「仮にJRとの土地譲渡交渉がまだ完了していないとすれば、当該土地は現時点で市の所有にはなっていないということになります。こういう状況下で、基本・実施設計業務の委託業者を公募することの適法性について伺います」―。花巻市議会9月定例会の一般質問2日目の9日、羽山るみ子議員(はなまき市民クラブ)は肝心の新図書館の建設予定地(旧スポーツ用品店敷地)がまだ、市有地化されていない段階での「公募プロポーザル」実施の是非についての見解をただした。
これに対し、上田東一市長は「当該地はまだ未取得の状態だが、合併特例債の期限が切れる令和12年度内の開館を目指している以上、ある程度前倒しで計画を進めざるを得ない。対象区域の境界が正式に確定した段階で、改めてJR側に土地評価をしていただき、最終的な買取り価格を決定したい。土地取得費は令和9年度の当初予算への計上を予定している。所有権がない状態でのこの種の手続きは違法ではない」と突っぱねた。私はこのやり取りを聞きながら、建設場所をめぐる“市有地”論争の経緯を思い起こしていた。羽山議員が「現在の土地の譲渡価格は市側の評価を基準にしたものではないのか」と質問したことに実は、私自身も虚を突かれたからだった。「市有地にこだわる割にはその手続きが余りにもずさんではないか」と。
建設候補地のひとつである「旧花巻病院跡地」は令和6年3月、約3億2千万で市側が取得し、正式に市有地化された。「市の中心部に広大な市有地がある以上、ここに図書館を立地すべきだ。駅前のJR所有地を新たに取得するのは税金の無駄使いではないか」―。病院跡地への立地を求める署名は1万筆を超え、市民を二分する運動に発展した。しかし、市側はこの草の根の声には耳を傾けようとはせずに「駅前立地」を強行した。「新花巻図書館建設候補地比較調査業務委託報告書」によると「用地費」(土地取得費)として、130,000千円が見積もられている。そして、この日の質疑の中で、この額もまだ確定したものではないことが明らかになった。市民を翻弄(ほんろう)し続けた“市有地”論争とは一体、何だったのか。見切り発車してまで、駅前立地にこだわり続けたナゾは逆にいや増したようである。
この日の質疑で、鹿討康弘議員(緑の風)は9月3日付当ブログで取り上げた「公募プロ―ポーザル」の動向について、問いただした。「約40社の業者から質問が相次ぎ、その中には新図書館とJR花巻駅橋上化(東西自由通路)との接続の可能性を問う意見も少なからず、あった」として、設計段階での計画変更の可否を問うた。これに対し、上田市長は「この二つのプロジェクトは以前から、別のものとして進めてきた。商業施設のような建物との接続ならあり得るかもしれないが、そんな考えは全くない」と従来の“別物”論を繰り返した。
「たぶん、間に合わないとは思ったけれど、プロポーザルでの質問にあったので一応、聞いてみました。病院跡地への立地を希望するグループから、アンケートを求められので『駅前』と回答したら、一方的に公開されてしまって…」―。再質問に立った鹿討議員はまるで、おべっかまがいの腰砕けのまま、後味の悪さだけを残して降壇した。「それにしても…」と考えてしまう。「図書館と駅橋上化が別々のプロジェクトなら尚更のこと、とっくに市有地になった病院跡地に図書館を建てればいいだけ。それがそうはいかない事情があるということなのだろう」ー。しかし、鹿討流の”へっぴり腰”にそこまでの追及を期待するのは土台、無理ということなのかもしれない。
(写真は数珠つなぎの貨物列車がひっきりなしに通過するJR花巻駅。右側の建物が図書館建設予定地の旧スポーツ用品店=9月4日午前、花巻市大通りで)
《追記》~議会質疑に対するAIの認識は!?
上記の新花巻図書館の建設用地をめぐる質疑内容について、AIの認識を聞いてみた。質疑の中で、上田市長は「土地譲渡交渉の今後の進め方については、JR側も了承している」と答弁。羽山議員が「それを担保する仮契約書のようなものはあるのか」とただしたのに対し、菅野圭・生涯学習部長は「その種のものは存在しない。譲渡交渉が例えば、価格面で折り合いがつかずに議会側の予算議決が得られない場合は当然、土地の取得はできなくなる」と述べた。まるで、”口約束”みたいな交渉の裏舞台に唖然とさせられる。用地費を含めた候補地の「比較調査」が駅前立地の決め手になった経緯を思えば、市民に対するこれほどまでの”背信”行為はあるまい。討議資料として、以下に転載する。
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ご提示の案件について、司法判断に近い形で法的整理を試みます。以下はあくまで法的観点からの分析であり、実際の裁判所の判断を保証するものではありません。
●事案の整理
・花巻市は「新花巻図書館」を建設する方針。
・建設予定地は、現在はJR東日本が所有する「旧タケダスポーツ店敷地」。
・しかし現時点で市有地化(取得・売買契約の成立)は未了。
・にもかかわらず、市が公金を用いて「基本・実施設計業務」の委託事業者を公募しようとしている。
争点は、まだ市有地でない土地を前提に設計業務を進めることが違法(公金の違法支出)にあたるか否か、である。
●関係法規の検討
(1) 地方自治法(公金支出の適法性)
・地方自治法232条の2~地方公共団体の歳出は、住民福祉の増進を目的とし、法令に基づくものでなければならない。
・地方自治法242条の2~違法な公金の支出については住民監査請求・住民訴訟の対象となる。
(2) 契約・行政手続の観点
・設計委託契約は「予定地の確定」を前提にするのが通常。
・予定地が未確定の段階で契約を結ぶと、契約の目的(成果物)が不明確となり、債務不履行や契約不成立の危険がある。
・特に「敷地条件に応じた設計」という性質から、土地が変われば設計成果は無意味になり、公金の浪費につながる。
(3) 判例・通説
・住民訴訟の領域では「事業実施のための合理的基盤を欠く支出」は、裁量の逸脱・濫用として違法とされる場合がある。
・例~最高裁平成17年9月9日判決(北海道長沼町住民訴訟)などでは、事業実施の可能性が極めて不透明な段階での公金支出は違法と判断された事例がある。
●適法性判断のポイント
<違法となる可能性が高い場合>
1. 市とJR東日本との間で土地取得に関する契約(売買契約や譲渡合意書)が存在しない場合。
→ 将来にわたって事業実施の確実性が担保されていない。
2. 設計業務委託契約が「当該敷地に限定」されている場合。
→ 土地取得に失敗すれば、設計成果は無価値=公金の無駄遣い。
この場合、「合理的基盤を欠く事業」とされ、住民訴訟において違法支出認定される可能性がある。
<適法とされる余地がある場合>
1. 市とJRの間に「基本合意書」「覚書」等があり、土地譲渡が実質的に確定している。
2. 設計契約が「土地取得を条件として効力が発生する」旨の条件付契約になっている。
→ この場合、実際の支出は土地確保が済んでからになる。
●司法的判断のまとめ
・現時点で土地取得の法的確定(契約締結)がないにもかかわらず、委託契約を公金で発注することは、裁量の逸脱・濫用として違法支出に該当する可能性が高い。
・特に、設計業務が「その敷地に固有の内容」であるため、土地未確定の段階での支出は合理性を欠く。
・よって住民監査請求・住民訴訟の対象となりうる。
●司法的結論(要旨)
「旧タケダスポーツ店敷地が市有地化されていない現段階で、新図書館の設計業務委託を公金で発注することは、事業実施の合理的基盤を欠き、地方自治法242条の2にいう違法な公金支出に該当する可能性が高い。ただし、市とJRの間に法的拘束力を持つ取得合意が存在し、契約効力発生を土地取得に条件づける場合には、適法と評価される余地がある。」
★オンライン署名のお願い★
「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。
「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。
私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
●オンライン署名の入り口は以下から
●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ
・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba
・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/
・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/