鈴鳴草子 〜鈴の宿 登府屋旅館〜

兼続  「そういえば、先週、NHKで輝虎さまを見かけましてございます。」

景勝  「スタジオパークじゃな。」

兼続  「天地人の裏話など、話しておられました。」

景勝  「うむ。カツラの話は、わしも驚いた。なんでもプロデューサーどのが『髪の毛一本一本が筋肉の筋のようなカツラ』と依頼したそうじゃの。」

兼続  「左様でございます。おかげで輝虎さまのカツラには、通常の2倍の毛が使われているそうでございます。」

景勝  「輝虎さまには、驚かされっぱなしじゃ。」

兼続  「第1話でございますか。」

景勝  「斬りかかったわしを許すだけでなく、子になれとおっっしゃるとは。」

兼続  「当時、お屋形様の周りでは、お父上を輝虎さまが殺したという輩もおりました。」

景勝  「うむ。わしも最初はそうかもしれんと思った。しかし、聞いてしまったのじゃ。」

兼続  「何をでございますか。」

景勝  「輝虎さまが、自分は人間であると。人間であるから、つらいことや苦しいこともあると。」

兼続  「輝虎さまといえば、毘沙門天の生まれ変わりとだれもが申します。その輝虎さまがでございますか。」

景勝  「うむ。戦国大名は、自分を神と言いたがる。」

兼続  「あの独眼龍・伊達政宗も不動明王を見ながら『梵天丸もかくありたい』と言っておりました。カリスマ性を高めるがためにはしかたなき事かと。」

景勝  「しかし、輝虎さまは、違うのだ。自ら人間とおっしゃられた。そこに胸打たれ、輝虎さまの人間性に触れ、わしは子となったのだ。」

兼続  「輝虎さまは、人間性もさることながら、活躍の幅もすばらしいですからね。」

景勝  「左様。天地人の次は『坂の上の雲』じゃ。そういえば、以前、アニメの声優もしておられた。」

兼続  「はて、なんという作品でしょう?」

景勝  「映画版・北斗の拳じゃ。ケンシロウ役をしておられる。」

兼続  「これはしたり。それで北斗の七星にこだわるわけですな。」

景勝  「うむ。お主も気をつけよ。油断しておると、『阿部ちゃんに突かれてアベシ死兆星』となってしまうぞ。」

兼続  「おそろしや。まだまだ我が生涯に一片の悔いなしというわけにはまりませぬゆえ、肝に銘じておきまする。」





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