ぶっくぶくの部屋
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人事を尽くす
5月下旬と言えば総会戦線第一波。
私も多少ながらその余波を受けてまして、なかなか読めない、
更新できないもどかしさにモンモンとしておりマス。
File No.51
『僕は、慢性末期がん』尾関良二(文春新書 720円)
オススメ度★★☆☆☆
むむ、「慢性末期がん?」、そんな言葉あるんかいなって思って
手に取り、パラパラと見てみたら、この著者、何と山形市出身で
しかも私と同い年。
さっそく買って読んでみました。
いやあ、こんな闘病記は読んだことがありません。
本人の「がん」はたいへん厳しい状況なのに、あまり悲壮感が
なく、冷静に、時にはおどけたり、医療現場の問題点を指摘
したり、ちょっとホロッとさせたりします。
まず、この著者は、自分の「がん」を治すために、ありと
あらゆることにチャレンジしています。
まさに、「人事を尽くして天命を待つ」ってカンジ。
命がかかってますから、その行動は鬼気迫るものがあります。
それが、「余命半年」と宣告されながら、3年以上健在している
ヒミツなのかもしれません。
この著者は、常にユーモアに富んで、明るく書いていますが、
親とか家族のことを書いてるところは、ホロッとさせられます。
そして、最後には自らの死生観を語っていますが、私も全面的に
共感しました。
「あきらめない」そして、
「この試練が僕の人生の『縮図』となるような生き様を見せて
やろう」という気構えに、心からのエールを贈りたい気持ちです。
2009.05.27:
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50回記念 蔵出し5つ★
いやあ、ぶっくぶくも何とか50回目を迎えました。
始めたころは、「いつまでつづくのやら」って思ってましたが、
良い本に恵まれたことと、ひとりよがりの気楽さで、細々と
続けてきました。
そこで、今回、「5つ★はいつ出るんだ?」という少数の催促に
お応えして、初めて「蔵出し」(過去に読んだ本)をします。
この本は、病床の友人に、私からの一番のお見舞いとして
持って行ったほど思い入れが強いものです。
File No.50
『忘れられた日本人』宮本常一(岩波文庫 700円)
オススメ度★★★★★
「日本人って何なんだろう?」というのが、答えの出ない私の
テーマのひとつでして…。
もっと言えば、「人間って何だ?」「人生をどう生きるんだ?」という
問いと思索が、本を読もうとする原動力になるのではないでしょうか?
そういう思索の営みこそが、最も人間らしいと、私は思っています。
この本は、そういう意味で、心の芯の部分に触れてきます。
作者・宮本常一は民俗学者として、日本全国を旅しながら、主に老人
たちの話を丁寧に且つ膨大に聴きながら、各地域の習俗や文化が
どのように伝承されてきたのかを探って行きます。
と書くと、「え、ムズカシー本?」と思われるかも知れませんが、
いえいえ、内容はいたって読みやすいものです。
とくに、「村の寄り合い」とか「女の世間」なんて面白いですよお。
ワタシ的にサイコーだったのは「土佐源氏」。
いやはや、明治の世にも、こんなプレイボーイ(スケコマシ?)が
いたんですねえ。何回読んでも、ニヤニヤしながらも「スゴすぎる」
って思ってしまいますよ、ホント。
まあ、私たちが教科書で習う歴史の何千倍・何万倍もの厚みと深みの
ある「民衆の歴史」があるってことですね。
読むうちに、日本や日本人というものを、少しずつ見直してきます。
実は、私がこの本を5つ★にした理由は、もうひとつあります。
それは、『旅する巨人』(佐野眞一)を読んで、宮本常一の人となり
を知ったことです。
民俗学は、柳田国男と折口信夫という両巨峰がそびえていますが、
宮本常一は、時には野にありながら、徹底的なフィールドワークを
積み重ねていく執念のようなものを強く感じさせます。
生前は、渋沢敬三(渋沢栄一の孫)の援助を受けながら、調査と
研究を続けましたが、そう高い評価は得られなかったようです。
しかし、彼の執念が『忘れられた日本人』を、『遠野物語』や
『まれびとの思想』とともに、日本の民俗学の代表的名著として
後世の私たちに与えてくれたのです。
宮本常一を読むたびに、
芭蕉の「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」という句が
うかんできます。
2009.05.24:
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これぞ「記者魂」
いやあ、まいりました。
30分以上もかけて渾身の読後感を書いて、「投稿」をクリックしたら、
あえなくログアウト。これで4回目。力が抜けてしまいます。
気を取り直して。
File No.49
『我、拗ね者として生涯を閉ず』本田靖春(講談社 2500円)
オススメ度★★★☆☆
「できるだけ厚く、できるだけ高い本を」というさもしい根性で図書館
から借りた本ですが、本田靖春という新聞記者にしてノンフィクション
作家の壮絶な「魂」に打ちのめされてしまったかのようです。
約600頁にも及ぶ長編ですが、読み終えるのが惜しい、と思わせる
本でもありました。
ちなみに、題名の「拗ね者」とは、「すねもの」と読みます。
「すねる」ってよくいいますよねえ。著者が自らを揶揄して付けたもの
でしょうが、米沢の「そんぴん」にも相通じるものがあります。
念のため、「そんぴん」は決してケナシ言葉ではない、と私は思ってます。
さて、この本は、本田靖春の出生から新聞記者時代までを自ら綴った
自叙伝です。
もっと続くハズでしたでしょうが、残念ながら病魔に襲われ、絶筆と
なってしまいました。
彼が、少年期から青年期に培った「正義感」は、天職とも言うべき
新聞記者となって花開きます。
中でも圧巻なのが「黄色い血キャンペーン」。
わが国は昭和30年代まで、血液の供給をほとんど売(買)血行為に
頼っていました。このことによって生じる社会問題に異議を感じた
著者は、大蔵省・厚生省、そして商業的血液銀行という「巨」に
対して、70数回にも及ぶキャンペーン記事の掲載と言う、敢然たる
挑戦をします。
結果、日赤による「献血運動」の広がりという新たなトビラが開き
ます。まさに「記者魂」の真骨頂。
しかし、この取材を通じ、自らも数度にわたる売血経験をしたため、
後年、肝臓がんに侵されてしまいます。著者自身はそれを「記念
メダルのようなもの」と言い放ちます。何と言ういさぎよさと覚悟。
思わず胸が熱くなってしまいました。
著者の人生は決して順風満帆ではありませんでした。
肝臓がんだけでなく、大腸がんや糖尿病による両足切断、脳梗塞など
後半生は次から次へと襲う病魔との闘いでした。
前妻は借金地獄のあげく、精神を病んでしまいます。
しかし、著者はそれらについて多くを語りません。
私事より、社会正義の方が大事であるという男らしさ!
この世への遺言ともいうべきこの本で、本田靖春はわれわれ現代を
生きる人間に、問いかけているのではないでしょうか。
「下の者・若者・弱者に対し、慈愛と寛容の心を持っているか?」
「上の者や強者に対し、いたずらに恐れおののいてはいないか?」
「悪や偽をただす勇気はあるか?」
「仕事に熱情を注いでいるか?」
と。
2009.05.17:
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奇想天外の面白さ!
少し前のTVドラマ「鹿男あをによし」って観ました?
私は1、2度、酔って帰ってから家人のソバで何気に観ましたが、
「わけわがんね」って寝てしまいました。
そのうたた寝で「有頂天ホテル」の夢を見たりして…。
ん?、ただの「鹿」つながりか?
File No.48
『鴨川ホルモー』万城目 学(角川文庫 514円)
オススメ度★★★★☆
ってなことがあったもんですから、「鹿男…」と同じ作者の「ホルモー」も
どうせわけわかんないだろうって、タカをくくってたんです。
ちょっとヒヤカシ気分でパラパラと読んでいたら、
「ふうん」→「ふううう〜ん」→「ふむふむ、それで」→
「ほうっ、それで、それで?」→「ふぇええ、はへええ、なんと、なんと」
と、次から次へと繰り出す奇想天外なストーリーにまんまと引き込まれて
しまったのでした。
(ぶっくぶくはこういうパターンが多い)
よく考えるよねえ、こういう小説。
凡人では書けない、まさに現代版伝奇的奇想天外青春小説とも言うべき
ものでしょうか。
残念ながら、あらすじも「ホルモー」の意味も書けません。
それを読む前に知ってしまったら、面白さ半減です。
読んでのお楽しみ。想像を絶する設定と展開が待ってますよお。
この面白さに、思わず
「ホルモオオオォォォーッ」と雄叫びをあげつつ★よっちゅっ。
こりゃあ、近著『プリンセス・トヨトミ』も早く読んでみないと。
2009.05.12:
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いつまでも時代劇ファン
「必殺仕事人2009」観てますか?
東山クンのクールな演技カッコイイですねえ。
藤田まことサンの渋さも見事にアンカーマンの役割を
果たしていて、味わい深いものがあります。
主題歌「鏡花水月」もこれまたいいですねえ。
思わずTUTAYAからCD借りてきてしまいました。
ただ、「金9」という放送時間帯が、なかなか観れないのが
タマにキズでして…。
File No.47
『時代劇は死なず!-京都太秦の「職人」たち-』
春日太一(集英社新書 720円)
オススメ度★★☆☆☆
時代劇発祥の地京都を中心に、その勃興から変遷、そして現在までを、
企業・製作者・役者の側から追っていく筋になっていて、永遠の
時代劇ファンを自認する私にとっては、たいへん面白い内容でした。
ただ、ふだんはあまり知られていない制作サイドの人の名前が多く
出てくるので、一般の人にはちょっと違和感があるかも…。
勝新太郎の「座頭市」から、中村敦夫の「木枯らし紋次郎」、藤田
まことの「必殺仕事人」、そして「鬼平犯科帳」に至る変遷は
なかなか面白く、「そういうウラ事情があったのか」と目からウロコ
でした。
また、大映・東映・松竹・東宝などの制作各社の経営(制作)スタイル
や時代の移り変わりにともなう紆余曲折も、興味深いものが
ありました。
余談になりますが…、
私が時代劇に魅せられたキッカケは、ご他聞にもれず黒澤明です。
「七人の侍」のあのイキイキとした活劇!
三船敏郎がなんと若くエネルギッシュなことか。
数年前の正月にビデオを借りて久々に観ましたが、感動はサビついて
いませんでした。
続く「影武者」にも心奪われましたねえ。
あのド迫力の映像はセンセーショナルでした。
その後しばらくして、時代劇ファンの血をふたたびたぎらせてくれたのが
近年の「たそがれ清兵衛」。大道具・小道具のディテールとリアルな殺陣、
そして時代雰囲気の醸し方が絶妙。さすが山田洋次。
山田洋次と言えば「寅さん」も大好きで、もちろん全編観ましたし、
葛飾柴又にも幾度となく足をはこび…。
おっとっと、脱線しすぎました。
この本で、こんなに時代劇の思い入れがわいてくるのに、なぜ★ふたつ
なのか?
それは著者が若すぎて(30歳代前半)、リアルタイムで各時代の
時代劇を観ていないからです。(私の独断と偏見)
しかも彼は学究徒。つまり、ご自身の研究対象なんですね。
好きなことを仕事にしてるなんてズルイ。(わたしのやっかみ)
2009.05.10:
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「知の巨人」の実像
立花隆の本には私も何度も衝撃や感動や驚嘆を覚えました。
宇宙・臨死体験・田中角栄・音楽・生物学・医療・ロボット工学
などなど、その関心の広さと深さはナミじゃあありません。
それらの「知」を生み出した現場に寄り添っていた秘書日記ですから、
それこそ面白くて、一気に読めます。
File No.46
『立花隆秘書日記』佐々木千賀子(ポプラ社 1500円)
オススメ度★★☆☆☆
以前、立花隆が何かの著書で、ある分野の専門家にインタヴューするなら、
その専門書やその人の著書などを高さ1メートル分ぐらいは読んで準備
する、と書いていたのを覚えています。
さすが知の巨人。インタヴューひとつでさえ、仕込み方がまるで違い
ます。
その知の現場たるや、まさに壮絶の一語です。
通称「ネコビル」と呼ばれる地下2階地上3階+ペントハウスの書斎兼
仕事場に溢れんばかりの書物と資料が詰め込まれ、日々その整理や収集、
まとめ、諸雑事に追われる秘書の仕事もカコクです。
私なんかも人一倍「整理整頓」が苦手な上に、人二倍無精なもんですから、
こんな秘書がいたらすごく快適だろうなって思います。
もっとも、秘書を持つような身分になることなど、私にとっては夢のまた
夢ではありますが…。
この佐々木千賀子さんは、ただの秘書ではありません。
ボス(立花隆)の取り組みテーマを熟知したサポート、好き嫌いや性格
を知悉したフォローに加え、自らも知を愛し、オペラをこよなく愛する
精神性豊かな女性です。
とくに、立花隆が東京大学の客員教授を務めた3年間の彼女と学生の
交流は、興味深いものがありました。任期が終わったとき、ボスと彼女
が共有した思い「大人ってつまらない」は、私も深くうなずいてしまい
ました。
可能性とパワーに満ち満ちた青春時代ってほんとうにかけがえのない
ものですね(気付くのが遅すぎ!)
でもこの本、最後の最後で少しケチを付けてしまいました。
それは、著者がボス批判をしてしまっていること。
一番身近にいた人間の批判というのはツライですねえ。
なんせ、もっともなことなんですから。
ワタシ的には、もっと別な言い方があるんじゃなかったのかって思いますよ。
批判と言うのは、理解と愛情があってこそなんでしょうが、残念ながら
彼女の文章からそれは充分に伝わってきませんでした。
面白かっただけに、ちょっとザンネ〜ン。
2009.05.09:
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料理ひとすじの人生
村上信夫
この名前に聞き覚えのある方も多いでしょう。
そう、帝国ホテルの元総料理長にして、わが国におけるフランス
料理の第一人者として、斯界を引っ張ってきた人。
短躯肥満にして丸顔の独特の風貌と風体は存在感に満ち満ちていましたね。
File No.45
『帝国ホテル厨房物語』村上信夫(日本経済新聞社 1800円)
オススメ度★★☆☆☆
この連休はどこに行くアテもありませんでしたので、久しぶりに図書館に
行きました。けど、お目当ての本がなくてちょっとガッカリ。
リクエストも考えたのですが、こんなに本があるんだから、と書架の間を
歩きながらハズミで借りたのが、この本です。
わずか12歳で社会に出ざるを得なかった村上少年が、常にどん欲な
向上心を持ちながら修業を重ねた日々を、自ら日本経済新聞に「私の履歴書」
として綴ったものです。
なんだか、在りし日の村上シェフの問わず語りを厨房の隅で聞いているような
感じがします。
功成り名を遂げた人なんですが、決して自己顕示欲が強いわけではなく、
あくまでも謙虚です。
自分を育ててくれた先達や、チャンスを与えてくれた人たち、切磋琢磨した
同僚やライバル、志を引き継いでいる後輩たち、そしてお客様への感謝の
心を忘れない、一流と呼ばれる人には、そういう共通の「謙虚」さが
ありますよねえ。
村上氏は、「料理の極意は『愛情、工夫、真心』」と言ってます。
平凡に聞こえるかもしれませんが、達人が言うと深みを感じます。
また、自分の夢は、小さな町のレストランのオーナーシェフになること
だとも。
しかし、その夢は、帝国ホテルの「顔」となっていくことで、皮肉にも
かなえられなくなるのです。
そして、この本が上梓された3年後の2005年に村上氏は不帰の客と
なってしまいましたから、まさに、この世に残した遺言のようなもので
しょう。
ああ、それにしても、一度でいいから村上シェフの手になるフルコース
を食べてみたかったなあ、と思いますよ。
帝国ホテルのレストランで夜5万円だったといいますから高嶺の花では
ありますが、この本を読むと、5万円で味わう価値は充分あったように
思えます。
もうひとつ。
今をときめくシェフ三國清三も、帝国ホテルで鍋洗いの修業中に村上ムッシュ
に見込まれてスイスに派遣されたことが、飛躍のキッカケになったんです
って!
やっぱ、人間たるもの、どんな仕事でも、陰日なたなく誠実にやらなければ
何も道は拓けないのでありますナ。
2009.05.07:
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闇は深くても
国会議員による秘書給与の流用事件、覚えてますか?
この事件で有罪となり、刑務所に服役したのが、この本の
著者山本譲司(元衆議院議員)です。
最初、著者のプロフィールを読んだときは「え〜」って
思いましたが、これがナント、ナント手ごたえのある内容
でしたよ。
File No.44
『累犯障害者』山本譲司(新潮文庫 476円)
オススメ度★★★☆☆
題名の「累犯障害者」とは、犯罪を繰り返し重ねる知的障害・
精神障害・身体障害などがある人たちのこと。
著者は、自ら塀の中にある時、この事実を知り、出所後もこの
問題を追い続け、贖罪のように福祉の充実に奔走しています。
本書で紹介されているのはオドロクべき事例の数々です。
例えば、下関駅放火事件で逮捕された74歳の男は、放火を
繰り返し、成人してからの54年のうち50年を刑務所で暮らし、
「刑務所が安住の地」とも言ってます。
軽度とは言え、知的障害を持つ人間を、家族も社会も受け入れ
ないという事実。
犯罪者が悪い、行政が悪い、社会環境が悪い、とは一概に言えない
「闇」の深さ。
各事例は、私も「まさか、そんな!」と思うようなことばかり
でした。第三章や第四章の女性の事例は、オドロキを通り越して
切なくなってしまいました。
この歳になって「人間のことをあまりわかった気になるなよ」
という警鐘がガンガン打ち鳴らされたような気分です。
闇は確かに深い。
しかし、著者はそれに目を背けずに、自らヘルパーとして
障害者と関わり続け、福祉行政に積極的に働きかけています。
もしかすると、そのまま政治家であり続けるより、福祉活動家
としての方が、世のため人のために大いに役立っているのかも
しれません。
2009.05.04:
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敬愛すべき世界の王貞治
わが国で、大臣の名を知らない人はいても、「王貞治」の名を
知らない人はあまりいないでしょう。
この不世出の野球人は、多くの感動を私たちに与えてくれ、
昨シーズンで静かにユニフォームを脱ぎました。
File No.43
『王貞治に学ぶ日本人の生き方』齋藤 孝
(NHK出版生活人新書 660円)
オススメ度★☆☆☆☆
国民栄誉賞に輝く世界一のホームランバッター。
長嶋茂雄とともにONと称され、巨人のみならず、戦後のプロ野球界
を牽引してきた選手。
ホームランを打ってもガッツポーズなどしない真のサムライ。
弱小球団を常勝軍団に育てた熱き指導者。
第1回WBC優勝監督。
……
王貞治を賞揚する例は枚挙にいとまがないほどです。
こうした選手時代・監督時代を振り返っての言動を引用しながら、
それに著者の熱い思い入れを込めながら解説をしているのが、
本書の構成です。
プロとは何なのか、指導者はどうあるべきなのか、などなど。
なかでも、
「余計な口出しはしない、思い切ってやれ、周囲の雑音はオレが
シャットアウトする」
なんて、サラリーマンだったらぜひ言われてみたい、言ってみたい
言葉ですよねえ。
でも、現実社会はそれほど甘く単純ではないんですね、これが。
だから、かえってそういう世界に憧れるのかも知れません。
まあ、本書に書かれていることは、王貞治を敬愛している人間は
多かれ少なかれみんな思い感じていることでありまして…。
(そんなこと言ったらミもフタもありませんが)
「王貞治」のことに関心があるのに、「私の場合は…」という
自己PRが多いのも、私的にはいかがなものかと…。
本筋とはあまり関係ないんですが、この著者(大学教授)は
「月の読書量が100冊を下回ったら教壇を去る」んですって!
ぶっくぶくなんか、今年に入ってまだ40数冊ですから、アタマ
の出来っつうか、違うんでしょうねえ。
でもですよ、著者は超多忙で土日は集中的に原稿の仕事で、
「以前いつ休んだかわからない」ほどなんですって!
1日平均3、4冊の本をいつ読んでいるのかしら?
そのコツを書いてくれるんだったら、ぜひ読みたいデス。
2009.05.04:
ycci
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同時代感覚なのか!?
杉山隆男は、私がまだ20代の頃、その出世作『メディアの興亡』を
読んで、衝撃的とも言える面白さと、同時代的な共感を覚えた
ノンフィクション作家です。
その後の『兵士に聞け』『兵士を見よ』も圧巻の内容でしたが、
今回も期待を裏切らないものでした。
File No.42
『自衛隊が危ない』杉本隆男(小学館101新書 735円)
オススメ度★★★★☆
「ぶっくぶく」始まって以来の四つ★です!
このまま四つ★、五つ★が出なかったら在庫の棚卸ししかないかなあ、
とも思っていたのですが。
最近も、田母神・前航空幕僚長の懸賞論文問題や北朝鮮のミサイル
(人工衛星?)発射問題、イージス艦と漁船の衝突事件などなど、
自衛隊を巡る問題・事件があとを絶ちませんね。
この本は、著者の長年に及ぶ自衛隊取材をベースとして、自衛隊自体
の課題や問題、取り巻く環境などを論じた秀作です。
第一章で語られる、「ビロードの手袋をはめた鋼鉄の拳骨」や「刀を
帯びているものの克己」の話は、騎士道や武士道のようなストイック
好きの私には、とても共感できるものです。
(私自身の精神や生活はストイックとはほど遠いものですが…)
つまり、力があったり、武器を持っていたりする人間は、普通の人間
より感情抑制しなければならず、その力(武器)をむき出しにして
行使してはいけない、ということ。
また、旧軍から続く、陸海空軍(自衛隊)の特徴を四文字熟語で端的に
表現しているというのも、なかなか面白いですよ。
ちなみに、
陸上自衛隊=用意周到、一歩後退
航空自衛隊=勇猛果敢、支離滅裂
海上自衛隊=伝統墨守、唯我独尊
というものです。
さらに、最終章では、未確認情報としながらも、陸上自衛隊に特殊作戦群
と呼ばれる対テロ・対ゲリラの特殊部隊が秘密裡に組織されている、との
ショッキングな内容も盛り込まれています。
「自衛隊を憲法で定めることが実は護憲になるのではないか」という
アイロニーとパラドックスに満ちた問いかけは、私の胸にも強く響き
ました。
そういった本書の内容もさることながら、筆者には私と同時代的感覚と
いいますか(実際は私の方がずっと年下なんですが)、考え方が似ている
というか、そういう親近感を勝手に感じておりまして…。
例えば、全共闘世代の「兄貴」たちを、羨望・尊敬・反感・憎悪という
複雑な感情で、少し距離を隔てている同じ「弟分」の気持ちとでも
言うのでしょうか…。
まあ、簡単に言えば、「個人的な好み」の四つ★ということです!
2009.04.26:
ycci
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魂の経営ここにあり
だいぶ以前に、某女史からこの本をお借りしてて(某女史も上司から
借りたものらしいですが)やっと今日読みました。
そしたら、傍らの家人がたまたま観ていたテレビに、この本で紹介
されている企業が出ていたのです。何と言う偶然!
File No.41
『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司(あさ出版 1400円)
オススメ度★★★☆☆
真の企業経営とは何か、企業とは何のために存在するのか、について、
5つ(コラムをいれると14)の企業紹介を通じて語っていくのが、
この本の趣向です。
どれも、企業訪問の実績豊かな著者が、具体的に且つ平易に書いている
ので、たいへん読みやすくなっています。24万部売れているというの
もよくわかります。
とくに、最初に紹介されている日本理化学工業株式会社は、知的障害者が
全社員の7割を占めながら、業界(チョーク製造)でも全国三割のシェア
を誇る企業です。この会社がテレビで紹介されていたのです。
同社大山社長の慈愛に満ちたお顔を見たら、本で読んでいた時の想像と
たがわぬものでした。やっぱ、生き方が顔に出るってホントなんですね。
大山社長を見ていると、故・小倉昌男氏を彷彿とさせます。
小倉氏も、クロネコヤマトの宅急便で得た利益を福祉財団に投じ、自ら
障害者の自立支援に一身を捧げた経営者です。
深い慈愛の心をもって、世のため人のために一身を捧げ尽くす男の生き方
こそが、「かっこよさ」の極みなのでアリマス!
もうひとつ。
50年前に初めて知的障害者として採用されたおばあちゃんが出てきます。
自分に出来ることを健気に一所懸命やり、人の役に立つ幸せを全身で
感じる…。カメラの前にもかかわらず、この会社で得ることができた人生の
幸せに涙する姿をみたら、こっちまで…。
人を愛したい、人から褒められたい、人の役に立ちたい、人に必要とされたい
という気持ちは、健常者でも障害者でもかわりはないんです。
ひとつの例の紹介に終始してしまいましたが、他の紹介企業も感動エピソード
でいっぱいですよ。
とどのつまり、経営とは、従業員やお客様、企業を取り巻く地域社会に感動と
幸せを与えていくことであり、そのために、存在し続けることである、という
のが著者の熱きメッセージなのデス。
経営資源はひと・もの・かね、ではなく、一にひと・二にひと・三にひと、
とも著者は言ってます。
まったく同感!共感!
2009.04.26:
ycci
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うつ病が増えてるってホント?
最近「うつ病」が増えてるって良く聞きますが、ホントなんで
しょうか?というのも、前になんかの本で、うつ病とは心の病
というより脳の病である、と書いてあったような記憶があり
まして…。
File No.40
『それは「うつ病」ではありません!』林 公一(宝島社新書 686円)
オススメ度★★☆☆☆
「うつ病」って、やっぱり脳の病気なんですね。
専門的に言うと、「シナプスの神経伝達物質の変調」ということ。
こういう脳の病気が、ここ数年で劇的に増加しているなんてホント
なんでしょうか?インフルエンザなどの感染症じゃあるまいし。
でも、厚生労働省の統計は、もうスゴい右肩上がりで増えてるんです。
なぜ?
の回答のひとつが本書のテーマです。
本書では、20の症例をあげて、ひとつひとつ、うつ病にあたるか、
そうでないかを判断し、丁寧な解説をしてますので、とても具体的で
わかりやすいです。
結論を言ってしまいます。
「うつ病」が増えている(精神科・神経科受診者が増えている)のは、
「擬態性うつ病」が増えているからだそうです。
「擬態性うつ病」とは、ひらたく言えば「うつ病もどき」。
著者は「気分障害」と位置づけてます。
つまり、「うつ病」が勝手に解釈されて広がってしまい、うつ病で
ない人がうつ病と思い込んだり(かなり多いらしい)、本当のうつ病
が見逃されて悲劇的な結末になったりして、「うつ病」をとりまく
現況は、医療の世界も含めて、混沌としているということなのです。
「自分はうつ気味なんじゃないか」と思っている方は、ぜひ、この
本を読んでみて下さい。多分、多くがうつ病ではない、ということが
理解できるハズです。
だいいち、本を読む意欲があること自体、うつ病とはほど遠いよう
です。
とくに、ケース20は傑作ですよ。
「気に入らないと、むくれて、放り出す」人の症例です。
みんな、それぞれ誰かの顔を思い浮かべてニヤっとしてしまいます。
そういうワタシもちょっとアブナイのかも…。
でも、
休日や休前日は気分がウキウキしているのに、休み明けになるとブルー
になり、「ちょっとウツなんじゃないか」と思っているアナタ(ワタシも)、
それは、「うつ病」ではありません!(ホッ)
2009.04.25:
ycci
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志ん生の世界にどっぷり
最近、落語を生で聞く機会がないですねえ。
以前は良く行ったんです。映画より、コンサートより、演劇より
落語が面白かった時代が私にもありまして…。
こうして志ん生の本を読んでいると、なんだか、あの頃の感覚が
戻ってくるような気がしました。
File No.37,38,39
『なめくじ艦隊』古今亭志ん生(ちくま文庫 660円)
『びんぼう自慢』古今亭志ん生(ちくま文庫 880円)
志ん生で味わう江戸情緒��
『江戸の旅と交通「道中」がわかる』凡平(技術評論社 1880円)
オススメ度★★★☆☆
『なめくじ艦隊』と『びんぼう自慢』は、昭和を代表する名落語家
と言われた五代目古今亭志ん生が自ら語る半生記です。
ここに書かれているエピソードの数々は、まさに、スゴイ!オドロキ!
オモシロイ!ジーンとする!の連続です。
なんで「なめくじ」?
それは、志ん生が「なめくじ」の這う長屋に住んでいたからなのです。
「なめくじ」がさながら艦隊のように這いまくっている長屋って!?
志ん生55歳の時に、終戦数ヶ月前に満州に渡るんです。
その理由が「酒がたっぷり飲める」というウワサを信じたから。
ところが、終戦前後の大混乱に巻き込まれ、たいへんな目に遭うんです。
その中には、人の情けにホロっとするエピソードも混ざってます。
そんな生死をさまようような体験をしたり、びんぼうを極めたり、
放蕩の限りを尽くしたり、人情の機微にふれたり、波乱万丈の前半生
を送っているからこそ、志ん生晩年の落語には、「味」があるんです
ねえ。ハンパじゃないですよ。
そうこうしているうちに、無性に志ん生の落語が聞きたくなって
買ったのが3冊目の本。これCD付なんです。
中味もさることながら、志ん生の落語CDも久々に聴いて良かったです
よお。「大山詣り」なんか絶品ですね。
ああ、できることなら志ん生を生で聴きたかった!
亡くなったのは昭和48年ですから、私が落語を解せる歳だったか
どうかはビミョーではありますが…。
2009.04.18:
ycci
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高杉作品はやっぱりアツい
企業小説とか経済小説とか言われるものを初めて読んだのは、
今から20年ほど前のこと。その初体験が、高杉良の『炎の
経営者』でした。いやあ、アツい作品で、その当時の私だったら
間違いなく4つ★でしたね。
File No.36
『暗愚なる覇者-小説・巨大生保-』上・下 高杉 良
(新潮文庫 各667円)
オススメ度 ★★☆☆☆
久々の高杉作品は、やはりアツいものでした。
上・下巻あわせて約1,000頁もの長編ですが、二日間で一気に
読んでしまいました。
内容は、巨大生保「大日生保」に勤めるエリートサラリーマン
吉岡周平が、経営トップの腐敗・堕落を徹底的に糾弾し、
組織のダイナミズム喪失と営業現場の士気低下に悩みながらも
奮闘する姿を描いています。
読む側も、サラリーマンと言えども男は外や内と闘わなければ
ならないと思う反面、現実はもっとおさまりよくいく力が働く
という思いも交錯します。
随所に出てくる日本の生保のレガシーシステム(セールスレディ
が保険を販売する旧来の営業方法)に限界が来ているという指摘や、
組織のダイナミズムやモチベーションを上げるのも下げるのも
経営トップのビジョンや求心性、人間性(倫理観)次第という
示唆に共感を覚えるのは私だけではないでしょう。
まあ、それだけ経営トップというのは重責なんですね、きっと。
この作品の不満な点…主人公が一体何回「辞める」を繰り返せば
気がすむのか。それだけ上部批判・組織批判をするならさっさと
辞めればいいものを。「黙して去る」ことこそ男らしいと私は
思うのですが…。
もうひとつ。作者的には鮮やかな結末なんでしょうが、私的には、
小説なんだからもっとスカッとする終わりにして欲しかったです。
みんな現実社会では苦しんだり、悩んだり、うまくいかなくて
モヤモヤしたりイライラしたりしてるんですから、せめて小説の
世界では「スカッ」としたいですよねえ。
でも、この作品は、いずれも現実にある企業や事件・状況を擬して
いるようなところがありますから、あまり奇想天外にもできなかった
んでしょうか…。
2009.04.13:
ycci
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今さらながら「科学の進歩ってスゴイ!」
4月9日付の読売新聞社会面に、
「iPS細胞特許 2社に供与 京大設立の会社、初の契約」
という見出しの記事が載っていました。
iPS細胞ってナニ?
そう言えば、ちょっと前に衝動買いした本が…、と思って
探したら、ありましたよ。さっそく読んでみたら、
「へえ〜、現代の科学ってこんなに進んでいるのか!」って
感心させられました。
File No.35
『iPS細胞-世紀の発見が医療を変える-』八代嘉美
(平凡社新書 660円)
オススメ度 ★★★☆☆
はじめての4つ★かと思ったぐらいの内容でしたよ、この本。
とかく専門用語の羅列で難しくなりがちな生物学系の本が多い中
(大体このテの本の前書きには「一般の人にもわかりやすく…」と
書いているが、内容はわかりにくいことが多い)、ホントにわかり
やすかったです。
専門用語も多く出てきますが、懇切丁寧に解説してます。
さて、iPS細胞とは?
正式な日本語で言うと「人工多能性幹細胞」。
もっとわかりやすく言うと、「大人の人間の細胞を原料に、いろんな
細胞になれる細胞をつくることができた」と本書の前書きにあります。
これは京都大学再生医科学研究所の山中教授が研究、発表された
もので、21世紀の医療を劇的に変える発見だと注目されている
ようです。
つまり、人間の身体のいろんなパーツの不都合・不具合を、自らの
細胞の多能性で再生させられる(可能性がある)ということです。
死因の多くを占める三大疾患(ガン・心筋梗塞・脳梗塞)の治療も
根本から大きく前進し、人間の寿命はさらに延びるのでは、と。
しかし、そうはトントン拍子にいきません。
iPS細胞の臨床応用に至るまでには、基礎的・応用技術的・倫理的
課題が多くあることも筆者はよく説明しています。
今や、世界各国がiPS細胞の再生医療応用にシノギを削っていることも。
日本の、世界の科学研究の最先端を垣間見る、という点では
たいへん興味深い一冊です。
もうひとつオドロクべきことは、この本の筆者はまだ30代前半の
大学院生であること。
こういう「知性」が育っているということは、日本の未来は決して
暗くはないハズです。
「それでも何で4つ★じゃないんだ?」と思われるかもしれませんが、
それは何と言うか、ド素人が玄人の世界をのぞき見するような引け目
みたいなもんがありまして、ちょっと今回は遠慮させていただいたん
でアリマス、ハイ。
2009.04.11:
ycci
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