台所で妻が素っ頓狂な声を発した。
「キャーっ」
「ん? 何事?」
「これ見て。最初はシールをくしゃっと丸めたものだと思ったんだけど、動いてる」
なんと、珍しい! この時期にモンシロチョウでした。
羽化に失敗して羽が伸び切らず、くしゃっとしているため、妻がシールを丸めたものと
間違えるのも無理のない姿でした。
福島県郡山市在住の義理の弟は、最近畑作業に目覚め、実に多品種の野菜栽培を行って
います。妻が帰省するたびにそのご相伴(しょうばん)に預かっており、今回の
モンシロチョウ誕生も、いただいた白菜に潜んでいた青虫がそのルーツと思われます。
白菜から脱走し、どこかでさなぎになり、いつの間にか蝶になっていたのです。
部屋の中が温かかったから、春到来と勘違いしたのでしょうか。
そして、生まれたての元気の良さがあり、飛べないながらも一生懸命歩き回るのです。
その姿がいじらしく、マレ(稀)という名前を付けました。
「失ったものを数えるな、残された機能を最大限に活かそう」
パラリンピック精神を代表するこの言葉が、マレのけなげな姿に重なりました。
「何日生きられるかわからないけど、好きなように思った通り生きてごらん」
朝起きて、マレちゃんは元気かな? とのぞき込み、元気なマレちゃんを見て安心する
という日が何日か続きました。
これまで虫を飼ったことは何度かありましたが、名前を付けたのは初めて。
そしてここまで感情移入し愛を捧げたいと感じたのも初めてでした。
結局5日間ほどではありましたが、その命を燦(さん)と輝かせたマレ。
命のバトンをつなぐことはできなかったけど、心に残る「はたらき」をしたよ。
ありがとう、マレ。安らかに。
さて、先行き不透明な年が始まりました。
オリンピック・パラリンピックは開催される、とひとまず信じ、テーマとしました。
今年も1年間、どうぞよろしくお願いいたします。
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