年末に興味深い獅子頭が出てきたので落札した。
手中にして密かに自分へのお年玉の獅子頭と喜んでいる。
落札した獅子頭
2016年5月13日に南陽市漆山の漆山神社の獅子頭の取材を行なっていて、この獅子頭の同型の獅子や
特徴や作者を調べていた。
漆山神社の獅子頭 軸棒の周りに描かれた輪模様が共通している
そうすると獅子頭の印象は目に焼き付いて、オークションで今回の獅子頭を見た瞬間「似ている!」と
私の獅子センサーが反応したのだった。2016年取材時の獅子の写真と照合しても、確かだった。
漆山神社の獅子頭 頭部の内部は漆塗は無い。顎の下には黒い塗
落札の獅子も同様
残念ながら漆山神社と落札した獅子頭には記名が無いが作風は酷似している。
では手中にした獅子は何処の神社の獅子頭だったのだろうか?
記憶を辿ると・・漆山神社を兼務し案内していただいた島貫 満氏は南陽市羽付稲荷神社の宮司で
管理する稲荷神社の獅子頭が盗難にあったという話を思い出した。
盗難のすぐ後、新しく池黒の宮大工の高橋良吉氏に獅子頭を制作してもらったという。
高橋氏の獅子頭の記名には昭和46年とあったので、盗難にあったのは昭和44年頃だろうか?
落札した漆山神社と同型の獅子頭は羽付稲荷神社の盗難にあった獅子頭の可能性があるので
島貫氏に確認してみようと考えている。
独特の耳の下の模様
落札した獅子頭の目は真鍮か銅を打ち出された造りで蛇の目である。舌は簡略化された造りで細い紐
で取り付けられた痕があり、一木造りだが厚みも薄く、数多くの獅子舞に耐えうる太神楽の構造では無い
印象である。
目も舌も明治大正期に全国的に多数伝播した名古屋型の宇津権九郎型の獅子に見られる飾り獅子の簡略技法だ。
耳の軸棒には丸い和紙が十枚ほど重ねられ、擦れ止めになっている。タテガミは丸棒に取り付けられ無理矢理
感が漂う。カミキリムシやキクイムシ類の侵食穴や修理痕もあり、現在も生存している様子もあって修復の必
要がある。
どうやら手間暇が掛かる楽しみ十分のお年玉になってしまったようだ。
川西町の尾長島の光玉寺所蔵の文殊尊の獅子頭には江戸期「弘化三年(1846) 弥六」と記名のある獅子頭があ
り、目には金属が取り付けられ頭部内部の未塗装や作風が類似している。また同町東大塚の須貝家所蔵の獅子頭も
同様である。
その後、年明け8日に7年ぶりに羽付稲荷神社宮司の島貫氏に連絡してみると、こう言う話だった。
島貫氏は獅子頭盗難にあった昭和46年頃、今から51年前は学生で盗難にあった獅子頭は見た事が無く、写真も無
いと言う事だった。父親の先代の宮司が取り仕切っていた時代でもあり確認する手掛かりも何一つ無かったのであ
る。2016年稲荷神社に案内された時、神社までは鬱蒼とした山の険しく細い参道で息を切らせて到着した記憶が
ある。盗人も同じ道を辿ったのだろう。もはや、どんな経緯があったか誰も知る由もない。
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