土台、柱、梁(はり)、母屋(もや)、垂木(たるき)などの骨組みに使用する木材を構造材と呼びます。
敷居(しきい)、鴨居(かもい)、長押(なげし)、床や壁の板類、戸棚などに使用する木材を造作材(ぞうさくざい)と呼びます。
写真のような造作工事は、正確さと丁寧さが要求されます。出来上がると目に触れる部分なので、やりがいはありますが、几帳面な性格でないとできない仕事です。
ところでこの「几帳面」という言葉は、まさに職人さんの仕事ぶりが語源となった言葉のようです。
几帳面の語源は、平安時代、室内で貴人の座るそばに立て、間仕切りや風除けに用いられた家具「几帳(きちょう)」である。
この几帳の柱の表面を削り角を丸くし、両側に刻み目を入れたものを「几帳面」といった。
几帳面は、細部まで丁寧に仕上げてあることから、江戸時代以降、現在の意味として使われるようになった。
語源由来事典(http://gogen-allguide.com/)より
職人さんもそうですが、設計者も仕事に対しては常に「几帳面」でありたいものです。
職人さんは「几帳面(きちょうめん)」
「乾式」から「湿式」へ
内装材として最もよく使われている材料は、石膏ボードでしょう。(写真は下地材に石膏ボードを取り付けている途中です。)
乾式工法(工場で生産されたボードやパネルを取り付ける工法)として施工性もよく、そこそこの強度と防火性能があり、しかも安価です。
もともと壁はその土地でとれる材料で塗り上げていたはずで、土物壁に代表されるような湿式工法が主流でした。
しかし、工業化や施工性・コスト性を追求するにしたがって、全てにおいて「湿式」から「乾式」へ移行してきているように感じます。
かつてはその腕を競い、職人の中でも一目置かれていた左官職人さんも、ずいぶんと数が減ったのではないでしょうか。
高度成長とともに急速に進んだ「乾式化」によって、我々日本人の心も乾いてしまったような気がします。
しかし、これから迎える「心の時代」では、みずみずしく潤った心が必要です。
もう一度「湿式」の良さを見つめ直す時が来ています。
床と五感の相関関係!?
写真は無垢(むく)のフローリングを張っているところです。
表面だけ木を張った合板フローリングもありますが、無垢材は重厚さが伝わってきます。
同じフローリングでも、材質や色調で随分と違う印象を与えるものです。
さて、私たちの体が一番触れる住宅の部位はどこでしょうか?
それは床ではないでしょうか。
そして、人間の五感に一番働きかける部位も床だと考えられます。
畳を例にとりましょう。
見た瞬間にくつろぎ感が視覚にうったえ、足のすり音が聴覚にうったえ、織り目の起伏感が触覚にうったえ、イグサの匂いが臭覚にうったえます。(さすがに直に味覚にはうったえませんが、日本料理を食べるときには和室を連想させます。)
日頃あまり意識しない五感ですが、ちょっとだけ五感を働かせ、家の中でそれぞれどのように感じているのかを意識してみてはいかがでしょう。
きっとおもしろい発見があるかもしれません。
高断熱だけでは語れない、人と地球に優しい住宅
地球温暖化対策、省エネルギーの観点から考えると、住宅における断熱性能の向上は必要不可欠です。
特に北国における、室内間の温度差が誘発する脳梗塞対策としても同様です。
断熱材とは、名前のとおり外部からの熱の出入りを断ち切るものです。
しかし、夏や冬はその効果が顕著ですが、中間期といわれる春や秋は、逆に外部の熱をとり入れるほうが効果的な場合もあります。
元来日本人は、この自然の摂理を上手に利用してきました。
伝統的な日本家屋は屋根をかけ、軒やひさしを出して夏場の日差しを遮断します。
冬場(晩秋)には、高度の低いやわらかい日差しが家の中まで入ってきます。
中間期には家の窓を開け放ち、心地よい風が通りぬけます。
この考え方をパッシブと呼びます。(これに対して、空調機や換気扇を利用することはアクティブです。)
近年、高気密高断熱(本来は高断熱が重要で、高気密ありきには異論があります。)を唱える住宅が増えていますが、軒やひさしもなくのっぺりとした外壁に、サッシだけがついている住宅をよく見かけます。
しかし、軒やひさし、樹木などの遮熱性を上手に活用し、自然のエネルギーを最大限利用することが肝要だと考えます。
風が通る心地よい空間と、しっかりした断熱性・遮熱性とのバランスの良さが、人と地球に優しい住宅だといえるでしょう。