今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。
◎ 駅員の態度
A氏が出張先へ電車で移動していた時のことです。
乗る電車を間違えてしまい、目的地を通り過ぎてしまいました。慌てて次の駅で下車し、反対ホームに渡る連絡通路を探しましたが、見当たりません。
A氏は、改札口の駅員に「ここは連絡通路がないんですか?」と尋ねました。駅員からは「一度改札口を出てください」とそっけない返事が返ってきたのです。
こちらを一度も見ようともしない横柄(おうへい)な態度に、A氏は一瞬、腹立たしさを覚えました。
しかし、冷静に考えてみると、乗る電車を間違えたのは自分です。いつもなら、よく調べて電車に乗っているのに、今回は出張の準備が万全ではありませんでした。
駅員の態度以前に、自分の尋ね方にも、横柄さがあったかもしれません。
結果的にA氏は、目的地に無事に到着し、仕事に向かうことができました。事前の準備を怠らないこと、また、人の態度に腹を立てる前に、自分自身はどうだろうかと考えてみようと思ったA氏でした。
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<コメント>
人はそれぞれ、出来事や状況に対して、独自の自動思考をすると言われています。
ムッとする⇒腹立たしく感じる⇒怒りに震える⇒怒鳴り散らす⇒ますます怒りに震える、という負の連鎖に陥り、そのことをグチる人も少なくないでしょう。
A氏のように『もしかしたら自分にも非があるのでは?』という内なる質問を自動思考のどこかで出せると、人としての器がひとまわり大きくなりますね。
マイナスの出来事を『自分の中のマイナスを気づかせてくれるチャンス』ととらえ、よい結果(その後の仕事がうまくいくかどうか)につなげたいものです。
◎ 本音と建前
朝礼の中で、挨拶や返事の実習を取り入れている会社も多いことでしょう。
接客のための美しい動作を修得する意味もありますが、それ以上に大切なことは、接する相手に対して敬意を高めることにあります。
Tさんが休日に自宅にいた時のことです。宅配便で荷物が届いたものの、掃除中だったため、応対するまでに少し時間がかかってしまいました。
急いで玄関に向かい、ドアノブに手をかけた時、ドアの向こうから「早くしろよ」という呟(つぶや)きが聞こえたのです。
Tさんが、さらに驚いたのは、ドアを開けた時でした。先ほどの呟きからは想像できないほど、見事なお辞儀と笑顔で、きちんと挨拶をしてきたのです。
腹が立つよりも、唖然として荷物を受け取ったTさん。挨拶の形が見事だっただけに、本音と建前を使い分ける態度に、余計に違和感を覚えたのでした。
行為の器は、それにふさわしい思いを注がなければ用をなしません。朝礼での挨拶、返事の練習の際には、形と共に、美しい心を育んでいきたいものです。
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<コメント>
こわいですね、やってるかも~、って感じです。
宅配の人たちは、1秒を惜しむようにまさに走って荷物を届けてくれますものね。そんな時「ハ~イ」と言っておきながらなかなか出てこなかったりすると、つい、こういう呟きがでてしまうのでしょう。
そう思うのはしょうがないとして、たとえ小さい声だとしても、絶対に外に漏らしてはいけませんね。
一生懸命やっている自分。それはそれでもちろんすばらしいけれど、自分にばかりフォーカスしてしまうと、呟きはやがて抑えきれなくなってしまうでしょう。
伊達政宗公のおもてなし心得を読んで感銘を受けました。
「もてなすお客の身分が高かろうと低かろうとたくさんの料理を用意することは無用である。亭主自身がつくり、亭主自身が運ぶことこそ真のもてなしである」(要約してます)