『毒もみのすきな署長さん』とイーハトーブはなまきの”悪人”列伝…さすがは賢治さんの洞察力~今日は92回目の賢治忌!!??

  • 『毒もみのすきな署長さん』とイーハトーブはなまきの”悪人”列伝…さすがは賢治さんの洞察力~今日は92回目の賢治忌!!??

 

 「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中(むちゅう)なんだ。いよいよこんどは、地獄(じごく)で毒もみをやるかな」―。宮沢賢治の掌編『毒もみのすきな署長さん』の最終部分にこんなセリフが出てくる。毒性のある山椒の実などを川に流し、川魚を漁獲する“違法”行為を実は取り締まる側の警察署長が犯していたという逆転ストーリーなのだが、私は結びの一文に思わず虚を突かれ、そして唸ってしまった。「みんなはすっかり感服しました」―

 

 件(くだん)の署長の死刑が確定し、処刑が下される時がきた。冒頭の最後のセリフの直前の表情を賢治はこう描写している。「いよいよ巨(おお)きな曲った刀で、首を落されるとき、署長さんは笑って云いました」―。罪を悔いるどころか、あの世に行っても毒もみを続けると豪語する、この大悪党の振る舞いに周囲の目は怒りを通り越して、「感服」してしまうという筋書きである。何となく、既視感のある光景ではないか。「コンプライアンス」(法令遵守)などはどこ吹く風…断頭台の露と消えた哀れな署長の姿が現在進行形の足元の光景と二重写しになった。

 

 現在、「公募プロポーザル」方式によって、新花巻図書館の基本設計・実施設計を担当する受託業者の選定作業が進められている。これまでに53業者が応募し、今月26日に5業者に絞ったうえで、12月3日には最終決定する段取りになっている。その一方で、この方式をめぐっては建設予定地(JR花巻駅前)が市側に正式に譲渡される以前に必要経費が予算化されるなどその“違法性”が議会側から指摘されたほか、市側と一般財団法人「青葉工学振興会」との間で結ばれた委託研究契約書の中で、肝心の委託研究の実施者の氏名が非公開になるなど不透明な部分が多い。こんな折しもにわかには信じられない事態が起きた。

 

 「昨日(18日)、庄子賢一衆議院議員、佐々木まさふみ参議院議員及び菅原ゆかり市会議員のご案内で、中野洋昌国土交通大臣に新花巻図書館整備に関する都市再生整備計画の採択と補助予算を要望いたしました」―。9月19日付の上田東一市長のFB上にこんな内容の記事が参加者全員の写真とともに掲載された。オヤっと思った。花巻市議会は現在、9月定例会(9月5日から10月1日までの27日間)の開会中で、その当日(18日)は菅原議員(公明党)も所属する「花巻市議会議員報酬調査特別委員会」の小委員会(高橋修小委員長ら8人)が予定されていた。議会事務局側に確認した結果、菅原議員はやはり欠席していた。

 

 「花巻市議会議員政治倫理要綱」(平成26年3月=議会告示)は「議員は、次に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない」として、以下のように定めている。

 

 

●「市の行政庁の処分又は市が締結する売買、賃貸借、請負その他の契約に関し、個人、特定の企業、団体等を推薦し、紹介する等その地位を利用して有利な取り計らいをしないこと」(第3条の1-3)

 

●「議員は、政治倫理基準に反する事実があるとの疑惑をもたれたときは、自ら誠実な態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明らかにしなければならない」(第3条の2)

 

 

 菅原議員のこの行為が倫理基準に抵触していることは誰の目にも明らかである。この際、「私費か公費か」などというケチな詮索(せんさく)は必要あるまい。それ以前に議員の本分をそっちのけにし、しかも図書館の「駅前立地」を強行しようとする市側の要請行動に同行するに至ってはもはや、議員としてのその“資質”さえ問われなければならない。

 

 一方、16日付当ブログで言及したように、いまはまさに議員の報酬の引き上げ問題が市民の関心を呼ぶ喫緊の課題となっている。そして、菅原議員自身も最大幅10万円(月額)のアップ案に賛成する立場に立っている。そんなさ中の「市長同行」事件である。「議員に課せられた使命を投げ捨てる一方で、報酬は引き上げて…」ー。この精神構造が私には逆立ちしても理解できない。ところで、当事者の議会側はと言えば…。「政治倫理要綱」(第6条)で「政治倫理審査会」の設置を定めているにもかかわらず、議会内は妙に静かである。不気味なほどに静かである。

 

 ふいに、毒もみがすきな市長さん(おっと失礼)署長さんの立ち居振る舞いがまな裏に浮かんだ。ひょっとしたら、イーハトーブはなまきに巣食う“悪人たち”は「コンプライアンス」(私流に定義すると「道理」という広い概念になる)という言葉さえも知らないのではないか。罪の意識のひとかけらさえも感じられない、あまりにも堂々とした“法令”違反の数々…。市民たちは「善」と「悪」との境界線さえも見失い、目の前の“悪人”列伝に「みんなすっかり感服してしまって」―いるのだろうか。だとしたら、賢治が人生を賭けて追い求めた「ほんとうの幸せ」に背を向ける、これ以上の「不幸」はあるまい。

 

 今日のこの日(9月21日)は賢治の92回目の命日である。公職の地位にある議員をまるで手足のように扱う様(さま)を見るにつけ、失礼どころかむしろ正式に「毒もみ」市長と命名した方がピッタリのような気がする。ちなみに、菅原議員は賢治が一時期、教鞭を取った花巻農業高校(当時は稗貫農学校)の卒業生でもある。どっちもどっち…賢治は自ら名づけた理想郷「イーハトーブ」の衰滅(すいめつ)をとうの昔に見据えていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

(写真は「実施者」の氏名が黒塗りされた開示文書。研究題目には「地域の文化的特性に配慮した図書館計画に関する研究」とある。こんな夢膨らむ青写真を描いてくれる人物の氏名がなぜ、秘されなければならないのか)

 

 

 

 

★オンライン署名のお願い★

 

 

 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。

 

 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。

 

 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 

 

●オンライン署名の入り口は以下から

 

https://chng.it/khxdhyqLNS

 

 

●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ

・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba

 

・ヒカリノミチ通信(増子義久)  https://samidare.jp/masuko/

 

・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」   https://oimonosenaka.seesaa.net/ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.09.21:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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