「設計を請け負った側もある意味で、被害者かもしれない」―。新花巻図書館の設計業務を受託した「昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体」(JV企業体)に対し、選定に至るまでの経緯を5月12日付で公開の形で質問していたが、求めていた期限(5月31日午後5時現在)までに回答はなかった。しかしその一方で、新図書館の「駅前立地」に至る経緯について、行政側が受託者側にきちんと説明してこなかった疑いが強まり、肝心の設計業務が逆に歪められたのではないかという新たな闇(やみ)が浮き彫りになってきた。
新図書館と背中合わせの位置に建設される「JR花巻駅橋上化」事業(東西自由通路)は6月8日に起工式を迎え、2028(令和10)年秋ごろの供用開始を目指している。一方、新図書館のオープンは2030(令和12)年が目途とされており、順調にいけば4年後には合わせて総額100億円近くに及ぶ二大プロジェクトが駅前にお目見えすることになる。ところが、駅前の光景を一変させるこのプロジェクト建設をめぐって、不可解な出来事が舞台裏で相次いでいた。
「花巻駅の既存駅舎、計画されている東西自由通路の図面があれば提供していただきたい」、「JR東日本花巻駅と屋根や空中デッキなどで接続することを計画してもよろしいでしょうか」、「花巻駅と図書館の二階レベルを接続するような計画はありますか」―。新図書館の設計業務にかかる公募プロポーザルに応募した企業体からこんな質問が相次いだ。建築設計のプロフェッショナルとしてはある意味、当然の“プロの目”と言える。これに対し、市側は「別の計画として、提案願いたい」と突っぱねた。
この問題は令和7年9月定例会の一般質問でも取り上げられ、当時の上田東一市長はこう答弁した。「東西自由通路、橋上駅と図書館はそうではないという方いましたけれども、別のものなのです。別々に進めてきたのです」(会議録から)。上田市長は同じ議会答弁でこうも述べている。「新花巻図書館の整備に関しましては、市が旧スポーツ用品店敷地に図書館を建てることを前提として、JR東日本が、それが条件になっているということです、図書館造らないと売ってくれないのです」(会議録から)
「(図書館と橋上化とは実は)ワンセットであるが、別物である」―。絵に描いたような“二枚舌”ではないか。この二つの事業がJR主導で進められてきたという事実を市民の目からそらすための詭弁(きべん)…(市長の出身大学をもじった)東大話法「ご飯論法」が全開である。いま永田町で大流行(はやり)の高市総理のあれである。
一方で、事業内容が「別物」だとしても(いや、確かにそうであろうが)、この二つの巨大プロジェクトが同じ駅前に背中合わせに並び立つという光景はプロにとって、逆にその相関性が刺激されるのは当然である。今回、設計業務を受託したJV企業体は駅前の賑わい創出のひとつとして、「駅前プラットホーム」構想を打ち出している。しかし、人流に大きな変化を及ぼすであろう「駅橋上化」事業には一切、触れられていない。仮に、この別物論が陰に陽に影響したとすれば行政側が結果として、設計業務を歪めたということにもなりかねない。
「駅前か病院跡地か」―。新図書館の立地場所をめぐって、市民運動の側に民意を問い直すための「住民投票」の実施を求める動きが出ている。公開プロポーザルの際、JV企業体は賢治色を打ち出すため、館内の空調施設(ダスト)に「又三郎シャフト」なる命名をほどこした。賢治の物語風土にどっぷり浸かってきた私の肌感覚に合うわけがなかった。ビル群に囲まれた狭隘な立地環境が結局、それを余儀なくさせたのではないのか、と思うことにした。ある図書館愛好者はこう語っている。
「もしそれが事実なら、建築設計のプロ集団のプライドを傷つけたことにもなる。この際、立地場所を賢治ゆかりの病院跡地に変更し、同じJV企業体のプロの手で思いっきり、銀河宇宙をデザインしてほしい。そもそも、この土地は市側が当初第一候補に挙げ、すでに市有地になっている。いまこそ、急がば回れの原点に回帰する時ではないか。霊峰・早池峰山を仰ぐこの地にイーハトーブの未来を描きたい」―。ストンと納得した。市側が新図書館と「駅橋上化」事業が“別物”だと言い募るなら、尚更のこと…
「生まれた土地は荒れ放題、今の世の中/右も左も真っ暗闇じゃござんせんか/何から何まで真っ暗闇よ/すじの通らぬことばかり…」(「傷だらけの人生」)―。鶴田浩二が耳元で唸っている。
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2026年5月12日
「昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体」殿
元花巻市議会議員 増子 義久
〈公開質問状〉~新花巻図書館の設計業務について
新花巻図書館の設計業務に日々、精励されておられることに敬意を表します。貴共同企業体は公募プロポーザルに応募した61企業体の中から選ばれたプロ集団で、当市のシンボルである公共図書館の設計業務を貴企業共同体に委ねることができたのは一市民としても大きな喜びです。
そんな中、市側が一方的に進めようとする「駅前立地」の経緯については今なお、疑念を抱く市民は少なくありません。「民主主義の砦」とも言われる公共図書館の未来に禍根(かこん)を残さないためにも以下の諸点についてのお考えをお聞かせいただければ幸いです。この2月に就任した小原勝市長はすでにメディアなどを通じて、駅前立地の実現を内外に表明している折柄、市民の疑念を払拭することが喫緊(きっきん)の課題になっています。お忙しいところ恐縮ですが、今月末(5月末日)までに文書(メール)にてご回答をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
記
1)新花巻図書館の「駅前立地」に至る経緯について、市側からどのような説明がありましたか。もしあったとすれば、「旧花巻病院」跡地への立地を求める、いわゆる“立地”論争への言及はありましたか。また、建設予定地のJR所有地が未だに市有地として、取得されていないという事実については知らされているでしょうか。
2)「業務委託契約書」(建物配置案の作成)の項に「図書館建物と既存及び現在計画中の周辺施設等との調和を考慮し…」という記述があり、計画中の施設の中には今月7日から仮工事が始まった「JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)」事業も含まれています。
ところが、令和7年11月24日に行われた「公開プレゼンテーション」においては、駅橋上化事業についての言及は一切、ありませんでした。そもそも、建築設計のプロフェッショナルが背中合わせに並び立つ二大プロジェクトの相関性に無関心なのは余りにも不自然に思います。この立ち位置の違いの背景に何があったのか、ご説明をお願いします。
3)同じ「業務委託契約書」の中の設計与条件のひとつに「花巻らしい図書館として、宮沢賢治専用スペースの設置方法について検討するものとする」という記述があります。プレゼン資料の中には様々な工夫を凝らした着想もあります。ただ、そのひとつの「又三郎シャフト」という空調設備(ダクト)については、いわゆる“賢治的”な風土感覚に照らしてみても大きな違和感を抱かざるを得ません。
一方、当市では「ふるさと納税」(旅先納税)のひとつとして、「はなまき星めぐりコイン」(電子商品券)を返礼品に当てています。こうしたある種の賢治“利権”に対しては賢治ファンからも「目に余る」という批判が聞かれます。
「賢治ワールド」は銀河宇宙にまで伸びる広大無辺な「物語世界」(ナラティブ)です。駅前のビルの谷間の中で果たして、本当の“賢治”を演出するのは可能でしょうか。建築設計のプロフェッショナルとしての正直なお気持ちをお聞かせください。
(写真は公開プレゼンテーションに臨んだ「昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体」のメンバー=令和7年11月24日、市文化会館で。市HPに公開された動画から)



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