若者達へ ⑮ある継母のこと 

 さて『白雪姫』には程遠い、『白雪ママ』がいる「自由の家」というスナックがある。そのマスター夫婦に『長井訛り』がないので、「どっから来たんだべな?」って思っていました。それで、「何処で一緒になったなや」とか「息子さんは長井にいんなが」などと質問したらば、人生の重みを知る話を聞かせてもらったので、さら~っとお話します。
 長井出身のママさんは、60年前?に東京の会社に就職しました。田舎の高卒の娘は、社長さんや会社の上司からたいそう可愛がられたそうです。そして会社の人達と食事に行くお店の主人が、マスターだったのだそうです。マスターの奥さんは、可愛い二人の娘さんを生んで、しばらくしてから交通事故で亡くなったそうです。ママが二人に食事を作ってあげている中で、一緒になることになったのだそうです。この結婚には、田舎の両親も会社の人達も大反対だったそうですが、ママはそれを押し切って「継母」になったのです。
 「継母となってから、私は365日の食事と209日の弁当を、一日も欠かしませんでした。靴の脱ぎ方が悪い、箸の置き方が悪い、と厳しく躾けました。その二人も今は母親となり、今では、父親以上に私に相談を持ちかけ、私を助けてくれます。孫達が「爺、ババ」といって遊びに来てくれます。これまでの歳月の間には、幾つもの山がありました。でも、その時々に、娘の生みの母親が助けてくれていたような気がするんです。」
 私は、「悲しい家族の風景」があちらこちらに見えている今の社会の中で、全くの他人が繋がることができる家族があるのだと思う。ママさんが血の繋がっていない子供達に、強い愛情を注ぎ続けられたのは何故なのだろう。もしかして、「生命を伝える」「この子が親になったら生まれるであろう子供達の生命を、つなげてやりたい」という「無償の愛」なのか、と思う。それにしても、もっとわからないのが、私以上に“変な”マスターが、何と言ってプロポーズしたものか・・・。(笑)
2013.03.24:orada:[変な民族学4巻 若者達へ]