親業の講座を受講した病棟勤務のAさんから聞いた話です。
入院して食事療法している小学校5年生の優子ちゃん(仮名)は、 TVCMのお菓子を食べていつも怒られていたんです。
病棟にいるお医者さんも看護師さんも私も
「絶対に食べてはダメ!」
と言っているのに、優子ちゃん(仮名)はどうしても我慢できないのか、隠れてお菓子を食べてしまうのです。
「また食べたの?」
「どうして言うことを聞かないの。」
「いつまでも退院出来ないわよ。」
可哀想だとは思いつつ、私もみんなと同じような言葉を、優子ちゃん(仮名)に言っていました。
でも私は、ふと思ったのです。
『優子ちゃん(仮名)は、本当にTVCMに出てくるお菓子を食べたいのだろうな。
私だって太るからやめようと思っても、ダイエットは明日から!と言って食べてしまうのだから。』
そんなときトイレの片隅でチョコレートを食べている優子ちゃん(仮名)を見つけました。
そして、ちょっとだけ不憫に思えたのです。
『よほどチョコレートが食べたかったのだろうな。』と優子ちゃん(仮名)の気持ちを感じることができたのです。
優子ちゃん(仮名)の気持ちがわかると、
「どうしてもそのチョコレートが食べたかったのね、CM見ると食べたくなるものね」
と、思わず優子ちゃん(仮名)の気持ちをわかったよという言い方にしていました。
その瞬間は優子ちゃん(仮名)はきょとんとした顔をしていました。
驚いたのはすぐに
「看護師さんごめんなさい。もう絶対に食べないから」
と優子ちゃん(仮名)が、泣きながら謝ったのです。
優子ちゃん(仮名)はそれから間食をしなくなり、まもなく退院していったそうです。
優子ちゃん(仮名)に対してAさんは、相手の気持ちをくむ聞き方(能動的な聞き方=アクティブリスニング)をしたのです。
前回説明したコミュニケーションの障害となる“お決まりの12の型”の言い方をしていると、優子ちゃん(仮名)は反発をしていたのに、
優子ちゃん(仮名)の気持ち (チョコレートを食べたい) を理解したよ、
と伝えたことで、優子ちゃん(仮名)自身が、退院するにはどうしたらいいのか気づいたのです。
私たちは、 子どもの気持ちをくむより、
非難したり説教したりして相手を変えようとしていないでしょうか。
相手を変えようとしても変わりません。
そんなときは自分が変わることが必要です。
子どもに親の気持ちをわかってもらいたいと思うなら、親が子どもの気持ちを理解してあげることが必要ではないでしょうか。
思いやりはそこで育ってきます。
私たちが、悩みがあるとき「あの人に話してみたい、聞いてもらいたい。」と思える人はどんな人でしょう。
話を共感的に真剣に聞いてくれた人だと思います。
良い親子関係とは、やはり悩みのあるときこそお互いに聞き合える関係ではないでしょうか。