとする「怪談」である。
『客人』もコワい話だけど、何だかいい話なんだよなあ〜。
『遠別離』はオレ的にはちょっといまいち、かな。
いずれにしても、まだ残暑厳しきおり、少しばかり背筋が寒くなり、
少しばかり心がポっとする佳品のような物語集である。

蛇足ながら、
「怪談」だからと言って、夜読んで眠れなくなったり、トイレに
行けなくなるようなコワさはない。この怖がりのオレでもね。




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