山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』

  • 山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』
  • 山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』
  • 山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』
  • 山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』
  • 山と人の物語 vol.3 『一本の木が、命をつなぐ ~山から薪ストーブへ~』

はじめに

山に立つ一本の木。
それは、ただの“木材”ではありません。
人の手によって選ばれ、伐られ、整えられ、そして“薪”として新たな命を吹き込まれる──。
今回は、一本の木が人の暮らしにぬくもりを届けるまでの道のりを追ってみたいと思います。


山の中で、その木は選ばれる

森の中に立ち、一本の木を見定める。
それは私たちにとって、最初の大切な仕事です。

間伐であれば、混み合った樹木の中から、成長を妨げる木を選びます。
皆伐の場合でも、地形や水の流れ、後の植林のことまで考えて、一本一本に目を向けます。

木を倒す瞬間には緊張感が走ります。
周囲の安全、木の倒れる方向、風や地面の状態──
自然を相手にする私たちは、常に謙虚でなければなりません。


命を活かすための手入れ

伐られた木は、すぐに次の工程へと進みます。
枝を払い、一定の長さに玉切りし、用途に合わせて造材していきます。
これらの作業は、薪の品質を左右する“命を活かす”手仕事です。

チェーンソーやハーベスターなどの機械を使いながらも、最終的な判断はすべて人の目と感覚。
太さ、曲がり具合、節の位置、樹皮の状態──
細かな観察と経験が物を言います。

山の中で加工された木は、フォワーダやトラックで土場へと運ばれます。
その時点でようやく、「木」が「資源」として新たな旅を始めるのです。


乾燥という“待つ技術”

薪づくりにおいて欠かせないのが、「乾燥」です。

含水率が高いままでは火がつかず、煙やタールも発生しやすくなります。
そのため私たちは、自然乾燥に時間をかけるほか、必要に応じてキルン(人工乾燥機)を使い、一定の品質を保ちます。

乾燥の過程は、一見地味ですが、実はとても重要な工程。
「薪がパチパチと心地よく燃えるかどうか」は、この“待つ技術”にかかっているのです。


届ける、その先の笑顔

乾燥を終えた薪は、いよいよお客様の元へ届けられます。

配達スタッフが現場に伺い、直接薪を運び入れると、
「今年も待ってました!」「よく燃えて暖かいです」といった声が聞こえてきます。

その一言が、現場で働く私たちにとって何よりの励みです。
山で伐った木が、誰かの生活の一部になる──
そう思うと、一本の木の持つ役割が、ぐっと大きく見えてきます。


おわりに

一本の木は、森を整え、薪となり、誰かの心と体をあたためる。
それは決して使い捨てではない、循環とつながりの物語です。

次回は、「薪の品質とこだわり」について、
より具体的な技術や視点を交えながら深掘りしていきます。

どうぞ、お楽しみに。

2025.05.06:yamagata-maki:[新着情報]