平成21年10月1日より、住宅瑕疵担保履行法がスタートし、事業者の住宅瑕疵保険加入が義務づけられました。この保険は、新築住宅を購入する消費者を守るための保険です。 この保険の申込にあたって、建設会社等が建築基準法を遵守し施行することはもちろんですが、適切に地盤の安全性の判断がなされていることを確認するため、地盤調査報告書またはこれに代わる書類の提出を求められます。 新築する際、基礎から建物の工事に係る費用は、見積もりで提示されるものの、地盤調査での結果で、地盤改良が必要となった場合の工事費は、結果次第となり、別途という形になります。当初イメージしていた予算より大幅にオーバーしてしまい購入を断念するケースや、簡易な調査に頼って、 完成後に、住宅が傾いたりするなどのトラブルに結びついている例もあるようです。 そこで、宅地地盤にまつわるトラブルが発生しないような住宅の求め方について、山形県内で唯一の地盤品質判定士として地盤調査・解析を行っている株式会社金内勝彦設計工房(地盤調査部:アースレイズ山形)の金内勝彦代表にお聞きしました。
新築住宅を供給する事業者には、住宅のお引き渡しから10年間の住宅瑕疵担保責任保険が平成21年から義務付けられました。その中で、地盤調査報告書の提出が求められています。 そもそも「地盤調査・解析」と、調査によって必要となった場合に行われる「地盤改良工事」は分離して考えるべき内容であり、できればお互いが利害関係のない立場同士がするべきことです。本来、木造戸建て住宅ではその改良工事が不要な場合が多く、逆に改良工事をすることで、後々大きなリスクを持つ可能性も出てくることを理解しておくべきであり、施主には伝えるべき大事な内容になります。
少なくとも建物配置図・平面図・基礎伏図などが揃った時点で、建物四隅を調 査し、データの解析結果から、地盤改良工事の必要か否かが判明するので、建 築設計時にはわかりません。また、改良工法や建築規模によっても大きく変わり ます。 あくまで参考としてもらいたいのですが、30〜40坪の木造2階建てであれば、 70万円〜百数十万円程度と考えていただければと思いますが、場合によっては 200万円とかもあると聞いています。
戸建住宅の場合は、スウェーデン式サウンディング試験で調査するのが一般的です。しかし、あくまで簡易であるため信用度が高くありませんし、まず土質がこの調査ではわかりません。また、調査の効率化を進めるあまり、自沈層での判断が過剰になってしまう場合も少なくありません。そこで、私たちはハンドオーガーボーリング調査という手動で行うボーリング作業での調査で、土を採取し、土質はもちろん含水比なども計測し総合的な判断を行って施主様に報告書の提出をします。
中古住宅の場合は、地盤調査をしていない物件が多いので、インスペクション(住宅診断)によって、建物や外構などに軟弱地盤が要因と考えられるような傾きやひび割れなどの症状が出ていないか確認します。確認できない場合は、建物の近くで調査をする場合もあります。もし、問題がある場合でも、地盤沈下の進行度合いによっても対策は変わってきます。
中古住宅を求めてから、徐々に建物が傾きはじめてしまった時でも、建物の修正と地盤補強によって改善は可能ですので、施工会社等に相談しましょう。
地盤調査は、あくまで建築する場合に、不同沈下や液状化など地盤に適した対策をみつけることが目的であって、地震対策ではありません。改良工事も調査結果から適した工法を用いるものの、鉛直支持力といわれる縦の力には強いですが、水平外力である横揺れのような力には強くありません。
最初にお話した通り、建物配置図・平面図・基礎伏図などの設計が終わった時点で調査ができるものです。建て替えや更地にして土地を販売する場合は、改良工事で入れた杭などを取り除く必要が出てきます。その作業費は改良工事の1.5〜2倍の費用が掛かる場合がありますので、本来ならば、生活スタイルから長期的に考えることも必要かもしれません。 近年、瑕疵保険の義務化による地盤調査の増加と共に改良工事判定が増え、データ自体も過剰判定なっているといわれています。建設会社や住宅会社に相談し、信頼の置ける調査会社、改良工事会社を選んでください。
イメージ的には、地震対策ともとれる地盤改良工事ですが、本質は全く違います。また、改良工事はしないに越したことはありません。そのためには、調査会社と改良工事会社に利害関係がなく、改良工事ありきの判断がされないように、業者選びはしっかりとしたいものです。