最上義光歴史館

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木立に囲まれるような場所にあるカリヨン。35鐘で構成されています。

 当館と隣接する美術館との間の、あまり人気(ひとけ)がない場所に、結構立派なオランダ製のカリヨンがあります。カリヨンとは、音階の異なる鐘が鳴り響くもので、世界カリヨン連盟の規約では「調律された23個以上のブロンズ製の鐘で、バトン式キーボードで演奏する楽器」と定められ、自動演奏も含まれます。鐘にはベル型やチューブ型があり、鐘数が多いものはチューブ型が多いのようです。カリヨンは全国各地にありますが、23個以上の鐘があるものは少なく、ベル型で25鐘ある霞城公園のカリヨンは、実は全国有数の規模のものです。
 ここのカリヨンは春夏秋冬で曲がかわり、一日5回×年4回の20曲がプログラムされています。恐らく既製のものからの選曲なので、ご当地の曲、例えば花笠音頭とか県民歌とかはなく、クラッシック音楽と唱歌とが半数ずつ選ばれています。
 クラッシックは、なぜかシューベルトの曲だけ4曲もあって、それに唱歌の選曲などからも、ちゃんとした音楽環境にあった人が選曲したことが伺えます。特に音楽教育関係者は、シューベルトを必修とし、唱歌を次々と口ずさむことができるのです。特撮ものや深夜放送ばかりで育った私のような者にとっては、このシューベルトや唱歌などの素養は身に付かず、それでも、いい年になってから、あの曲のいわれはどうだとか誰の演奏はこうだとか、蘊蓄をはじめるわけです。
 ではここから、その蘊蓄を。
そのカリヨンで奏でられるクラッシックの楽曲としては、シューベルトの他にムソルグスキーの「展覧会の絵」とかビバルディの「四季」などがあり、それは「プロムナード」からだったり「春」からだったりと、ごく当たり前の部分が奏でられるのですが、モーツアルトのピアノソナタ第11番「ロンド・ア・ラ・タルッカ」いわゆるトルコ行進曲で有名な曲ですが、これはなぜか第1楽章、そう、ソナタだけど変奏曲というあの曲が奏でられます(もちろんカリヨンでは変奏部分までは流れませんが)。また、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」もありますが、普通ならば素直に第1楽章からもってくるところですが、このカリヨンでは第5楽章「羊飼いの歌。嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気持ち」が前奏付きで奏でられます。この辺がやはり音楽の造詣が深い方のなせる業なのでしょう。
 ところで、ベートーヴェンには「田園」と呼ばれるピアノソナタもあります。ピアノソナタ第15番ニ長調 作品28です。先日、天皇陛下も鑑賞したという仲道郁代さんのリサイタルでは、ピアノソナタ第13番と第14番「月光」が演奏されましたが、これと同じ年に第15番も作曲されています。ちなみに仲道さんにとって第15番「田園」は、桐朋学園高校入試の課題曲とのことですが、ベートーヴェンのピアノソナタはピアノ曲集の新約聖書とも呼ばれていて、普通は卒業発表とか大学入試とかのレベルの曲です。同校の現在の入試課題曲は、バッハの平均律(これはピアノ曲集の旧約聖書と呼ばれています)とモシュコフスキーまたはショパンの練習曲となっています。というか、こちらも普通は大学入試レベルの曲ですが。もちろん「熱情」とか「革命」とかを力技でバリバリに弾く中学生もいるにはいるのでしょうけど。
 仲道さんの第15番「田園」のCDには「ピアノソナタを巡る対話〜諸井誠&仲道郁代レクチャー・コンサート」の様子が収めてあります。仲道さんの部分演奏も交えての大変興味深いもので、まず「この曲の出だしはショパンの「雨だれ」と同じ」というのはわかるのですが、「この曲はソナタ前期のしめくくりであり、ソナタ後期のはじまりとなる」という話には、なんかそうなんだろうなぁとなり、和音の調性や主題の展開の話に続き、「第1楽章の第2主題はどこから始まる」という話では、かなり具体的な説明にもかかわらず素人の私には見当もつかず、その話からの「知らないで弾くということは恐ろしいことで」という仲道さんの言葉は、そのまま「知らないで語るということは恐ろしいことで」と言われているようで、すみません、反省します。

(→館長裏日誌へ)